立体駐車場の移転に係る補償費の算定が適切でなかったもの
立体駐車場の移転に係る補償費の算定が適切でなかったもの
(1件 不当と認める国庫補助金 2,463,288円)
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部局等 |
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補助事業等 |
年度 |
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左に対する国庫補助金等交付額 |
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不当と認める国庫補助金等相当額 |
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千円 |
千円 |
千円 |
千円 |
(753)
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山口県
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防府市
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土地区画整理
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19、20 |
295,302 (295,302) |
162,416 |
4,478 (4,478) |
2,463 |
この補助事業は、防府市が、土地区画整理事業の施行に伴い支障となる鉄筋コンクリート造りの店舗、鉄骨造りのエレベータ方式の機械式立体駐車場(以下「立体駐車場」という。)等の移転に要する費用として、295,302,071円(国庫補助金162,416,139円)を所有者に対して補償したものである。
同市は、土地区画整理事業等の公共事業の施行に伴う損失補償については、「公共用地の取得に伴う損失補償基準」(昭和37年用地対策連絡会決定)、「補償金算定標準書」(昭和43年中国地区用地対策連絡会監修。以下「標準書」という。)等に基づき行っており、本件店舗、立体駐車場等の移転補償に当たっても、この損失補償基準等に基づき、従前の店舗、立体駐車場等と同等の店舗、立体駐車場等を構外に建築するとの考え方に基づいて、移転補償費を算定している。そして、同市は、移転補償費を、同市が本件補償費算定業務を委託した補償コンサルタントが成果品として標準書等に基づき作成し同市に提出した工事内訳明細書等に基づき、計295,302,071円と算定していた。
標準書等によれば、鉄骨造り建物の移転補償費は、建物のく体、機械設備等の工事費を積み上げるなどして算出することとされており、このうちく体に係る工事費は、延床面積に、共同住宅、工場等の用途等の区分ごとに定められた統計数量値(注)
と建物の階層等ごとに定められた階層補正率とを乗じて鉄骨重量を算出して、これに鋼材費、工場加工・組立費等の各単価を乗ずるなどして算定することとされている。そして、標準書の統計数量値等の取扱いに当たって、標準書の用途等の区分を補償費算定の対象となる建物に適用することが困難な場合等は、原則として別途個別に鉄骨重量を算出することとされている。
同市は、鉄骨造り建物である本件立体駐車場に係る移転補償費の算定に当たり、立体駐車場の内部に鉄骨の梁(はり)が10段あることから、鉄骨造り11階建ての工場に相当するとしていた。そして、1階の床面積に階層数11を乗じて延床面積として、これに用途等の区分が工場等である場合の統計数量値と11階建ての場合等の階層補正率とを乗じて、鉄骨重量を84.3tと算出していた。
しかし、本件立体駐車場は、エレベータ方式の機械式で内部に床がなく吹き抜けになっているなど特殊な建物となっており、上記のように11階建ての工場に相当するとして標準書の統計数量値等を適用して鉄骨重量を算出した場合には、実態とかけ離れたものとなる。そして、前記のとおり、標準書の用途等の区分を補償費算定の対象となる建物に適用することが困難な場合等は、原則として別途個別に鉄骨重量を算出することとされていることから、本件立体駐車場について既存の図面を基に鉄骨重量を算出すると34.1tとなり、同市が算出した数量84.3tを大きく下回っていた。このことから、同市が、本件立体駐車場に係る移転補償費の算定に当たり、別途個別に鉄骨重量を算出することなく、11階建ての工場に相当するとして標準書の統計数量値等を適用していたことは適切とは認められない。
したがって、適切な鉄骨重量により本件補償費を修正計算すると、土工事における山留め数量の誤りなどの積算過小等を考慮しても290,823,364円となり、本件移転補償費295,302,071円はこれに比べて4,478,707円過大となっており、これに係る国庫補助金相当額2,463,288円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、標準書の統計数量値等の取扱いについての理解が十分でなく、委託した補償費算定業務の成果品の内容が適切でなかったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
統計数量値 多数の鉄骨造り建物の補償事例等から統計処理して得られた延床面積1m2
当たりの鉄骨重量