ページトップ
  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 物件

管理が適切でなかったため、被補償者に提供するために取得した代替地用地が第三者に使用されていたもの


(734) 管理が適切でなかったため、被補償者に提供するために取得した代替地用地が第三者に使用されていたもの

部局等 北海道開発局釧路開発建設部
国有財産の区分 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)所属
  (平成19年度以前は、道路整備特別会計所属)
  (分類)普通財産 (区分)土地
代替地用地の概要 事業に必要な用地の取得に際して代替地を要望する被補償者に提供するための土地
管理が適切でなかった代替地用地の面積 1,148.9m (平成21年度末)
上記に係る国有財産台帳価格相当額 13,189,946円

1 代替地用地の概要

 北海道開発局釧路開発建設部(以下「釧路開発建設部」という。)は、一般国道335号の拡幅事業を実施するために必要な土地の所有者及び当該土地上に自己の居住の用に供する建物を所有する者等(以下、これらを合わせて「被補償者」という。)のうち、金銭による損失補償に代えて代替地を要望する被補償者に提供するための土地(以下「代替地用地」という。)を、平成7年度から12年度までの間に取得している。この代替地用地は、釧路開発建設部が所有者から買収した土地や、これに隣接する海浜地及び公有水面を埋め立てた土地を造成したものである。
 そして、国有財産である代替地用地については、国有財産法(昭和23年法律第73号)により、良好な状態での維持及び保存、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分を行わなければならないとされている。また、「建設省の直轄の公共事業の施行に伴う代替地対策に係る事務処理要領について」(昭和62年建設省経整発第51号建設事務次官通達)によると、公共事業の施行に伴い、生活再建のため必要があると認められる被補償者に対して、代替地の提供に努めるものとされている。
 釧路開発建設部は、代替地を要望する被補償者に対しては、代替地用地を取得した後に、提供する代替地の面積を確定し、当該被補償者と売買契約等を締結して代替地を提供することとしている。

2 検査の結果

 本院は、釧路開発建設部において、合規性、有効性等の観点から、代替地用地の管理が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、釧路開発建設部が管理する10,622.2m の代替地用地を対象に、国有財産台帳、代替地台帳等の関係書類、現地の状況等を検査したところ、代替地用地の管理が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、釧路開発建設部が管理する上記の代替地用地のうち、1,148.9m 、国有財産台帳価格相当額13,189,946円の用地(以下「本件用地」という。)が、被補償者ではない第三者により業務用の倉庫の敷地等として使用されていた。
 このような状況となっていた経緯は以下のとおりであった。
 本件拡幅事業の実施に当たり、釧路開発建設部は、被補償者Aの所有する倉庫が、事業用地とこれに隣接した海浜地を埋め立てるなどして造成することとしていた代替地用地とにまたがって建てられていたため、事業用地の取得及び代替地用地の造成に支障となることから、同倉庫を移転させる必要が生じたが、被補償者Aが同倉庫の移転先として要望したのが上記の造成が完了していない代替地用地であったため、同倉庫を仮移転することになった。この仮移転の際、仮移転先の土地の確保が困難であったことなどから、釧路開発建設部は、8年に、被補償者Aに対して、当時造成が完了していた本件用地を仮移転先として倉庫を建築することを容認した。その後、10年に、被補償者Aは、本移転先の代替地用地の造成が完了したことから、その用地に新たに倉庫を建築して移転したが、その際、本件用地上の倉庫を被補償者ではない第三者Bに譲渡し、それ以降、本件用地は、その倉庫の敷地等として第三者Bにより使用されていた。
 しかし、代替地用地は、釧路開発建設部が被補償者の生活再建のために提供することを目的として取得したものであることから、釧路開発建設部は、被補償者Aが倉庫を本移転先の用地に移転させた後は、本件用地を被補償者ではない第三者に使用されることのないよう適切に管理する必要があったと認められる。
 したがって、本件用地について、代替地用地の取得の目的に沿った管理が適切に行われておらず被補償者ではない第三者により長期間にわたり使用される事態となっていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、釧路開発建設部において、被補償者の生活再建のために提供するとして取得した代替地用地を適切に管理することについての認識が十分でなかったことなどによると認められる。