次世代育成支援対策交付金(以下「交付金」という。)は、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づき、地域における子育ての支援、母性及び乳幼児の健康の確保等の次世代育成支援対策の着実な推進を図ることを目的として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が5年を一期として策定する次世代育成支援対策の実施に関する計画により、毎年度策定する事業計画に掲げる家庭支援推進保育事業、育児支援家庭訪問事業等の事業を対象として、これらの事業の実施に要する経費について、その一部を国が交付するものである。
交付金の交付額は、交付要綱等において、市町村が事業計画に掲げる事業について、事業ごとの事業量に応ずるなどして定められた基準点数により算出された合計点等を基に厚生労働大臣が認めた額と、市町村が実施した各事業の総事業費の合計額から寄附金その他の収入額の合計額を控除した額に2分の1を乗じた額(以下「国庫補助基本額」という。)とを比較して、少ない方の額とすることとなっている。
そして、交付対象事業において、市町村職員等が交付金の交付対象事業の業務とそれ以外の業務に従事している場合、当該職員等が交付対象事業の業務に従事した時間等に係る人件費等に限り交付対象事業の総事業費の対象とすることができることとなっている。
交付対象事業のうち家庭支援推進保育事業は、家庭環境に対する配慮等保育を行う上で特に配慮が必要とされる保育所入所児童(以下「対象児童」という。)が入所児童の40%以上である保育所に対し、最低限配置しなければならない保育士のほかに別途保育士を配置することにより入所児童の処遇の向上を図ることを目的とするものである。そして、この事業により配置された保育士は、対象児童に対する指導計画を作成し、計画的に保育に当たるとともに、定期的に家庭訪問をするなど家庭に対する指導(以下、これらの業務を「家庭支援推進保育」という。)を行うこととしている。
本院が、17道府県の46市町において、会計実地検査を行ったところ、2県の2市において、公立保育所等で実施された家庭支援推進保育事業等の総事業費を算定するに当たり、交付の対象とならない業務に係る人件費を含めていたことなどから、総事業費が過大となっていた。
このため国庫補助基本額が過大に算定されていて、適正な国庫補助基本額に基づいて交付金の交付額を算定すると計679,336,000円となることから、交付金交付額計684,955,000円との差額計5,619,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2市において、家庭支援推進保育事業等の総事業費の算定についての理解が十分でなかったこと、また、厚生労働省において2市から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
久留米市は、平成18年度から20年度までの間に、市立A保育園において、家庭支援推進保育を行った主任保育士1名及び保育士1名の人件費の合計額等を基にして、家庭支援推進保育事業の総事業費を計33,463,388円と計上するなどして、交付金434,765,000円の交付を受けていた。
しかし、実際は、上記の2名は家庭支援推進保育だけでなく、交付対象とならない通常業務等も行っていて、上記の総事業費には、これに係る人件費を含めていた。
したがって、上記2名の人件費を、家庭支援推進保育に従事した時間数と通常業務等に従事した時間数とで案分するなどして、適正な総事業費を算出すると計27,137,372円となり、これに基づくなどして適正な交付金を算定すると431,603,000円となることから、上記の交付金434,765,000円との差額3,162,000円が過大に交付されていた。
以上を県別・事業主体別に示すと次のとおりである。
県名 | 補助事業者 (事業主体) |
年度 | 国庫補助基本額 | 厚生労働大臣が認めた額 | 交付金交付額 | 不当と認める総事業費 | 不当と認める交付金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(468) | 香川県 | 高松市 | 19、20 | 250,191 | 261,897 | 250,190 | 4,914 | 2,457 | 交付対象外の人件費を含めていたものなど |
(469) | 福岡県 | 久留米市 | 18〜20 | 434,766 | 478,689 | 434,765 | 6,326 | 3,162 | 同 |
(468)(469)の計 | 684,958 | 740,586 | 684,955 | 11,240 | 5,619 |