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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 国土交通省|
  • 不当事項|
  • その他

道路改築事業の実施に当たり、損失補償等を行う契約において建物等の移転補償に要する費用の算定が適切でなかったため、契約額が割高になっていたもの


(811) 道路改築事業の実施に当たり、損失補償等を行う契約において建物等の移転補償に要する費用の算定が適切でなかったため、契約額が割高になっていたもの

会計名及び科目 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)
      (項)地域連携道路事業費
部局等 九州地方整備局熊本河川国道事務所、
契約名 土地売買に関する契約
契約の概要 道路改築事業に必要となる用地の取得と、支障となる建物等の移転に伴う損失補償を行うもの
契約の相手方 酒見石油株式会社
契約 平成21年3月随意契約
契約額
224,702,724円

割高になっていた契約額
6,970,200円
(平成20年度)

1 補償契約の概要

 九州地方整備局熊本河川国道事務所(以下「事務所」という。)は、一般国道57号熊本宇土道路改築事業の実施に当たり、熊本県宇土市城塚町地内において、道路の新設に必要な用地の取得と、支障となるガソリンスタンドの鉄骨造り平屋建てキャノピー(注) 、鉄骨造り中2階建て事務所(以下、これらを合わせて「ガソリンスタンド」という。)等を移転させるための損失補償を行う契約を、平成21年3月に契約額224,702,724円で、ガソリンスタンド等の所有者と締結していた。
 事務所は、公共事業の施行に伴う損失の補償を、「国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準」(平成13年国土交通省訓令第76号)、「九州地方整備局用地調査等業務請負基準」等(以下、これらを合わせて「補償基準」という。)に基づいて行うこととしている。
 補償基準によれば、建物の移転補償費は、建物の基礎杭、く体等について、実際に施工されている工種ごとの工事費等を積み上げるなどして算定することとされている。また、基礎杭等の建物の不可視部分の調査については、建物の建築確認申請図等の既存図を利用して行うものとされている。
 事務所は、本件契約に係る用地の取得費及びガソリンスタンド等の移転補償費(以下、これらを合わせて「補償費」という。)を補償基準等に基づいて算定する補償費算定業務を補償コンサルタント等に委託して、その成果品を検査、受領して、これを基に補償費を算定していた。
 そして、事務所は、補償費のうち、ガソリンスタンドの移転補償費の基礎杭分について、補償コンサルタントが作成した成果品である基礎図等に基づき、鋼管杭(外径812.8mm、厚さ12mm、杭長5.5m〜6.5m、計78本)により施工されているとして、基礎杭の工事費を15,149,400円と算出していた。

2 検査の結果

 本院は、事務所において、合規性等の観点から、補償費の算定が適切に行われているかなどに着眼して、補償費の内訳書等の書類により会計実地検査を行った。
 検査したところ、補償費の算定が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、補償基準によれば、基礎杭等の建物の不可視部分の調査については、既存図を利用して行うものとされていることから、ガソリンスタンドの基礎杭についてガソリンスタンドの建設時の建築確認申請図を確認したところ、基礎杭は、鋼管杭ではなくセメント系固化材による地盤改良杭(外径800mm、杭長5.4m〜6.4m、計78本)により施工されていた。
 したがって、ガソリンスタンドの基礎杭を実際に施工されている地盤改良杭として、その工事費を算出すると4,069,062円となり、これにより適正な補償費を算定すると、他の算定誤りの修正も含めて217,732,524円となることから、前記の契約額224,702,724円との差額6,970,200円が割高になっていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事務所において、委託した補償費算定業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。

 キャノピー  ガソリンスタンドの給油場所の上部に雨除けなどのために設置された屋根