林野庁は、林業労働力の確保の促進に関する法律(平成8年法律第45号)に基づき、林業の健全な発展と林業労働者の雇用の安定に寄与することを目的として、新たに林業に就業しようとする者等にその就業の準備等に必要な資金(以下「林業就業促進資金」という。)の貸付事業を行う都道府県に対して、当該貸付事業に必要な資金の3分の2に相当する金額を国庫補助金として交付している。
都道府県は、交付された補助金に自己資金等を合わせて資金を造成して、これを都道府県知事の指定を受けた貸与機関に無利子で貸し付け、都道府県知事の認定を受けた事業主等に対する林業就業促進資金の貸付業務を行わせている。
林業就業促進資金のうち、就業の準備に必要な資金の貸付けの対象となる経費は、就業先を調査するための旅費、林業作業用具の購入費用、就業に伴う移転費用等となっている。
本院が、林業就業促進資金の貸付けについて、10道県において会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられた。
県名 | 貸与機関 | 貸付先 | 貸付対象 | 貸付年月 | 貸付対象事業費 (同上に対する貸付金額) |
貸付対象として適切でない事業費 (同上に対する貸付金相当額) |
不当と認める国庫補助金相当額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | |||||||
(685) | 三重県 | 財団法人三重県農林水産支援センター | 林業事業主 | 就業の準備に必要な経費 | 17.10 〜 19.10 |
8,400 (8,400) |
8,109 (8,109) |
5,406 | 貸付対象外 |
この貸付けは、借受者が平成17年度から19年度までの間に新たに雇い入れる林業労働者に支給する就業の準備に必要な資金計8,400,000円を貸し付けたものである。そして、借受者は当該資金を新たに雇い入れた林業労働者の給与及び住宅手当の支給並びに林業作業用具(チェーンソー)の購入に充てていた。
しかし、このうち給与及び住宅手当の支給は、就業の準備に必要な経費に該当しないことから、貸付けの対象とならないものであった。
したがって、適切な貸付金額を算定すると計290,100円(17年度78,000円、19年度212,100円)となり、前記の貸付金計8,400,000円との差額計8,109,900円(国庫補助金相当額計5,406,600円)が過大に貸し付けられていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、借受者の本貸付制度に対する理解が十分でなかったこと、貸与機関において、貸付申請書等に対する審査、確認が十分でなかったこと、三重県において、貸与機関に対する審査、指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。