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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

農林水産省行政情報システム等保守業務契約について、保守員の業務の実態に即した積算を行うための基準を整備することなどにより、予定価格の積算を適切なものとするよう改善させたもの


(1) 農林水産省行政情報システム等保守業務契約について、保守員の業務の実態に即した積算を行うための基準を整備することなどにより、予定価格の積算を適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農林水産本省共通費
部局等 農林水産本省
契約名 農林水産省行政情報システム等保守業務
契約の概要 農林水産省行政情報システム等を円滑に運用するため、同システム等を構成する各種機器の障害復旧、運用支援、予防保守、監視業務等を請け負わせるもの
支払額 9億0636万余円 (平成19年度〜21年度)
契約の相手方 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
契約 平成19年4月、20年4月、21年4月 一般競争契約
積算額 9億3856万余円 (平成19年度〜21年度)
低減できた積算額 1億3170万円 (平成19年度〜21年度)

1 農林水産省行政情報システム等保守業務契約の概要

 農林水産省は、農林水産省行政情報システム等を円滑に運用するため、同システム等を構成する各種機器の障害復旧、運用支援、予防保守、監視業務等の業務を、平成19年度から21年度までの各年度において、一般競争契約により、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「会社」という。)と農林水産省行政情報システム等保守業務契約(以下「システム保守契約」という。)を締結して請け負わせており、計9億0636万余円を支払っている。
 上記業務のうち、外部の監視センタで年間を通じて終日行う監視業務以外の業務は、システム保守契約の仕様書によると、原則としてシステムの保守員を農林水産本省(以下「本省」という。)に常駐させて行うこととしており、保守員の1日の勤務時間を8時間(閉庁日を除く。以下、この勤務時間を「常駐時間」という。)として、保守員は9名以上配置するなどとしている。そして、会社は、業務を行う上で、保守員では技術的に対応できない障害復旧や運用支援のため、各システムの構築業者等と保守業務契約を締結したり、保守員以外の会社の職員を配置したりしている。
 農林水産省は、本件業務について予定価格を積算するための基準等を作成していないことから、仕様書に定められた内容に基づく参考見積りを会社から徴し、これを基にシステム保守契約の予定価格を積算している。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、本省及び会社において、経済性等の観点から、システム保守契約の予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、前記の19年度から21年度までに締結した3件の契約を対象として、契約書、仕様書、参考見積りなどの書類及び業務実態を確認するなどして会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 保守員の人数について

 農林水産省は、前記のとおり、システム保守契約の仕様書では保守員の人数を9名以上としていたが、19年度に会社から徴した参考見積りで保守員の人数が11名となっていたことから、19年度契約ではこれをそのまま採用し、保守員が11名必要であるとして積算していた。一方、20、21両年度に会社から徴した参考見積りでは、保守員の人数が9名となっていたため、両年度の契約では保守員をそれぞれ9名として積算していた。
 そこで、19年度における保守員の勤務状況について、会社が農林水産省の監督職員に提出することとされている各業務に関する日次報告書や保守員が会社に提出した勤務表により調査したところ、積算で見込まれた11名のうち1名は、日次報告書に保守員として作業を行ったことの記載がないなど、本省に常駐して業務を行った事実を確認することができなかった。また、他の2名は年間を通して交互に出勤しており、実質的には2名で1名分の業務しか実施していなかった。このため、業務の実態からみれば、19年度についても、他の年度と同様に9名分相当の業務であったと認められた。
(2) 保守員の勤務時間について

 農林水産省は、保守員の勤務時間について、会社から徴した19年度から21年度までの各年度の参考見積りにおいて、保守員1名当たりの勤務時間が1日10時間(19年度の1名については1日8時間)となっていたことから、システム等に生じた突発的な障害を復旧する業務等が常駐時間外に行われることを考慮して、これをそのまま採用し、2時間に相当する人数分を保守員の人数に上乗せして積算していた。
 しかし、システム等に生じた突発的な障害を復旧する業務等が発生した場合には、農林水産省と会社が協議した上で、必要があれば常駐時間外で対応させることとして、その費用は別途精算するなどして支払うべきものであり、このような業務が常態的に発生することとして、あらかじめ保守員1名当たり2時間に相当する人数分を保守員の人数に上乗せする必要はないと認められた。
(3) 保守員の月額単価について

 農林水産省は、保守員の月額単価について、次のとおり、19、20、21各年度でそれぞれ異なる方法により設定していた。
〔1〕  19年度においては、刊行物である積算参考資料に記載されている月額単価を用いることとし、11名のうち2名は主にシステムの管理を行い、単独での業務遂行が求められるとしてシステム管理技術者1(注) の月額単価849,000円(諸経費込み。以下同じ。)を、その他の9名は主に機器等の設定や操作支援を行うとしてシステム管理技術者2(注) の月額単価724,000円を適用していた。一方、同年度における保守員の業務の実態をみると、前記のとおり9名分相当の業務となっていて、このうち2名についてはシステム管理技術者1の業務内容に、その他の保守員についてはシステム管理技術者2の業務内容に適合するものとなっていた。
〔2〕  20年度においても、同様に積算参考資料に記載されている月額単価を用いることとしたが、参考見積りで保守員の人数が19年度に比べ2名減少していたことから、各保守員が単独で業務を遂行する能力が必要であるとして、9名全員にシステム管理技術者1の月額単価883,000円を適用していた。
〔3〕  21年度においては、積算参考資料に記載されている月額単価を用いることなく参考見積りに記載されていた月額単価をそのまま採用して、9名のうち2名は、システム管理技術者1の月額単価882,000円を上回る1,200,000円、その他の7名は、システム管理技術者2の月額単価754,000円を上回る950,000円としていた。
 しかし、システム保守契約の仕様書によれば、19年度から21年度までの業務内容は全く同様のものとなっており、また、保守対象となっているシステム等の中に新設又は廃止されたものはあったものの、単独での業務遂行が求められる保守員の数は、いずれの年度も2名となっていた。そして、上記(1)のとおり、19年度の業務の実態は、20、21両年度と同様に9名分相当の業務であったことなどから、20年度において、9名の保守員全員にシステム管理技術者1の月額単価を適用したり、21年度において、積算参考資料に記載された月額単価を大きく上回る参考見積りの月額単価を適用したりする必要はなかったと認められた。
 このように、システム保守契約の予定価格の積算に当たり、保守員の業務の実態を的確に把握しないまま、その人数、勤務時間及び月額単価を決定し、これを適用している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 システム管理技術者1・システム管理技術者2  「システム管理技術者1」は、サーバやネットワーク環境の設定を行い、システムの管理を行う技術者のことであり、また、「システム管理技術者2」は、クライアント環境やパソコン及びその周辺機器の設定や操作支援を行う技術者のことである。

 (低減できた積算額)

 上記のことから、保守員の人数については業務の実態に即した人数を、勤務時間については常駐時間外の勤務を見込まない勤務時間を、月額単価については、2名にシステム管理技術者1の月額単価、7名にシステム管理技術者2の月額単価をそれぞれ用いて、19年度から21年度までの各年度におけるシステム保守契約の予定価格の積算額を修正計算すると、計8億0681万余円となり、積算額計9億3856万余円を約1億3170万円低減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、農林水産省において、保守員の業務の実態を的確に把握していないため、業務の実態に即した仕様書の見直しが行われていなかったこと、システム保守契約の予定価格を積算するための基準等が整備されていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、保守員の業務の実態を的確に把握した上で、21年12月に業務の実態に即して仕様書の見直しを行うとともに、22年2月にシステム保守契約の予定価格を積算するための基準を整備して、同年4月以降のシステム保守契約から適用する処置を講じた。