農林水産省は、中山間地域を対象として農業生産基盤とともに農村生活環境等の整備を併せて行うことにより、農業・農村の活性化を図り、地域における定住の促進等に資することを目的として、中山間地域総合整備事業を実施している。しかし、この事業により整備された活性化施設のうち多数の施設について、実際の利用者数が計画利用者数を下回っていて、活性化施設の整備に係る事業効果が十分に発現していない事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、人口の減少、高齢化等の中山間地域を取り巻く各種の社会経済状況を十分に勘案して、活性化施設内における販売スペース等の設置に関する規制の緩和を図るとともに、活性化施設の利用者数の増加を図るために、都道府県に対して、利用状況が好調な活性化施設の事例を市町村等に紹介するなどして、販売スペース等の設置、都市部や地域外の住民との交流の拡大に向けた指導を行うことなどを要請する処置を講ずるなどして、既存の活性化施設の有効利用を促進することにより、中山間地域における農業・農村の一層の活性化を図るよう、農林水産大臣に対して平成21年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、21年9月及び10月に発出した通知に基づき、活性化施設内における販売スペース等の設置に関する規制の緩和を図るとともに、都道府県に対して、市町村等に活性化施設の利用者数の増加を図るための指導を行うことを要請するなどの処置を講じていた。