疾病予防対策事業費等補助金(がん診療連携拠点病院機能強化事業分)(以下「国庫補助金」という。)は、地域全体におけるがん診療連携の円滑な実施を図るため、厚生労働大臣が指定したがん診療連携拠点病院が行う院内がん登録促進事業、がん相談支援事業等のがん診療連携拠点病院機能強化事業に対して都道府県が補助する場合にその費用の一部を国が補助するものである。
国庫補助金の交付額は、交付要綱等に基づき次のように算定することとなっている。
〔1〕 所定の方式によって算定した基準額と、対象経費の実支出額(以下「実支出額」という。)とを比較して少ない方の額を選定する。
〔2〕 〔1〕 により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額と都道府県が補助した額とを比較して最も少ない額を国庫補助基本額として、この額に2分の1を乗じて得た額を交付額とする。
そして、上記の実支出額の対象となる経費は、がん診療連携拠点病院機能強化事業に必要な給料、職員諸手当、共済費(以下、これらを合わせて「給料等」という。)、賃金、会議費、需用費等となっている。ただし、給料等については、がん診療連携拠点病院機能強化事業のうちがん相談支援事業に限るとされている。
本院が、8府県の9事業主体において会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられ た。
部局等 | 補助事業者 | 間接補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 国庫補助基本額 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める国庫補助基本額 | 不当と認める国庫補助金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||||
(467) | 奈良県 | 奈良県 | 学校法人近畿大学 | がん診療連携拠点病院機能強化事業 | 20 | 9,880 | 4,940 | 2,700 | 1,351 | 対象外経費を計上していたもの |
学校法人近畿大学は、本件事業の実支出額の算定に当たり、実支出額の対象となる経費のうち、職員に係る給料等については、がん相談支援事業に限るとされているのに、院内がん登録促進事業に係る職員1名分の給料等3,621,122円を実支出額に含めていたため、国庫補助基本額が2,700,760円過大に算定されていた。
したがって、この過大に算定された国庫補助基本額に係る国庫補助金1,351,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同法人において、補助制度の内容についての理解が十分でなかったこと、同県において、同法人から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。