職業能力開発校設備整備費等補助金は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づいて、都道府県立職業能力開発校等の建物・機械の整備等、交付の対象となる事業の実施を円滑に行い、労働者の職業能力の開発及び向上を促進することを目的として都道府県が実施する事業に必要な経費のうち、補助金の交付の対象として厚生労働大臣が定める経費(以下「補助対象経費」という。)について、予算の範囲内で交付するものである。
厚生労働省は、補助対象経費について、年度ごとに、「職業能力開発校設備整備費等補助金(職業能力開発校設備整備等事業費)の算定基準」(以下「算定基準」という。)を定めて都道府県知事に通知している。算定基準によれば、補助対象経費は、教室、実習場等の施設の補助対象面積に、施設の構造別、地域別区分により定められた金額を乗じて得た額とされている。そして、補助対象面積の算定に当たっては、職業能力開発促進法施行規則(昭和44年労働省令第24号)等で定める施設の種類ごとに、それぞれ定められた面積と都道府県の実施計画面積とを比較していずれか少ない面積を補助対象面積として、これらを合計することとされている。また、校舎、寄宿舎及び人材開発センターに限り玄関や通路の機能を有する共通部分(以下「共通部分」という。)の補助対象面積について認められている。
本院が、この補助事業について7府県(注)
において会計実地検査を行ったところ、4府県が実施した施設整備に関する事業において、補助対象面積を過大に算定したり、交付決定を受けていない工事費を補助対象経費に含めたりなどしていて、補助対象経費が過大に算定されており、国庫補助金82,619,405円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、4府県において、算定基準の内容の理解が十分でなかったこと、また、厚生労働省において、補助事業の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
これを事業主体別に示すと次のとおりである。
補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認める国庫補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(598) | 埼玉県 | 職業能力開発校設備整備等 | 16、17 | 137,878 | 68,939 | 3,320 | 1,660 | 補助の対象外 |
この補助事業は、埼玉県が、平成16、17両年度に、埼玉県立川越高等技術専門校、埼玉県立中央高等技術専門校及び埼玉県立春日部高等技術専門校の建物の改修工事等を実施したものである。
しかし、同県は、本件補助事業の補助対象経費に算定基準では認められていない設計業務委託費、設計業務の打合せなどのための旅費及び臨時職員の人件費、計3,320,610円を含めていた。
したがって、適正な補助対象経費を算定の上国庫補助金を算定すると、67,278,750円となり、国庫補助金1,660,305円が過大に交付されていた。
(599) | 神奈川県 | 職業能力開発校設備整備等 | 18、19 | 2,042,048 | 1,021,023 | 139,410 | 69,705 | 補助金の過大交付 |
この補助事業は、神奈川県が、平成18、19両年度に、神奈川県立東部総合職業技術校の教室棟及び旧体育館棟の改修工事並びに実習棟の新築工事を実施したものである。
補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認める国庫補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 |
同県は、教室棟のうち介護サービス科の教室等の補助対象面積を563.0m2
、旧体育館棟のうち共通部分の補助対象面積を594.1m2
とするなどして本件補助事業に係る補助対象経費を2,042,048,238円(国庫補助金1,021,023,000円)としていた。
しかし、同県は、教室棟のうち介護サービス科の教室について、当初計画を変更して倉庫として整備するなどしているのに、当初計画に基づいて補助対象面積を算定するなどしていた。また、同県は旧体育館棟のうち共通部分の補助対象面積を算定する際に、算定基準では認められていない体育館の共通部分の面積を含めていた。このため、補助対象面積が計993.8m2
過大となっていた。
したがって、適正な補助対象経費を算定の上国庫補助金を算定すると951,318,000円となり、国庫補助金69,705,000円が過大に交付されていた。
(600) | 大阪府 | 職業能力開発校設備整備等 | 17 | 1,570,918 | 785,459 | 8,602 | 4,302 | 補助金の過大交付 |
この補助事業は、大阪府が、平成17年度に、大阪府立南大阪高等職業技術専門校の管理棟、実習棟等の新築工事を実施したものである。 同府は、管理棟のうち図書室の補助対象面積を40.0m2
とするなどして補助対象経費を1,570,918,120円(国庫補助金785,459,000円)としていた。
しかし、同府は、図書室について、当初計画を変更して就職情報室として整備しているのに、当初計画に基づいて補助対象面積を算定するなどしていたため、補助対象面積が共通部分を含めて計56.0m2
過大となっていた。
したがって、適正な補助対象経費を算定の上国庫補助金を算定すると781,157,000円となり、国庫補助金4,302,000円が過大に交付されていた。
(601) | 広島県 | 職業能力開発校設備整備等 | 19、20 | 34,588 | 17,294 | 13,904 | 6,952 | 補助金の過大交付 |
この補助事業は、広島県が、平成19年度に、広島県立呉高等技術専門校(以下「呉校」という。)及び広島県立三次高等技術専門校(以下「三次校」という。)の建物の改修工事を、20年度に、三次校の建物の改修工事をそれぞれ実施したものである。
同県は、19年度に、呉校の改修工事を実施することとして補助金の交付決定を受けていたが、工事の一部を取りやめたため、本件補助金の交付決定を受けていない三次校の改修工事の工事費計10,826,650円を補助対象経費に含めていた。また、同県は、20年度に、三次校の改修工事を実施することとして補助金の交付決定を受けたが、この工事の一部は前年度に実施した上記三次校の改修工事の一部として、実施済みであったことから、本件補助金の交付決定を受けていない塗装工事等の工事費計3,077,550円を補助対象経費に含めていた。
しかし、上記の19年度の三次校の改修工事費及び20年度の三次校の塗装工事費等については、交付決定されたものではないことから、補助対象経費とならない。
したがって、適正な補助対象経費を算定の上国庫補助金を算定すると10,341,975円となり、国庫補助金6,952,100円が過大に交付されていた。
(598)-(601)の計 | 3,785,432 | 1,892,715 | 165,238 | 82,619 |