会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | ||||||||||
(項)都市鉄道・幹線鉄道整備事業費 | ||||||||||||
部局等 | 国土交通本省 | |||||||||||
繰り越して使用 した経費の概要 |
国土交通省が、北大阪急行電鉄株式会社及び西大阪高速鉄道株式会社が平成18年度に実施する火災対策のための駅施設の改良工事に対して交付した補助金のうち、事業が同年度内に完了しなかったとして、19年度に繰り越して交付したもの | |||||||||||
繰り越して交付された国庫補助金の額 |
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上記のうち会計法令に違背して繰り越して使用されていて不当と認められるもの |
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国土交通省は、都市鉄道及び幹線鉄道の整備に必要な経費の一部を補助する都市鉄道・幹線鉄道整備事業を実施しており、その一環として、公営地下鉄を運営する地方公共団体、既存駅の改良整備及び保有を業務とする第三セクター等(以下「補助対象者」という。) が、地下駅に排煙設備等を新設するために駅施設の改良工事を行う場合、補助対象者に対して、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)を通じて地下駅火災対策施設整備事業費補助(以下「補助金」という。)を交付している。
同省は、北大阪急行電鉄株式会社及び西大阪高速鉄道株式会社(以下、これらの2会社を合わせて「両会社」という。)が地下駅に排煙設備を新設するために実施した改良工事等について、機構を通じて、平成18年度に実施した工事等に係る分としてそれぞれ101,666,666円及び61,940,470円の補助金を18年度予算により交付し、また、18年度から19年度に繰り越して実施した工事等に係る分としてそれぞれ5,000,000円及び4,552,196円の補助金を18年度予算から繰り越した19年度予算により交付していた。
国の会計制度においては、財政法(昭和22年法律第34号。以下「法」という。)第12条において、各会計年度における経費はその年度の歳入をもって支弁しなければならないこと、法第42条本文において、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、原則として、翌会計年度において使用することができないこととされており、会計年度独立の原則が定められている。そして、この原則によると、当該年度内に使用されない金額は不用額とすることになる。
しかし、この原則どおりに処理することがかえって非効率となることもあることから、法において、会計年度独立の原則に対する例外の一つとして歳出予算の経費の繰越しの制度が認められている。
法が認める歳出予算の経費の繰越しの制度には、法第14条の3に基づく明許繰越と法第42条ただし書に基づく事故繰越とがある。このうち、明許繰越は、歳出予算の経費のうち、その性質上又は予算成立後の事由に基づき年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについて、あらかじめ繰越明許費として国会の議決を経た経費を翌年度に繰り越して使用することを認めるものである。そして、それぞれの経費についての繰越しを必要とする事由は、各年度の予算参照書に掲げられており、この事由に該当する場合にのみ翌年度に繰り越して経費を使用することが認められる。また、事故繰越は、歳出予算の経費の金額のうち、年度内に支出負担行為をなし、避け難い事故のため年度内に支出を終わらなかったものを翌年度に繰り越して使用することを認めるものである。
本件補助金を含む都市鉄道・幹線鉄道整備事業に要する経費は繰越明許費とされており、予算参照書には、繰越しを必要とする事由として、「事業の性質上その実施に相当の期間を要し、かつ、事業が本年度内に終わらない場合にも引き続いて実施する必要があるものであり、計画又は設計に関する諸条件、気象又は用地の関係、補償処理の困難、資材の入手難その他のやむを得ない事由により、年度内に支出を完了することが期し難い場合もあるため」とされている。
本院は、合規性等の観点から、補助金に係る会計経理が会計法令等に従って適正に行われているかなどに着眼して、両会社が実施した18年度の補助事業に対する補助金を対象として、国土交通省、機構等において、予算の繰越し、補助金の交付等に関する書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、上記の補助金のうち、国土交通省が、18年度予算から19年度予算に繰り越して交付した前記の補助金5,000,000円及び4,552,196円、計9,552,196円に係る会計経理について、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
国土交通省は、18年4月に、本件補助事業について、両会社が機構に対してそれぞれ行った交付申請の内容に基づいて、補助対象経費を320,000,000円及び199,478,000円、補助金の額を106,666,666円及び66,492,666円とする補助金の交付決定を行った。
交付決定を受けた後、両会社は、本件補助事業に係る工事について、工法の変更、設計単価、数量等の見直しを行うなどした上で発注を行い、その結果、実際の工事費等に基づく補助対象経費は305,000,000円及び185,821,410円となり、交付決定を受けた上記の補助対象経費と比べて、それぞれ15,000,000円及び13,656,590円少ない額で補助事業が完了する見込みとなった。
しかし、同省は、この見込みについて両会社から報告を受けた際に、上記の差額については、不用額等とするのではなく、翌年度に繰り越して使用するよう提案するなどした。そして、同省は、19年3月に、この提案に基づき、本件補助事業について、設計の変更を生じたので設計変更、契約変更等の手続に不測の日数を要したとの事由により、これは、法第14条の3に基づいて予算参照書に規定された前記の明許繰越の事由に該当するとして、上記の補助対象経費の減少見込額15,000,000円及び13,656,590円に係る補助金相当額5,000,000円及び4,552,196円を19年度に繰り越す手続をとった。
そして、本件補助事業に係る工事等は19年3月までに前記の見込みどおりに補助対象経費305,000,000円及び185,821,410円で完了していたが、これに対して、同省は、同月、繰越しの手続をとった上記の金額を除いた補助金101,666,666円及び61,940,470円を機構を通じて両会社に概算払により交付し、その後、20年4月に、本件補助事業が交付決定の内容どおりに補助対象経費320,000,000円及び199,478,000円で完了したとして、補助金の額を106,666,666円及び66,492,666円と確定して、繰越しの手続をとった5,000,000円及び4,552,196円を機構を通じて両会社に交付した(なお、19年度に繰り越して交付されたこれらの補助金は、同年度に両会社が実施した本件補助事業とは別の補助事業である他の駅施設の改良工事等に係る事業費に充当されていた。)。
このように、国土交通省は、両会社が18年度に実施するとしていた本件補助事業が交付決定を受けた補助対象経費より少ない額で年度中に完了していることを認識していながら、当該差額に係る補助金相当額について19年度に繰り越していた。
このような事態は、法等に定められた明許繰越の事由にも、事故繰越の事由にも該当せず、翌年度に繰り越して使用することが認められないにもかかわらず、明許繰越の事由に当たるとして予算の残額を翌年度に繰り越して使用したもので、法第42条本文の予算の繰越使用の制限に違背しており、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、会計法令を遵守して会計経理を適正に行うことについての認識が十分でなかったことなどによると認められる。