まちづくり交付金は、都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)等に基づいて、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が一定の地区について都市再生整備計画(以下「整備計画」という。)を定めて、整備計画に基づく事業を実施する場合に、その経費に充てるため、当該市町村に対して交付するものである。
まちづくり交付金交付要綱(平成16年国都事第1号、国道企第6号、国住市第25号国土交通事務次官通知。以下「交付要綱」という。)によれば、まちづくり交付金の交付対象事業は、基幹事業と提案事業に大別されている。基幹事業は、整備計画の目標を達成するために必要な施設等の整備事業とされ、国土交通省が従来、個別の補助制度において支援してきた道路、公園、広場等の公共施設のほか、地域交流センター等の整備が事業の対象となっている。また、提案事業は、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事務又は事業で、市町村の自由な発想・提案に基づいて地域の実情を反映した幅広い事業の実施が可能となっていて、個別の補助制度がない施設や、既存の補助制度の採択基準を満たしていない施設の整備等を事業の対象にできることとなっている。
そして、交付要綱によれば、まちづくり交付金の交付限度額は、各市町村の整備計画における全体の交付対象事業費に対する提案事業の交付対象事業費の割合(以下「提案事業割合」という。)が28% 以下の場合は、当該全体の交付対象事業費に10分の4を乗じた額、提案事業割合が28%を超える場合は、基幹事業の交付対象事業費に9分の5を乗じた額とされていて、提案事業割合が高くなるほど、全体の交付対象事業費に対する交付限度額の割合は40%より減少することとなっている(図参照)。
図 まちづくり交付金の交付限度額の算定方法
本院が会計実地検査を行ったところ、1市1町において、まちづくり交付金の交付限度額の算定に当たり、基幹事業の施設と提案事業の施設を合体して整備した建物の共用部分については、その延床面積をそれぞれの事業の施設に案分すべきであったのに、すべて基幹事業の施設に含めて交付対象事業費を算定したり、提案事業として区分すべき施設の整備費用を基幹事業の交付対象事業費に含めたりして、交付限度額を過大に算定していたため、交付金計40,466,668円が過大になっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、1市1町において、まちづくり交付金事業の適正な実施及び経理に対する認識が十分でなかったこと、整備計画の策定に当たり基幹事業と提案事業の区分についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
これを事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 |
|
左に対する国庫補助金等交付額等 |
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不当と認める国庫補助金等相当額 | |||||
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||||||
(735) | 山形県 | 西置賜郡 白鷹町 |
まちづくり交付金 (高次都市施設等) |
17〜21 | 1,185,800 (1,185,800) |
709,100 | 30,400 (30,400) |
18,411 |
この交付金事業は、白鷹町が、鮎貝地区において、基幹事業として地域交流センター、広場等の整備を、また、提案事業としてギャラリー(絵画の常設展示場等)の整備等を行っているものである。このうち、地域交流センターとギャラリーは、合体して整備する施設となっている。そして、同町は、整備計画における全体の交付対象事業費1,687,200,000円のうち、基幹事業の交付対象事業費を1,185,800,000円、提案事業の交付対象事業費を501,400,000円とし、提案事業割合が28%を超えることから、交付限度額は基幹事業の交付対象事業費に9分の5を乗ずるなどして算定した709,100,000円であるとして、同額の交付又は交付決定を受けていた。
同町は、本件交付対象事業費のうち、合体の施設として整備した地域交流センターとギャラリーの交付対象事業費については、その整備費用の合計額に、ギャラリーの専用延床面積200を建物全体の延床面積1,819m2
で除した値を乗ずるなどしてギャラリーに係る交付対象事業費を算出し、これを合計額から差し引いた額を地域交流センターに係る交付対象事業費としていた。
しかし、上記の建物内には風除室、ロビー、受付等があり、これらは地域交流センター及びギャラリー両施設の使用者の利用に資する共用部分であることから、当該共用部分に係る延床面積(584m2
)をそれぞれの施設に案分すべきであったのに、同町が、そのすべてを地域交流センターの延床面積に含めて、これにより、上記のように両施設に係る交付対象事業費を算定していたのは適切とは認められない。
したがって、上記の共用部分を基幹事業、提案事業それぞれの専用延床面積の割合で案分するなどして基幹事業の適正な交付対象事業費を算定すると1,155,400,000円となり、交付限度額はこれに9分の5を乗ずるなどして算出される690,688,888円となることから、前記の交付又は交付決定を受けていた交付金709,100,000円は18,411,112円が過大になっていた。
(736) | 山梨県 | 山梨市 | まちづくり交付金 (地域生活基盤施設) |
17〜21 | 2,198,000 (2,198,000) |
879,000 | 118,900 (118,900) |
22,055 |
この交付金事業は、山梨市が、中央地区において、基幹事業として道路、多目的広場等の整備を、また、提案事業として根津記念館(以下「記念館」という。)の整備等を行っているものである。そして、同市は、整備計画における全体の交付対象事業費2,198,000,000円のうち、基幹事業の交付対象事業費を1,638,000,000円、提案事業の交付対象事業費を560,000,000円とし、提案事業割合が28%以下となることから、交付限度額は全体の交付対象事業費に10分の4を乗じた879,200,000円であるとして、この範囲内の交付金879,000,000円の交付又は交付決定を受けていた。
同市は、本件交付金事業のうち、記念館の整備事業は、観光及び生涯学習の多様化を高めるために、旧根津邸を建築当時の状況に修復、復元するものであることから、これを提案事業の地域創造支援事業として、その整備費用を提案事業の交付対象事業費としていた。一方、記念館の敷地内に整備した多目的広場については、交付要綱で基幹事業とされている地域生活基盤施設の広場に該当するとして、その整備費用118,900,000円を基幹事業の交付対象事業費としていた。
しかし、上記の多目的広場は、旧根津邸を修復、復元した記念館の整備に合わせて、建築当時の日本庭園を再現した造りとなっており、整備計画上も記念館と一体の観光拠点及び歴史・文化を体感できる拠点とされている。そして、同市が制定した「山梨市根津記念館設置及び管理条例」においても、多目的広場は「庭園」とされ、入館者は記念館及び庭園の観覧料を納付することとされていて、入館者だけが庭園を観覧できることとなっており、両者は主に観覧目的のため一体の施設として運営、管理されている状況となっていた。これらのことから、本件多目的広場は、公共空間と一体的な空間を構成して、都市イベントなど多様な都市活動の場として利用するものとされている地域生活基盤施設の広場に該当しないものであり、記念館と同様に提案事業の施設に区分すべきものと認められる。
したがって、多目的広場を提案事業の施設に区分するなどして基幹事業及び提案事業の適正な交付対象事業費をそれぞれ算定すると、基幹事業では1,542,500,000円、提案事業では655,500,000円となり、提案事業割合は29.8%となって28%を超えることになることから、交付限度額は基幹事業の交付対象事業費に9分の5を乗じて算出される856,944,444円となり、前記の交付又は交付決定を受けていた交付金879,000,000円は22,055,556円が過大になっていた。