会計名及び科目 | エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定) | |
(項)燃料安定供給対策費 | ||
部局等 | 資源エネルギー庁、8経済産業局、内閣府沖縄総合事務局 | |
交付金の概要 | 石油貯蔵施設の設置に伴い必要となる公共用施設の整備に係る経費の全部又は一部に相当する額を都道府県に対して交付するもの | |
交付金交付額 | 170億5159万余円 | (平成19年度〜21年度) |
石油貯蔵施設の使用状況に即して算定した場合に低減できた交付限度額 | 1億0254万円 | (平成19年度〜21年度) |
資源エネルギー庁は、「石油の備蓄の確保等に関する法律」(昭和50年法律第96号)に定める石油の備蓄を行っている国、石油精製業者及び石油輸入業者等が新設、増設又は保有する石油貯蔵施設が立地する市町村(以下「立地市町村」という。)及びこれに隣接する市町村をその区域とする都道府県に対して、石油貯蔵施設立地対策等交付金交付規則(昭和53年通商産業省告示第434号。以下「交付規則」という。)に基づき、石油貯蔵施設立地対策等交付金(以下「交付金」という。)を交付している。
交付金制度は、石油貯蔵施設の立地については、地元の経済的メリットが少ない反面、立地に伴い防災施設の設置及び維持が必要になることなどから、石油の備蓄を円滑に実施していくために、地元住民の理解と協力を得る必要があるとして、昭和53年に創設されたものである。
経済産業省の8経済産業局(注1)
及び内閣府沖縄総合事務局(以下「9経産局等」という。)は、交付規則に基づき、新増設の場合は新増設される石油貯蔵施設の貯蔵能力に応じて、既設の場合は交付年度の前年度末現在の市町村当たり石油貯蔵施設の貯蔵能力に応じて、交付限度額を算定している。そして、9経産局等は、交付金の交付申請に際して、立地市町村をその区域とする道府県から、交付限度額の算定根拠資料として、石油貯蔵施設の貯蔵能力等を記載した貯蔵量証明書を提出させて、これを基に貯蔵能力等の確認を行って交付限度額を算定して、予算及び交付限度額の範囲内で交付金を交付している。
交付金の交付実績は、平成19年度57億7022万余円(交付限度額68億9709万余円)、20年度56億7274万余円(同69億0844万余円)、21年度56億0862万余円(同69億1165万余円)、計170億5159万余円(交付限度額計182億6919万余円(注2)
)である。
(注1) | 8経済産業局 北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州各経済産業局
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(注2) | 交付限度額計は新増設の石油貯蔵施設に係る分が各年度で重複しているため合わない。 |
近年、国内における石油製品需要が減少しており、石油貯蔵施設の貯蔵能力に余剰が生じていることが想定される。
そこで、本院は、経済性、有効性等の観点から、石油貯蔵施設の使用状況が的確に把握されているか、交付限度額が石油貯蔵施設の使用状況に即して適切に算定されているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、石油貯蔵施設の使用状況を市町村等の保有する書類等により確認可能な19年度から21年度までに32都道府県(注3)
に対して交付した前記の交付金計170億5159万余円を対象として、資源エネルギー庁及び9経産局等において、交付限度額の算定根拠資料等を確認するなどして会計実地検査を実施した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
資源エネルギー庁は、使用を休止し当該市町村の条例に基づく休止届を消防本部等に提出した石油貯蔵施設(以下「休止施設」という。)について、消防法(昭和23年法律第186号)上は休止についての規定がないこと、再開が前提と想定されることなどから、「石油貯蔵施設立地対策等交付金事務処理の手引き」(平成3年資源エネルギー庁石油部備蓄課作成)により、交付限度額の算定対象としても差し支えないこととして運用している。
これを受けて、中部経済産業局を除く8経産局等は、休止中の石油貯蔵施設の貯蔵能力をそのまま含めて交付限度額を算定していた。
そこで、21年度の交付限度額の算定対象とした石油貯蔵施設約6400施設(貯蔵能力1億8241万kL)の使用状況を調査したところ、21年3月末現在、221施設が休止中であり、21年度中に使用を再開していた8施設を除き、213施設(貯蔵能力197万kL)は年度を通じて休止中であった。
これら213施設の21年3月末現在での休止期間は、1年未満が27施設、1年以上が186施設であり、半数を超える129施設は4年以上で、10年以上のものが60施設あった。また、休止届に記載された休止期間等によれば、再開の予定は、22年度までが22施設、23年度が19施設、再開未定が172施設となっていた。
上記の213施設は、調査した22年7月現在においてもすべて休止していて、21年度においては石油の備蓄の用に供されておらず、再開の予定が明らかでなかったり、再開予定時期を過ぎても再開されていなかったりなどしていた。このように年度を通じて休止施設となっているものに係る交付限度額は、19年度6402万余円、20年度8342万余円、21年度8227万余円、計2億2972万余円となっていた。
交付限度額の算定に当たり、石油貯蔵施設が立地していることについて地元住民の理解と協力を得て、それを維持していくことなどを考慮する必要はあるとしても、前記のように、石油の備蓄を円滑に実施するための交付金であることから、石油の備蓄の用に供されていない休止施設の貯蔵能力をそのまま交付限度額の算定に含めている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
休止施設であっても防災施設の維持は必要となることなども踏まえ、前記の休止施設について、仮に貯蔵能力を2分の1に減じることとして修正計算すると、交付限度額を1億0254万余円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、休止施設の中には具体的な再開の予定がないまま長期間休止しているものが相当数あるにもかかわらず、資源エネルギー庁において、休止の状況を十分把握しないまま、休止施設は再開を前提としたものであるなどとして、貯蔵能力をそのまま交付限度額の算定に含めていたことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、同庁は、石油の備蓄の円滑な実施のため、地元住民の理解と協力を得て、それを維持しつつも制度をより適切に運用するよう、次のような処置を講じた。
22年9月に、9経産局等に対して通知文書を発して、23年度の交付限度額の算定から、休止施設については当該施設の貯蔵能力を2分の1に減じた取扱いとするとともに、休止の状況を的確に把握できるよう貯蔵量証明書の様式を改めるなどして、石油貯蔵施設の使用状況に即した運用とした。