部局等 |
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補助事業等 | 年度 |
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左に対する国庫補助金等交付額 |
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不当と認める国庫補助金等相当額 | |||||||
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||||||||
(757) | 茨城県 | 石岡市 | 浸水対策下水道 | 20 | 45,685 (45,685) |
22,842 | 31,385 (31,385) |
15,692 |
この補助事業は、石岡市が、泉町地内において、雨水等による浸水対策のために、水路工を実施したものである。
この水路工は、雨水の流出量の増大に対処するため、既設のU型水路延長43.8m、内空断面の幅1.5m、高さ2.4mを取り壊して、新たに幅4.0m、高さ3.0mの水路を築造するもので、このうち延長35.8mの区間は、側壁を既製のコンクリート矢板により、底版を現場打ち鉄筋コンクリートにより施工するもの(以下、この水路を「矢板水路」という。)となっている。 矢板水路は、設計図書によると次のように施工することとしていた(参考図参照)。
〔1〕 既設水路の両側壁の背面に、幅1.0m、長さ9.0mのコンクリート矢板計72枚を所定の深さまで打ち込み、既設水路を取り壊しながら、所定の深さまで土砂等を掘削し、掘削後の地盤に、砕石を敷き均して転圧する。
〔2〕 コンクリート矢板の天端から2.9mの位置の両端にあらかじめ埋め込んである鋼製のプレート(幅10cm、高さ15cm)に、山形鋼を両側壁で計70か所溶接(以下、この箇所を「溶接部」という。)して結合させた上で、山形鋼の上部に、鉄筋を配置した後、砕石の上にコンクリートを厚さ25cmに打設して、この底版コンクリートとコンクリート矢板とを一体化させる。
〔3〕 コンクリート矢板の頭部に笠石コンクリートを打設する。
しかし、同市は、矢板水路の設計に当たって、側壁外部の水位が水路の底版より上にあり、溶接部には底版コンクリートに作用する水圧等によりせん断力(注)
が生ずることから、これに対する安全性の検討が必要であったのに、その検討を行わないまま、設計図書において、プレートと山形鋼を溶接すべき旨を指示するのみで、溶接の仕様は一切示していなかった。また、溶接の施工や出来形についての管理を全く行っておらず、施工写真においても溶接が行われたかどうかを確認できない状況となっていた。
そこで、現地において、底版コンクリートをはつるなどして、溶接部70か所すべての溶接状況を確認したところ、このうち35か所においては、山形鋼がプレートより上にあったり、山形鋼とプレートとの間にすき間が生じたりなどしていて、溶接が全くされていなかった。また、残りの溶接部35か所においては、溶接した形跡はあるものの、脚長はいずれも測定することも困難なほど短いものであった。このため、矢板水路のコンクリート矢板と底版コンクリートは、全延長にわたって一体化されていない状態となっていると認められる。
したがって、矢板水路(工事費相当額31,385,000円)は、溶接部の設計及び施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額15,692,500円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品の内容が適切でなかったのに、これに対する検査が十分でなかったこと、また、請負人が粗雑な施工を行っていたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
矢板水路概念図