会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)農林水産技術会議 | (項)農林水産業研究開発費 |
(項)放射能調査研究費 | |||
(項)原子力試験研究費 | |||
(項)地球環境保全等試験研究費 | |||
(項)環境研究総合推進費 | |||
部局等 | 農林水産技術会議事務局(契約庁) | ||
農林水産本省(支出庁) | |||
委託事業 | 地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発事業等24件 | ||
委託事業の概要 | 農林水産政策上重要な研究のうち、我が国の研究勢力を結集して総合的・体系的に推進すべき課題等を独立行政法人等に委託して実施するもの | ||
契約の相手方 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 | ||
契約 | 平成20年4月ほか随意契約 | ||
支払額 | 142億0931万余円 | (平成20、21両年度) | |
業務の実施状況が業務日誌に記載されていない非常勤職員の賃金 | 9億9784万余円 | (平成20、21両年度) | |
過大になっている支払額 | 6828万円 | (平成20、21両年度) |
非常勤職員が委託事業に従事する場合における委託費の支払について
(平成22年9月29日付け 農林水産大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
記
貴省は、農林水産政策上重要な研究のうち、我が国の研究勢力を結集して総合的・体系的に推進すべき課題等について、貴省自らが企画・立案し、年度ごとの進行管理を行うことによって重点的に実施することなどを目的として、地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発事業等を、独立行政法人、公立試験研究機関、大学、民間企業等(以下、これらを合わせて「独立行政法人等」という。)に委託して実施している。
そして、これらの委託事業に係る事務は、貴省農林水産技術会議事務局(以下「事務局」という。)が行っており、平成20、21両年度に支払われた委託費の額は、計349億3079万余円となっている。
事務局は、委託事業の実施に当たって、独立行政法人等との間で委託契約を締結しており、委託契約書によると、委託費の額の確定等の手続は、次のとおりとなっている。
〔1〕 独立行政法人等は、委託事業が終了したときは、事務局に対して委託事業の成果を記載した委託事業実績報告書(以下「実績報告書」という。)を提出する。
〔2〕 事務局は、独立行政法人等から実績報告書の提出を受けたときは、遅滞なく委託事業が契約の内容に適合するものであるかどうか検査を行う。なお、必要に応じて、その他関係書類を提出させ、又は実地に検査を行う。
〔3〕 上記〔2〕の検査の結果、委託事業が契約の内容に適合すると認めたときは、委託事業に要した経費の実支出額と契約で定められた委託費の限度額のいずれか低い額を委託費の額として確定する。
また、委託契約書によると、事務局は、必要に応じ、独立行政法人等に対し、委託事業の実施状況、委託費の使途その他必要な事項について所要の調査報告を求め、又は実地に調査することができることとなっている。
本院は、平成18年度決算検査報告において、貴省が所管する独立行政法人農業生物資源研究所(以下「生物研究所」という。)が独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「機構」という。)等に委託した農業生物資源ジーンバンク事業(注1)
(以下「ジーンバンク委託事業」という。)における非常勤職員の賃金の実績報告書への計上について、機構等に研究業務の補助業務の実態を反映させるよう生物研究所に改善させた事項を掲記している。
そして、機構は、上記の本院の指摘の趣旨に沿って講じた生物研究所の処置に基づき、19年9月に事務連絡を発して、ジーンバンク委託事業における非常勤職員の賃金については、20年度から以下の取扱いとするよう内部組織である研究所等に周知している。
ア 非常勤職員が従事する業務のうちジーンバンク委託事業の業務として特定できる業務については、業務日誌を作成して業務内容を記載すること
イ 複数の事業にかかわりのある業務については、ジーンバンク委託事業に参画する研究チーム、研究室等(以下「研究チーム」という。)がかかわる委託事業費及び運営費交付金の予算規模からジーンバンク委託事業に係るみなし業務量を算出すること
また、事務局は、事務局が独立行政法人等に委託して実施している委託事業(以下「事務局委託事業」という。)を含む公的研究費の適正な管理等のため、19年10月に「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19年19農会第706号農林水産技術会議事務局長、林野庁長官、水産庁長官通知。以下「ガイドライン」という。)を発して、非常勤職員の勤務状況確認等の研究費管理体制を整備することなどを独立行政法人等に周知している。
事務局及び機構は、前記のとおり、機構が本院指摘の趣旨を踏まえた事務連絡を発していることなどから、委託事業における非常勤職員の賃金について、研究業務の補助業務の実態を反映させて実績報告書を作成することなどの必要性を認識していると思料される。
そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、事務局委託事業に係る非常勤職員の賃金が実績報告書に適切に計上されているか、また、委託費の額の確定等の手続は適切に行われているかなどに着眼して検査した。
本院は、20、21両年度の機構における事務局委託事業(事業数24件、委託費計142億0931万余円)を対象として検査した。
検査に当たっては、機構本部及び機構の内部組織である14研究所等(注2)
から委託事業に係る関係書類の提出を求めるとともに、事務局、機構本部及び12研究所等(注3)
において、関係者から説明を聴取したり、実績報告書等の関係書類を確認したりするなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
機構は、事務局委託事業のほかに、その他の委託事業等及び運営費交付金による研究事業を実施していた。そして、次図 のとおり、それぞれの事業に係る予算を機構本部から研究所等の研究チームに配分していた。
また、事務局委託事業の実施に当たり、非常勤職員の賃金の支払実績がある研究チームについて、事業別の予算及び事業別の賃金支払実績額の内訳をみると、次表 のようになっていた。
表 | 事務局委託事業において賃金支払実績のある研究チームの事業費予算内訳 | |
(単位:千円) |
区分
\ 年度
|
研究所数 | 研究チーム数 | 事務局委託事業 | その他の委託事業等 | 運営費交付金による研究事業 | 事業費計 |
平成 20年度 |
14か所 | 266チーム | 3,108,465 | 1,548,893 | 3,233,479 | 7,890,838 |
(賃金支払実績額) | ||||||
571,019 | 290,425 | 506,289 | 1,367,734 | |||
21年度 | 14か所 | 259チーム | 3,677,100 | 1,489,732 | 3,136,440 | 8,303,273 |
(賃金支払実績額) | ||||||
620,316 | 329,815 | 464,697 | 1,414,829 | |||
計 | / | 6,785,565 | 3,038,626 | 6,369,919 | 16,194,111 | |
(賃金支払実績額) | ||||||
1,191,336 | 620,240 | 970,986 | 2,782,563 |
このように、研究チームは、事務局委託事業のほかに、その他の委託事業等や運営費交付金による研究事業を実施しており、それぞれの事業において非常勤職員の賃金を支払っていた。そして、これら研究事業の研究業務の補助業務に従事する非常勤職員は、複数の研究事業にかかわりのある研究業務の補助業務に従事していたり、事務局委託事業以外の業務に従事していたりしている状況となっていた。
しかし、機構が事務局に提出した事務局委託事業の実績報告書に計上されていた非常勤職員の賃金20、21両年度計11億9133万余円のうち、12研究所等の246研究チームに係る賃金計9億9784万余円については、機構は、非常勤職員の業務の実施状況を業務日誌に記載するなどしておらず、このため、非常勤職員が実際に事務局委託事業に従事した時間数を確認することができない事態となっていた。そして、主として事務局委託事業に従事したとして月の賃金支払額のすべてを事務局委託事業に要した経費に計上していた。
このような事態は、機構において、前記の本院指摘の趣旨を踏まえて、事務局委託事業についても、ジーンバンク委託事業と同様に非常勤職員の業務の実施状況を業務日誌に記載して適切に把握するなどの改善策を講ずるべきであったにもかかわらず、同様の改善策を事務局委託事業に講じていなかったものであり、適切とは認められない。
そこで、前記のとおり、非常勤職員が事務局委託事業に従事した時間数を確認することができないことから、前記のジーンバンク委託事業に係る事務連絡における取扱いに準じて、研究チームが行っている事務局委託事業及び複数の研究事業の予算規模に応じて非常勤職員の賃金を案分することなどにより事務局委託事業における非常勤職員の賃金相当額を算出すると、20、21両年度計11億2304万余円となり、前記の実績報告書に計上されていた非常勤職員の賃金との差額計6828万余円が過大に計上されていたと認められる。
事務局は、前記のとおり、独立行政法人等から実績報告書の提出を受けたときは、事務局委託事業が契約の内容に適合するものであるかどうか検査を行い、必要に応じて、その他関係書類を提出させ、又は実地に検査を行うこととなっている。
また、事務局は、前記のガイドラインのほか、21年3月には、事務局委託事業のより適正な執行を確保するため、「委託事業事務処理マニュアル」を作成し、事務局委託事業を含む複数の事業に従事している非常勤職員に賃金を支払う場合は、事務局委託事業に従事する時間数により算出することや、業務日誌等により十分な業務管理を行うことなどを独立行政法人等に周知していた。
しかし、前記のとおり、20、21両年度の機構における事務局委託事業について、機構が非常勤職員の賃金を事務局委託事業に従事した時間数を把握しないまま実績報告書に計上していたにもかかわらず、事務局は、機構において非常勤職員の勤務状況管理が適切に行われていない事態を把握することなく、事務局委託事業の実績報告書に対する検査を十分に行わないまま委託費の額を確定していた。その結果、前記のとおり、計6828万余円が過大に支払われていた事態は適切とは認められない。
前記のとおり、機構が、事務局委託事業における非常勤職員の賃金について、ジーンバンク委託事業と同様の改善策を講じておらず、実績報告書に適切に計上していない事態及び事務局が、実績報告書に対する検査を十分に行わないまま委託費の額を確定している事態は適切とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 機構において、事務局委託事業について、ジーンバンク委託事業と同様の改善策を講じ、非常勤職員の業務の実態を反映させてその賃金を実績報告書に適切に計上することの必要性についての認識が十分でなかったこと
イ 事務局において、事務局委託事業に係る非常勤職員の賃金を実績報告書に適切に計上させるための具体的な方法についての周知徹底が十分でなかったこと及び機構から提出された事務局委託事業に係る実績報告書の内容の検査が十分でなかったこと
事務局においては、今後も多数の事務局委託事業を独立行政法人等に委託することが見込まれ、これに伴い、事務局委託事業における非常勤職員の賃金の経費も多額に上ることが見込まれている。
ついては、貴省において、事務局委託事業における非常勤職員の賃金について、業務実態を反映させて実績報告書に適切に計上することにより委託費の適正な支払を確保するよう、アのとおり是正の処置を要求し並びにイ及びウのとおり是正改善の処置を求める。
ア 機構に対して、20、21両年度の事務局委託事業における非常勤職員の賃金のうち、過大に支払われていたと認められる前記の賃金相当額について国庫に返還させること、また、機構と同様に事務局委託事業を実施している生物研究所等機構以外の独立行政法人等に対して同様の事態がないか20、21両年度の事務局委託事業について調査を行い、その結果、過大に支払われていたと認められる賃金相当額があった場合には、その賃金相当額を国庫に返還させること
イ 事務局委託事業を受託している独立行政法人等に対して、非常勤職員の業務の実施状況を業務日誌に記載することなどにより、非常勤職員が事務局委託事業に従事した時間数を把握し、事務局委託事業に係る非常勤職員の賃金を実績報告書に適切に計上させるよう周知徹底すること
ウ 委託費の適正な支払を確保するため、事務局委託事業の委託契約書に定める調査を必要に応じて実施するとともに、事務局委託事業に係る実績報告書の内容等に対する事務局の検査体制を整備すること
(注2) | 14研究所等 中央農業総合研究センター、作物、果樹、花き、野菜茶業、畜産草地、動物衛生、農村工学、食品総合各研究所、北海道、東北、近畿中国四国、九州沖縄各農業研究センター、生物系特定産業技術研究支援センター
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(注3) | 12研究所等 中央農業総合研究センター、作物、果樹、花き、野菜茶業、畜産草地、動物衛生、農村工学、食品総合各研究所、北海道、九州沖縄両農業研究センター、生物系特定産業技術研究支援センター
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