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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの


(2) 国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの

50件 不当と認める国庫補助金 993,005,915円

 国民健康保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。
 市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者(注1) 及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。そして、国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)とされている。退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。

 退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に65歳に達するまでの間において適用される資格を 有する者である。

 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため、療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。
 国庫負担金の交付の対象となるのは、一般被保険者に係る医療費(平成19年度以前は老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けることができる者に係る医療費(被用者保険の保険者等が拠出する老人保健医療費拠出金等で負担)を除く。)であり、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担することとなっていることから、国庫負担金の交付の対象とはなっていない。
 毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号。平成20年3月以前は「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等拠出金等の算定等に関する政令」)等により、次により算定することとなっている。

一般被保険者に係る医療給付費
保険基盤安定繰入金(注2) の1 / 2
前期高齢者納付金等(注3) (20年4月以降)
国庫負担対象費用額
国庫負担対象費用額
×
国の負担割合(注4)
交付額
(注2)
 保険基盤安定繰入金  市町村が、一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るため減額した保険料又は保険税の総額について、当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額
(注3)
 前期高齢者納付金等  「高齢者の医療の確保に関する法律」(昭和57年法律第80号)の規定により社会保険診療報酬支払基金の高齢者医療制度関係業務に要する費用として納付する前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金並びに介護納付金(前期高齢者交付金がある場合には、これを控除した額)
(注4)
 国の負担割合  平成16年度までは40/100、17年度は36/100、18年度以降は34/100

 このうち一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額とされている。
 ただし、届出が遅れるなどしたために退職被保険者等の資格がさかのぼって確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。
 国庫負担金の交付手続については、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出して、〔2〕 これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、厚生労働省に提出して、〔3〕 厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。そして、〔4〕 当該年度の終了後に、市町村は都道府県に実績報告書を提出して、〔5〕 これを受理した都道府県は、その内容を審査の上、厚生労働省に提出して、〔6〕 厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。
 本院は、40都道府県の230市区町村及び2広域連合において、17年度から20年度までの間に交付された国庫負担金について、会計実地検査を行った。その結果、22都道県の49市区町村及び1広域連合において、そ及して退職被保険者等の資格を取得した者(以下「そ及退職被保険者等」という。)に係るそ及期間中の医療給付費を控除していなかったり、そ及退職被保険者等に係る医療給付費の控除額の計算を誤っていたりなどして、国庫負担金交付額計103,000,827,330円のうち計993,005,915円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、上記の49市区町村及び1広域連合において制度の理解が十分でなかったり事務処理が適切でなかったりしたため、適正な実績報告等を行っていなかったこと、また、これに対する上記の22都道県の審査が十分でなかったことによると認められる。前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

 東京都足立区は、平成18年度の国庫負担金の実績報告に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、そ及退職被保険者等について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った18年度以前分の医療給付費の一部1,035,867,565円を控除していなかったため、国庫負担対象費用額を過大に算定していた。
 その結果、国庫負担金が389,766,424円過大に交付されていた。

<事例2>

 群馬県高崎市は、平成19年度の国庫負担金の実績報告に当たり、そ及退職被保険者等について、18年度以前分の医療給付費の控除額の計算において、電算処理を誤って国庫負担金を算定するなどしていた。
 その結果、国庫負担金が30,950,085円過大に交付されていた。

 以上を都道県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

都道県名 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額不当と認める国庫負担金摘要 不当と認める国庫負担金 摘要
千円 千円 千円 千円
(131) 北海道 亀田郡七飯町 18 1,163,428 395,116 5,0849 1,868 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(132) 勇払郡厚真町 18 336,970 114,187 13,227 5,054
(133) 河東郡音更町 19 2,078,254 706,333 85,108 31,624
(134) 大雪地区広域連合 18 1,451,550 493,400 38,062 13,968
(135) 青森県 弘前市 18 8,846,403 3,005,507 11,989 3,916
(136) 西津軽郡鰺ヶ沢町 19 816,224 277,555 15,784 5,805
(137) 宮城県 仙台市 19 30,877,088 10,498,302 8,275 3,061
(138) 岩沼市 19 1,371,685 466,294 5,522 1,921
(139) 栃木県 宇都宮市 19 17,371,709 5,904,558 203,064 75,606
(140) 群馬県 前橋市 19 12,157,757 4,132,864 26,970 9,863
(141) 高崎市 19 11,902,766 4,076,677 155(注5) 30,950 そ及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったもの
(142) 渋川市 19 3,792,608 1,289,188 25,088 8,530 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(143) 群馬県 北群馬郡吉岡町 18 607,428 212,894 (注6) 7,347 そ及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったもの
(144) 甘楽郡甘楽町 18 575,996 197,493 (注6) 2,484
(145) 吾妻郡東吾妻町 19 685,629 233,277 9,165 3,279 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(146) 利根郡みなかみ町 19 1,120,818 380,649 3,022 1,027 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたもの
(147) 埼玉県 越谷市 19 10,629,145 3,613,466 9,287 3,242 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(148) 秩父郡小鹿野町 18 496,774 168,052 9,077 3,547
(149) 東京都 足立区 18 34,779,934 11,827,732 1,035,867 389,766
(150) 神奈川県 愛甲郡愛川町 19 2,295,413 780,492 13,210 5,066
(151) 富山県 高岡市 19 5,911,402 2,009,820 18,232 6,293
(152) 砺波市 19 1,248,595 424,533 8,606 3,013
(153) 石川県 金沢市 19 15,795,532 5,369,663 2,764 1,083
(154) 羽咋市 19 805,862 273,991 8,780 3,240
(155) 福井県 小浜市 18〜20 2,966,380 1,008,173 (注6) 2,560 そ及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったもの
(156) 大野市 18 1,220,246 413,582 11,538 4,082 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(157) 吉田郡永平寺町 (注7) 17 478,846 172,313 17,138 6,169 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたもの
(158) 岐阜県 美濃加茂市 19 1,661,116 564,779 2,858 1,041 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(159) 海津市 19 1,669,190 567,517 9,075 1,731
(160) 揖斐郡池田町 19 628,396 213,654 9,061 2,667
(161) 愛知県 豊田市 19 8,679,792 2,960,561 △42(注8) 11,227 そ及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったもの
(162) 東海市 19 3,045,423 1,036,952 (注6) 2,231
(163) 三重県 尾鷲市 19 1,027,458 349,293 7,374 2,732 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(164) 熊野市 19 1,108,537 377,209 8,519 3,878
(165) 志摩市 19 3,129,081 1,061,380 6,666 2,666
(166) 三重郡川越町 18 386,577 130,142 29,384 9,990
(167) 多気郡多気町 18 542,606 183,939 3,752 1,394
(168) 兵庫県 淡路市 19 2,491,761 846,288 10,725 3,950
(169) 和歌山県 和歌山市 19 14,711,139 5,002,154 66,498 26,599
(170) 鳥取県 岩美郡岩美町 18 390,184 132,023 4,701 1,598 一般被保険者の医療給付費を過大に算定していたもの
(171) 広島県 広島市 19 39,768,965 13,519,203 473,416 174,379 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(172) 福山市 19 15,084,472 5,126,053 140,930 50,475
(173) 大竹市 19 1,164,373 395,616 8,241 2,732
(174) 廿日市市 19 3,815,496 1,296,145 5,975 2,121
(175) 高知県 安芸市 19 1,473,205 500,554 16,433 5,777
(176) 福岡県 小郡市 19 2,020,930 687,100 69,249 24,677
(177) 鹿児島県 鹿児島市 20 22,050,180 7,495,158 10,655 3,444
(178) 姶良郡姶良町 (注9) 19、20 3,291,267 1,120,239 467(注5) 1,455 そ及退職被保険者等の医療給付費の控除額の計算を誤ったもの
(179) 沖縄県 中頭郡読谷村 19 2,143,578 728,842 43,903 15,009 そ及退職被保険者等のそ及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(180) 島尻郡与那原町 19 764,394 259,890 18,869 6,843
(131)—(180)の計 302,832,590 103,000,827 2,531,787 993,005
(注5)  高崎市及び姶良町は、医療給付費の集計を誤り、国庫負担対象費用額を過大に算定していて、更にその後の国庫負担金の算定に当たり集計を誤っていた。
(注6)  小浜市、東海市、吉岡町及び甘楽町は、集計を誤ったため、国庫負担金を過大に算定していたが、国庫負担対象費用額には誤りはなかったことから、本表の「不当と認める国庫負担対象費用額」欄には計数を掲げていない。
(注7)  平成18年2月12日以前は吉田郡松岡町、永平寺町及び上志比村
(注8)  豊田市は、そ及退職被保険者等に係る医療給付費の集計を誤り、国庫負担対象費用額を過小に算定していた。一方、その後の国庫負担金の算定に当たり集計を誤っていた。したがって、上表の「国庫負担対象費用額」は過小に算定した額であり、「不当と認める国庫負担対象費用額」はマイナス表示の額となることから当該金額については集計を行っていない。
(注9)  平成22年3月23日以降は姶良市

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、通知等により市町村の事務処理の適正化に努めるとともに都道府県の実績報告等に係る審査等の強化を図る必要があると認められる。