保健事業費等負担金(健康診査費分)(以下「負担金」という。)は、老人保健法(注) (昭和57年法律第80号)に基づき、壮年期からの健康についての認識と自覚の高揚を図ることを目的に、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が、その区域内に居住地を有する40歳以上の者に対して行う基本健康診査や歯周疾患検診等の健康診査及び指導の実施に要する経費の一部を、国が負担するものである。
負担金の交付額は、交付要綱等に基づき、次のとおり算定することとなっている。
〔1〕 診査の種類ごとに定められている基準単価(基本健康診査については、更に集団検診、医療機関一括方式、医療機関個別方式等の実施方法ごとに定められている。)から、受診者等から徴収する額について診査の種類ごとに定められている費用徴収基準額(基本健康診査については、更に実施方法ごとに定められている。以下「徴収基準額」という。)を控除した額に、それぞれの受診人員数を乗じて得た額の合計額を基準額とする。そして、実際の費用徴収額(以下「徴収額」という。)が徴収基準額を上回る場合には、徴収基準額ではなく徴収額を基準単価から控除して基準額を算出する。
〔2〕 〔1〕 により算出された基準額、補助対象経費の実支出額及び総事業費から寄付金その他の収入額を控除した額を比較して最も少ない額に3分の1を乗じて得た額を交付額とする。
そして、健康診査は、同一人について年1回行うこととされている。また、基本健康診査の実施方法のうち、集団検診は、市町村が医師等を雇い上げるなどして、市町村保健センター、公民館等の施設で基本健康診査を実施するものであり、医療機関一括方式は、医療機関に委託して、その医療機関の施設において、期日、時間を定めて、その間専ら基本健康診査を実施するものとされている。
本院は、28都道府県の288市区町村において、平成16年度から19年度までに交付された負担金について会計実地検査を行った。その結果、5府県の5事業主体において、2回目以降の基本健康診査の受診人員数、又は40歳未満の受診人員数を負担金の算定対象に含めていたり、集団検診の基準単価(16、17両年度4,247円、18、19両年度4,240円)を適用すべきところ、医療機関一括方式の基準単価(16年度7,933円、17年度7,922円、18年度7,978円、19年度7,843円)を適用していたり、基準額を算出する際に基準単価から徴収額を控除していなかったりなどして、負担金の交付額の算定を誤ったため、負担金交付額計2,478,711,098円のうち計85,907,750円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、上記の5事業主体において交付要綱等を十分に理解していなかったこと、厚生労働省又は府県において事業主体から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
これを府県別・事業主体別に示すと次のとおりである。
府県名 | 補助事業者 (事業主体) |
年度 | 国庫負担対象事業費 | 左に対する国庫負担金交付額 | 不当と認める国庫負担対象事業費 | 不当と認める国庫負担金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(583) | 神奈川県 | 川崎市 | 16〜19 | 4,661,694 | 1,553,898 | 155,367 | 51,789 | 2回目以降の受診人員数を含めていたものなど |
(584) | 愛知県 | 名古屋市 | 19 | 1,092,939 | 364,313 | 70,353 | 23,451 | 同 |
(585) | 滋賀県 | 大津市 | 16〜19 | 1,494,277 | 498,092 | 15,785 | 5,261 | 基準単価の適用を誤っていたものなど |
(586) | 大阪府 | 摂津市 | 19 | 89,547 | 29,849 | 3,537 | 1,179 | 40歳未満の受診人員数を含めていたものなど |
(587) | 兵庫県 | 豊岡市 | 17、18 | 97,673 | 32,557 | 12,680 | 4,226 | 基準単価から徴収額を控除していなかったものなど |
(583)—(587)の計 | 7,436,133 | 2,478,711 | 257,723 | 85,907 |