会計名及び科目 | 社会資本整備事業特別会計(治水勘定) | (項)北海道河川整備事業費 |
部局等 | 北海道開発局旭川開発建設部 | |
工事名 | 天塩川改修工事の内 筬島(おさしま)築堤釜場工事 | |
工事の概要 | 一級河川天塩川の水位上昇時に、排水ポンプ車等を用いて、増水する堤内排水路から排水するために、平成21年度に、盛土工、舗装工等を施工するもの | |
工事費 | 102,300,000円
(当初契約額 81,480,000円)
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請負人 | 株式会社騎西組 | |
契約 | 平成21年8月 一般競争契約 | |
しゅん功検査 | 平成22年2月 | |
支払 | 平成21年9月、22年4月 2回 | |
不適切な施工となっている工事費 | 56,923,000円
(平成21年度)
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この工事は、北海道開発局旭川開発建設部(以下「開発建設部」という。)が、一級河川天塩 川の内水対策の一環として、北海道中川郡音威子府(おといねっぷ)村字筬島(おさしま)地内において、天塩川の水位上 昇時に右岸側の堤内排水路の樋門を閉めた際に、排水ポンプ車等を用いて、増水する堤内排 水路から天塩川に排水するために、平成21年度に、盛土工(7,600m3
、延長156.5m)、舗装 工(1,450m2
)、堤内排水路の付替え(延長176.9m)、進入路(延長99.1m)、排水作業ヤード及 び排水ピットの新設等を工事費102,300,000円で施工したものである(参考図参照)。
このうち盛土工は、排水ポンプ車等が排水作業ヤードに降りる進入路等を新設するため に、堤防の拡幅等を行うものである。
そして、盛土工の施工に当たっては、北海道開発局制定の「道路・河川工事仕様書」等の設 計図書によると、次のとおり施工することなどとなっている。
〔1〕 締固め作業に当たっては、適切な含水比の状態で施工する。
〔2〕 盛土箇所における締固め度の規格値は、最大乾燥密度 (注)
の85%以上とする。
〔3〕 堤防の盛土工における基準高の規格値は、設計値−5cmの範囲とする。
本院は、開発建設部において、合規性等の観点から、本件工事の施工が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書、工事写真等の書類及び現地の状況を確認するなどして検査したところ、盛土工の施工が次のとおり適切でなかった。
すなわち、現地の状況を確認したところ、盛土工を施工した全域において、堤防の盛土面が沈下していたり、堤防天端、進入路及び排水作業ヤードの舗装の全面に多数の亀裂が生じていたり、堤内排水路が波打っていたりしていた。そこで、工事の起点から終点までの間の堤防盛土部の法肩等の基準高を154か所で測定したところ、このうち119か所で設計図書に定める基準高の規格値(設計値−5cmの範囲)を超えて沈下していて、最大で67cmの沈下が生じていた。また、盛土部を掘削し、盛土内部の状態を確認したところ、土の含水比が高く、ぬかるんだ状態が見受けられたことから、現場密度試験を実施して、締固め度を14点で測定したところ、このうち9点で設計図書に定める締固め度の規格値(最大乾燥密度の85%以上)を下回っていた。
上記の事態について、工事写真等により施工状況を確認したところ、盛土工の施工に当たり、段切り部に適切な勾配をつけるなどの雨水処理をしていなかったり、盛土材の敷均し、転圧等の作業を降雪時にも実施したりしていた。
これらのことから、盛土材に雪氷が混入するなどして含水比が高くなり、適切でない含水比の状態のままで締固め作業を実施していたと認められた。
したがって、本件工事は、盛土工の施工が著しく粗雑となっていたため、排水ポンプ車等を用いて排水することができない状況となっていて、工事の目的を達しておらず、盛土工等に係る工事費相当額56,923,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、請負人が設計図書等についての理解が十分でなく、盛土工について粗雑な施工をしていたのに、これに対する開発建設部の監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
(堤防の概念図)
(堤防の横断図)