会計名及び科目 | 一般会計 (組織)国立ハンセン病療養所 | |
(項)国立ハンセン病療養所共通費 | ||
(項)国立ハンセン病療養所運営費 | ||
(平成19年度は、(項)国立ハンセン病療養所運営費) | ||
部局等 | 国立ハンセン病療養所 | |
当直勤務の概要 | 正規の勤務時間外において、一般職員等が行う療養所の設備等の保全、外部との連絡、入所者へのサービス提供等の業務を行うもの | |
当直勤務に対して支給した宿日直手当及び超過勤務手当の合計額 | 3億4559万余円 | (平成19、20両年度) |
当直勤務の勤務内容について調査した結果から算定される上記手当の合計額 | 2億6278万余円 | |
開差額 | 8281万円 | (平成19、20両年度) |
厚生労働省は、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)に基づき全国13か所に設置された国立ハンセン病療養所(以下「療養所」という。)において、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(平成20年法律第82号)第2条第3項に規定する入所者に対して、医療を行い、併せて医療の向上に寄与することを目的とした業務を行っている。
各療養所では、一般職員等が、正規の勤務時間(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号。以下「勤務時間法」という。)第5条から第8条まで、並びに第11条及び第12条の規定に定められた勤務時間である平日の午前8時30分から午後5時15分までの時間)外において、設備等の保全、外部との連絡及び文書の収受、入所者へのサービス提供等の業務を行っている(以下、正規の勤務時間外においてこれらの業務を行うことを「当直勤務」という。)。
当直勤務は、人事院規則等に定めるところによるほか、各療養所の規模や実情に応じて各療養所で定めている規程(以下「当直規程」という。)に基づき行われ、当直規程では、事務本館(以下、事務本館での当直勤務を「管理当直」という。)、福祉室(以下、福祉室での当直勤務を「福祉当直」という。)等の勤務場所別に、配置人数(1名又は2名)や勤務内容が定められている。
前記のように当直勤務は正規の勤務時間外における勤務であるが、この正規の勤務時間外の勤務について勤務時間法第13条では、その勤務内容によって、宿日直勤務と超過勤務に区分している。
そして、宿日直勤務は、設備等の保全、外部との連絡及び文書の収受を目的とする勤務その他の人事院規則で定める断続的な勤務とされ、超過勤務は、臨時又は緊急の必要がある場合に勤務時間外に行う宿日直勤務以外の勤務とされている。そして、これらの勤務を行った職員に対しては一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)等に基づき、それぞれ宿日直手当又は超過勤務手当(以下、宿日直手当と超過勤務手当を合わせて「宿日直手当等」という。)を支給することとされている。
なお、各療養所では、宿日直手当として、給与法第19条の2等に基づき勤務一回につき管理当直については4,200円を、福祉当直については5,900円を、それぞれ支給している。
また、公表されている人事院の解釈によると、宿日直勤務を命ぜられた者に対して、その宿日直勤務中に臨時又は緊急の必要がある場合には、その時間の宿日直勤務の命令を変更し超過勤務を命ずることができ、その際は、超過勤務を行った職員に対して宿日直手当に加えて超過勤務手当を支給することとしている。
本院は、合規性等の観点から、当直勤務を行った際に勤務の内容に基づいて適切な手当の支給がなされているかなどに着眼して、13療養所(注1) において平成19、20両年度に当直勤務に対して支給された宿日直手当1億2822万余円及び超過勤務手当2億1737万余円、計3億4559万余円を対象として検査を行った。そして、検査に当たっては、超過勤務等命令簿、業務日誌等の関係書類の写しを徴するなどして内容を確認するとともに、7療養所(注2) において会計実地検査を実施した。
検査したところ、10療養所(注3)
では、管理当直又は福祉当直をそれぞれ2名の体制で行う際に支給する宿日直手当等について、1名には設備等の保全等の宿日直勤務に該当する業務を行うとして宿日直手当を支給していた。また、他の1名には主として入所者へのサービス提供等、宿日直勤務には該当しない業務を正規の勤務時間外に行っているとして、宿日直手当を支給せず、それぞれ一律に宿直時(17時15分から翌日の8時30分まで)は仮眠時間を除いて各療養所によって最大6時間分、日直時(8時30分から17時15分まで)は最大8時間分の超過勤務手当を支給するなどしていた。
しかし、当直勤務における勤務内容を業務日誌等により検査したところ、超過勤務に該当する業務を行った記録はあるものの、その数は少なく、また、これに要した時間はほとんど記録されていなかった。そして、管理当直者2名の間又は福祉当直者2名の間に勤務内容についての明確な違いは認められず、いずれも大半は宿日直勤務に該当する業務を行っていると認められた。
そこで、本院において管理当直又は福祉当直をそれぞれ2名の体制で行っている前記の10療養所を含む13療養所における当直勤務に対して宿日直手当を支給することとした上で、21年度の一定期間の勤務内容を詳細に調査した結果から判明した超過勤務の状況が19、20両年度も同様であると仮定して超過勤務手当を算定して、これをさらに支給したとすると、19、20両年度に支給した当直勤務に係る宿日直手当等3億4559万余円は、宿日直手当2億1148万余円に当直勤務中に発生した超過勤務手当5129万余円を加えた2億6278万余円となり、8281万余円の開差を生ずることとなる。
このように、各療養所の当直勤務において、宿日直勤務に該当する業務が大半を占めているにもかかわらず、超過勤務手当を一律に支給しているなど、勤務の内容に即した支給となっていない事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 各療養所において、当直勤務の勤務内容に関し宿日直勤務に該当する業務と超過勤務に該当する業務を当直規程で明確に区分していなかったこと
イ 厚生労働省において、各療養所における当直勤務の状況を把握しておらず、各療養所に対して当直勤務の内容に即した適切な手当を支給するように指導していなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、22年3月に各療養所に対して通知を発し、当直勤務に係る業務について、入所者に対するサービス提供に支障を及ぼさないように十分に留意した上で当直規程等の見直しを図り、勤務内容に即した適切な手当を支給することとするよう指示を行った。これを受けて、各療養所では、当直規程を改正し宿日直勤務に該当する業務と超過勤務に該当する業務を明確に区分し、勤務の実態に即した適切な手当を支給する処置を講じた。
(注1) | 13療養所 松丘保養園、東北新生園、栗生楽泉園、多磨全生園、駿河療養所、長島愛生園、邑久光明園、大島青松園、菊池恵楓園、星塚敬愛園、奄美和光園、沖縄愛楽園、宮古南静園
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(注2) | 7療養所 栗生楽泉園、多磨全生園、駿河療養所、長島愛生園、邑久光明園、菊池恵楓園、沖縄愛楽園
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(注3) | 10療養所 松丘保養園、栗生楽泉園、多磨全生園、駿河療養所、長島愛生園、邑久光明園、大島青松園、菊池恵楓園、星塚敬愛園、沖縄愛楽園
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