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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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  • 補助金

児童扶養手当給付費負担金が過大に交付されていたもの


(7) 児童扶養手当給付費負担金が過大に交付されていたもの

3件 不当と認める国庫補助金 4,590,547円

 児童扶養手当(以下「手当」という。)は、都道府県、市(特別区を含む。)及び福祉事務所を管理する町村が、児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)に基づき、父と生計を同じくしていない児童(注1) が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与することを目的として、児童の父母が婚姻を解消したり、父が死亡したりなどしている場合に、これらの児童を監護する母又は養育する者(以下、これらを「受給資格者」という。)に対して支給するものである。国は、手当の支給に要する費用の3分の1(平成17年度以前は4分の3)を児童扶養手当給付費負担金として交付している。
 手当は、毎年4月、8月及び12月の3回、所定の額(児童1人の場合は月額で17年度41,880円、18年度から41,720円)を支給することとなっているが、受給資格者の前年の所得(注2) が、次表の「全部支給」の所得制限限度額(所得税法(昭和40年法律第33号)に規定する扶養親族等の数に応じて定められている額)以上で「一部支給」の所得制限限度額未満の場合は、その所得に応じて手当を減額して支給して、「一部支給」の所得制限限度額以上の場合は、手当の全部を支給しないこととなっている。

表 受給資格者の所得制限限度額
扶養親族等の数 受給資格者の所得制限限度額
全部支給 一部支給
0 人 190,000 円 1,920,000 円
1 人 570,000 円 2,300,000 円
2 人 950,000 円 2,680,000 円
(注)
 扶養親族等が3人以上の場合、1人増えるごとにそれぞれ380,000円を加算する。

 また、受給資格者が老齢福祉年金以外の公的年金(以下「公的年金」という。)の給付を受けることができる場合は、手当を支給しないこととなっている。
 さらに、児童が児童養護施設等の児童福祉施設に入所している場合、当該児童の母については、当該児童を監護しないものとして、当該児童について手当を支給しないこととなっている。

(注1)
 児童  18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者又は20歳未満で所定の障害の状態にある者
(注2)
 前年の所得  地方税法(昭和25年法律第226号)に規定する総所得金額等の合計額から8万円を控除した額。なお、地方税法で規定する医療費控除等を受けている場合は、それらに相当する額を更に控除した額。また、申請が6月以前の場合は、前々年の所得とする。

 事業主体は、受給資格者から児童扶養手当認定請求書(以下「認定請求書」という。)が提出された場合、受給資格者の公的年金の受給状況、児童の監護状況、受給資格者等の所得等を調査確認して、支給要件を満たすと認定したときは、手当を支給することとなっている。
 また、事業主体は、毎年8月に、手当の受給者から児童扶養手当現況届(以下「現況届」という。)を提出させて、受給資格や受給者等の前年の所得等を調査確認して、支給要件を満たさない場合には、支給停止の手続を行うこととなっている。
 本院が、23都道府県の147市区町において、会計実地検査を行ったところ、3県の3市において、受給者が公的年金の給付を受けることができたり、児童が児童福祉施設に入所したりしていて、支給要件を満たしていないにもかかわらず手当を支給していたため、国庫負担金4,590,547円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、3市において、受給者の公的年金の受給状況及び児童の監護状況の調査確認が十分でなかったこと、制度について理解が十分でなかったことなどによると認められる。
 前記の事態について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 宇都宮市は、児童Aを監護する養育者Bについて、提出された認定請求書により手当の受給資格があると認定していた。そして、養育者Bから提出された平成17年から20年までの現況届等によれば、養育者Bの16年から20年までの各年の所得がいずれも「全部支給」の所得制限限度額未満であったことなどから、同市は、18年度501,280円、19年度500,640円、20年度500,640円、21年度333,760円、計1,836,320円の手当を支給していた(21年8月に現況届が提出されなかったため、同月以降は手当を支給していない。)。
 しかし、実際には、養育者Bは、18年2月から公的年金給付を受けることができ、支給要件を満たしていなかったことから、18年2月から21年7月までに係る手当18年度417,520円、19年度500,640円、20年度500,640円、21年度333,760円、計1,752,560円は支給の必要がなかった。

 以上を県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

県名 補助事業者
(事業主体)
年度 児童扶養手当支給額 左に対する国庫負担金 支給すべきでなかった児童扶養手当の額 不当と認める国庫負担金 摘要
千円 千円 千円 千円
(501) 栃木県 宇都宮市 18〜21 4,959 1,653 3,351 1,117 支給要件を満たしていない者に対して支給していたもの
(502) 愛知県 名古屋市 17〜21 4,552 1,727 3,795 1,422
(503) 奈良県 奈良市 17〜21 6,003 2,210 5,629 2,051
(501)—(503)の計 15,515 5,590 12,777 4,590