生活保護の実施において、介護扶助と障害福祉サービスに係る自立支援給付との適用関係については、当該障害福祉サービスを受けられる場合は、自立支援給付が介護扶助に優先することとなっており、また、医療扶助と更生医療に係る自立支援給付との適用関係についても、同様に、自立支援給付が医療扶助に優先することとなっている。しかし、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下、これらを合わせて「事業主体」という。)において、障害福祉サービス及び更生医療に係る自立支援給付を受けることが可能であるのに、これを活用することなく介護扶助及び医療扶助を支給していて、自立支援給付の活用が行われていない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、事業主体に対して自立支援給付が未活用なものについて速やかに活用させるとともに、自立支援給付の活用が適時適切に行われるよう、介護扶助及び医療扶助と自立支援給付との適用関係や事業主体における保護担当部門と障害担当部門等との連携について運営要領等においてより明確にし、また、生活保護法施行事務監査の際に自立支援給付の活用状況の確認をするなどの処置を講ずるよう、厚生労働大臣に対して平成21年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、自立支援給付が未活用なものについては速やかに活用させるよう事業主体に対して指導する処置を講じ、事業主体は指導に基づきその活用を図っていた。また、22年3月に都道府県等に対して通知を発して、介護扶助及び医療扶助に係る自立支援給付の活用が適時適切に行えるよう福祉事務所において台帳を整備したり、保護担当部門と障害担当部門等との連携を明確にしたりするとともに、生活保護法施行事務監査の際に自立支援給付の活用状況についての確認等を行うこととする処置を講じていた。さらに、22年3月に運営要領を改正するなどして、介護扶助及び医療扶助と自立支援給付との適用関係を明確にするなどの処置を講じていた。