遺骨収集等派遣費補助金(慰霊友好親善事業に係る分。以下「補助金」という。)は、財団法人日本遺族会(以下「日本遺族会」という。)が行う、先の大戦による海外等での戦没者の遺児が旧主要戦域を訪れ、同地域に居住する先の大戦の関係者等とともにその地域の実情に合った友好親善及び慰霊追悼を行う慰霊友好親善事業に要する費用について、予算の範囲内において、国が補助するものである。
補助金の交付額は、交付要綱に基づき次のように算定することとなっている。
〔1〕 基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。
〔2〕 により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額(以下「差引額」という。)とを比較して少ない方の額(以下「国庫補助基本額」という。)を交付額とする。
また、対象経費は、現地戦争犠牲者等との交流会事業等を実施するために必要な旅費等の経費とされている。
本院が、補助金について、日本遺族会において会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
年度 | 国庫補助金交付額 | 不当と認める国庫補助金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | |||||
(516) | 厚生労働本省 | 財団法人日本遺族会 | 16、17 | 359,658 | 36,628 | 寄附金その他の収入額とすべき参加費を計上していなかったもの |
日本遺族会は、平成16年度及び17年度において寄附金その他の収入額を0円として差引額を算出して、基準額が対象経費の実支出額及び差引額と比較して最も少ない額であることから基準額計359,658,000円を国庫補助基本額とする事業実績報告書を厚生労働省に提出して、同額の補助金の交付を受けていた。
しかし、日本遺族会が16年度及び17年度において慰霊友好親善事業の参加者から収納した参加費は当該事業に係る収入に当たることから、これを事業実績報告書に寄附金その他の収入額として計上すべきであったのに、これをしていなかったため、差引額が過大となっていた。
したがって、適正な差引額を算定すると16年度及び17年度の差引額はいずれも基準額を下回ることから、これにより国庫補助基本額を算定すると計323,031,217円となり、国庫補助基本額が過大に算定されていた。そして、適正な国庫補助基本額に基づき補助金の交付額を算定すると計323,030,000円となることから、交付額との差額計36,628,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、日本遺族会において、総事業費から控除する寄附金その他の収入額に該当するものについての理解が十分でなかったこと、同省において、日本遺族会から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。