ページトップ
  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 農林水産省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

国営土地改良事業所等において賃借して使用するパーソナルコンピュータの使用期間をより経済的な年数とすることにより、賃借料の節減を図るなどするよう是正改善の処置を求めたもの


(3) 国営土地改良事業所等において賃借して使用するパーソナルコンピュータの使用期間をより経済的な年数とすることにより、賃借料の節減を図るなどするよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 食料安定供給特別会計(国営土地改良事業勘定)(平成19年度以前は国営土地改良事業特別会計)
      (項)土地改良事業費
      (項)離島土地改良事業費
  一般会計 (組織)農林水産本省
      (項)農林水産本省
      (項)農地等保全管理事業費
      (項)農業生産基盤整備・保全事業費
      (項)海岸事業費
      (項)離島振興事業費
    (組織)地方農政局
      (項)農業生産基盤整備・保全事業工事諸費
      (項)地すべり対策事業工事諸費
      (項)海岸事業工事諸費
部局等 7地方農政局
契約の概要 国営土地改良事業の実施等に当たり、書類の作成等のために使用するパーソナルコンピュータの賃貸借契約及びワープロソフトの使用権の購入契約
パーソナルコンピュータの賃借料相当額 1億8219万余円 (平成18年度〜20年度)  
ワープロソフトの使用権の購入額 1161万余円 (平成18年度〜20年度)  
節減できた賃借料相当額(1) 2920万円 (平成18年度〜20年度)  
節減できた使用権の購入額(2) 395万円 (平成18年度〜20年度)  
(1)、(2)の計 3316万円    

【是正改善の処置を求めたものの全文】

  国営土地改良事業所等におけるパーソナルコンピュータの使用期間等について

(平成22年10月13日付け 農林水産大臣あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 国営土地改良事業所等におけるパーソナルコンピュータの賃貸借契約及びワープロソフトの使用権の購入の概要

(1) 国営土地改良事業所等におけるパーソナルコンピュータの使用状況

 貴省は、国営土地改良事業を実施するなどのために、農林水産省設置法(平成11年法律第98号)等に基づき、各地方農政局に農業水利事務所、農業水利事業所等(以下、これらを「事業所等」という。)の国営土地改良事業所等を設置している。
 事業所等は、国営土地改良事業の実施等に当たり、書類の作成、図面の整理等のために、多数のパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)を使用している。これらのPCには、A社製のワープロソフト(以下「ワープロソフト」という。)等のソフトウェアが必要に応じてインストールされている。

(2) PCの賃貸借契約

 事業所等は、PCを賃貸借契約又は購入契約を締結して調達している。このうち、賃貸借契約においては、使用する期間を想定して(以下、この想定される期間を「想定使用期間」という。)予定価格を算定するなどして、業務の遂行に必要なPCを賃借することにしている。PCの賃借料は、一般に同一のPCを賃借する期間が長くなるほど月額は安価となる。そこで、事業所等は、予定価格の算定に当たって、3年(36月)、4年(48月)等の想定使用期間の月数に基づくなどして賃借料の月額を算出し、これに使用する月数を乗じて予定価格としている。

(3) ワープロソフトの使用権の購入方法及び価格

 事業所等は、ワープロソフトの使用権を購入契約を締結して調達している。ワープロソフトの使用権の購入方法としては、パッケージ(注1) 及びボリュームライセンスがあり、このうちボリュームライセンスは、主に使用権を大量購入する事業者向けのものである。そして、ボリュームライセンスには、新規の購入、保有している使用権のバージョンアップ版の購入(以下「バージョンアップ」という。)等がある。これらは、購入価格がそれぞれ異なり、一般にバージョンアップが最も経済的となる。

(注1)
パッケージ  量販店等で小売されているソフトウェアの使用権を原則として1本単位で購入する方法

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 近年、PC及びワープロソフトは、国営土地改良事業の実施等に当たり、書類の作成等のために事業所等において多数使用されており、PCの賃借料、ワープロソフトの使用権の購入額等は毎年多額に上っている。
 そこで、本院は、経済性、効率性等の観点から、PCの賃借料算定の基となる想定使用期間及びワープロソフトの使用権の購入方法は、経済的となるよう十分に検討されているかなどの点に着眼して検査した。
 そして、7地方農政局(注2) 管内の41事業所等及び管内の事業所等で使用するPCを原則として一括して賃貸借契約を締結するなどしている中国四国農政局が、平成18年度から20年度までの間に締結したPCの賃貸借契約199件(1,702台)、賃借料相当額計1億8219万余円(表1参照) 並びに上記の7地方農政局管内の49事業所等(上記の41事業所等のうちの26事業所等が重複している。)が、同期間中に締結したソフトウェアの使用権等の購入契約115件のうちワープロソフトの使用権1,239ライセンスの購入額計1161万余円(表2参照) を対象として検査を実施した。
 検査に当たっては、3地方農政局管内の3事業所等(注3) において会計実地検査を行って契約書等の関係書類を検査するとともに、中国四国農政局及び上記の3事業所等を除く61事業所等の契約については、7地方農政局に対して関係書類の提出を求め、その内容を確認するなどの方法により検査を行った。

表1  中国四国農政局及び41事業所等におけるPCに係る契約状況

地方農政局名 事業所等数 賃貸借契約数
(件)
PCの台数
(台)
PCの賃借料相当額
(円)
東北農政局
関東農政局
北陸農政局
東海農政局
近畿農政局
中国四国農政局
九州農政局
8
10
3
1
3
3
14
42
52
5
4
6
4
86
287
400
66
40
83
275
551
33,561,557
40,610,206
4,992,219
969,045
10,126,734
14,811,637
77,121,219
42 199 1,702 182,192,617
(注)
中国四国農政局の事業所等数には、同農政局が含まれている。

表2  49事業所等におけるワープロソフトの使用権に係る契約状況

地方農政局名 事業所等数 契約数
(件)
ワープロソフトの使用権数
(ライセンス)
ワープロソフトの使用権の購入額
(円)
東北農政局
関東農政局
北陸農政局
東海農政局
近畿農政局
中国四国農政局
九州農政局
7
7
7
5
3
10
10
14
13
17
17
12
17
25
134
198
218
158
92
129
310
1,258,705
2,068,593
1,917,488
1,310,351
945,039
1,475,446
2,637,324
49 115 1,239 11,612,946
(注2)
7地方農政局  東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局
(注3)
3事業所等  馬淵川沿岸、新矢作川用水、都城盆地各農業水利事業所

 (検査の結果)

 検査したところ、前記のPCの賃貸借契約199件のうち中国四国農政局及び37事業所等(注4) が締結した160件、前記のワープロソフトの使用権の購入契約115件のうち42事業所等(注5) が締結した92件について、それぞれ次のような事態が見受けられた。

ア PCの賃貸借契約における想定使用期間等について

 上記のPCの賃貸借契約199件における予定価格の算定の基となる想定使用期間については、4年未満が183件(1,554台)、4年以上が16件(148台)となっていた。そして、このうち想定使用期間が4年未満となっていた183件の実際の使用期間についてみると、当該PCを想定使用期間経過後にも使用することにより4年以上となっているものが23件(129台)あったが、残りの160件(1,425台)は4年未満となっていた(表3参照)

表3  PCの賃貸借契約における想定使用期間が4年未満のものの実際の使用期間の状況
(単位:件)

想定使用期間 賃貸借契約数 実際の使用期間
想定使用期間のみ使用したもの
A
想定使用期間を超えて4年未満使用したもの
B
4年未満となっていたものの小計
C=A+B
想定使用期間を超えて4年以上使用したもの
3年未満 2 1 1 2 0
3年 179 126 30 156 23
3年超4年未満 2 2 0 2 0
183 129 31 160 23

 上記の実際の使用期間が4年未満となっている160件の契約を締結した中国四国農政局及び37事業所等は、従前からの取扱いを踏襲して想定使用期間を4年未満としていたことなどから、PC1,425台の使用を4年未満で終了していた。
 しかし、中国四国農政局及び37事業所等のうち19事業所等においては、購入契約を締結して調達したPC170台をPCの法定耐用年数である4年を経過して支障なく使用していたことなどから、使用期間が4年未満であったPC1,425台についても少なくとも4年間は使用できたと認められる。

イ ワープロソフトに係る使用権の購入について

 前記のワープロソフトの購入契約115件において、ワープロソフトの使用権を1,239ライセンス購入しており、115件のうち、16事業所等が締結した23件、455ライセンスについてはバージョンアップによっているものの、42事業所等が締結した92件、784ライセンスについては保有している使用権があるにもかかわらず新規に使用権を購入していた。
 しかし、貴省は、ワープロソフトの使用権を多数保有していることから、貴省において事業所等における使用権の保有状況を把握していたとすればバージョンアップによることができる状況であった。
 前記アの実際の使用期間が4年未満となっていたPCに係る賃貸借契約160件について、購入するなどして調達したPCと同様に少なくとも法定耐用年数である4年が経過するまで使用するとしたとして賃借料相当額を修正計算すると、1億5248万余円が1億2327万余円となり、2920万余円節減できたと認められる。また、前記イのワープロソフトの使用権の購入契約92件について、保有していたワープロソフトの使用権のバージョンアップによることとしたとして購入額を修正計算すると、889万余円が493万余円となり、395万余円節減できたと認められる。
 そして、これらを合計すると3316万余円節減できたこととなる。

(注4)
37事業所等  津軽、大和紀伊平野、筑後川下流各農業水利事務所、西奥羽、利根川水系、西北陸、淀川水系、北部九州、南部九州各土地改良調査管理事務所、東北、関東、北陸、近畿、九州各農政局土地改良技術事務所、いさわ南部農地整備事業所、馬淵川沿岸、平鹿平野、最上川下流沿岸、隈戸川、両総、北総中央、那珂川沿岸、神流川沿岸、大井川用水、佐渡、岡山南部、筑後川下流白石平野、尾鈴、西諸、都城盆地、曽於北部、肝属中部、徳之島用水各農業水利事業所、渡良瀬川中央、佐賀中部両農地防災事業所、有明、玉名横島両海岸保全事業所
(注5)
42事業所等  大和紀伊平野農業水利事務所、四国東部農地防災事務所、北奥羽、西奥羽、阿武隈、西関東、信濃川水系、西北陸、木曽川水系、淀川水系、南近畿、中国、四国、北部九州、南部九州各土地改良調査管理事務所、東北、中国四国両農政局土地改良技術事務所、中海干拓建設事業所、和賀中部、米沢平野、両総、北総中央、神流川沿岸、大井川用水、佐渡、新川流域、柏崎周辺、九頭竜川下流、新矢作川用水、宮川用水第二期、斐伊川沿岸、岡山南部、香川用水土器川沿岸、尾鈴、曽於北部、徳之島用水、沖永良部各農業水利事業所、新濃尾、那賀川、筑後川下流左岸各農地防災事業所、高知三波川帯農地保全事業所、玉名横島海岸保全事業所

 (是正改善を必要とする事態)

 中国四国農政局及び事業所等において、PCについて使用期間を十分に検討せず、従前のとおり想定使用期間を4年未満として賃借を行うなどしていた事態、事業所等において、ワープロソフトの使用権について保有している使用権があるにもかかわらず新規に購入していた事態は、いずれも適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、中国四国農政局及び事業所等において、PCについて適切な使用期間を検討することにより賃借料の節減を図ることに対する認識が十分でなかったこと、事業所等において、ワープロソフトについて保有する使用権のバージョンアップによることとして購入することにより購入額の節減を図ることに対する認識が十分でなかったことによると認められる。
 また、貴省において、中国四国農政局及び事業所等におけるPCの使用期間の実態の把握、事業所等におけるワープロソフトの使用権の保有状況の把握、経済的な調達方法の利用の徹底を図るための指導が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 事業所等においては、国営土地改良事業の実施等に当たり、書類の作成等の業務の遂行のためにPC及びワープロソフトの使用は必要不可欠なものとなっており、今後も使用を見込んでいる。
 ついては、貴省において、PCの賃借料及びワープロソフトの使用権の購入額の節減を図るよう、次のとおり是正改善の処置を求める。  
ア 事業所等に対して、PCの賃借における使用期間を少なくとも4年とすることについて周知徹底を図ること
イ 事業所等に対して、保有するワープロソフトの使用権を管理、把握して、バージョンアップにより調達することについて周知徹底を図ること