会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)地域活力基盤整備事業費 等 |
社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)(平成19年度以前は、道路整備特別会計) | |||
部局等 | 国土交通省所管 | 一般会計 | (項)地方道路整備臨時交付金 等 |
部局等 | 国土交通本省、10府県 | ||
補助の根拠 | 予算補助、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号。平成19年度以前は道路整備費の財源等の特例に関する法律)等 | ||
補助事業者(事業主体) | 府1、県5、市23、計29事業主体 | ||
街路事業の概要 | 地方道路整備臨時交付金等により街路を整備するため、土地開発公社等から事業用地の再取得を行うもの | ||
街路通知のただし書を適用する特別な理由がない事業用地の再取得に係る補助対象事業費 | 277億6831万余円 | (平成19年度〜21年度) | |
街路通知の本則を適用して算定した場合の過大な補助対象事業費 | 49億7505万余円 | (平成19年度〜21年度) | |
上記に対する交付金等相当額 | 26億2191万円 |
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
貴省は、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号)等に基づき、都市計画において決定された道路(以下「都市計画道路」という。)の改築、新設の街路事業を実施する地方公共団体に対して、地方道路整備臨時交付金等(以下「交付金等」という。)を交付している。そして、地方公共団体は、上記街路事業の実施に伴い、土地所有者から道路の拡幅等に必要な事業用地を取得している。
その取得方法には、当該年度の予算をもって地方公共団体が土地所有者から事業用地を直接買い取る方法と、地方公共団体の土地取得に係る特別会計若しくは基金又は地方公共団体が設立した土地開発公社(以下、これらを合わせて「公社等」という。)が、あらかじめ事業用地を取得(以下「先行取得」という。)して、地方公共団体において後年度に事業が予算化されたときに、公社等から当該事業用地を買い取る方法(以下「再取得」という。)がある。
補助事業における事業用地の再取得には、国庫債務負担行為による複数年度にわたる交付金等を受けて実施する場合と、国庫債務負担行為によらず単年度で交付金等を受けて実施する場合がある。
このうち、国庫債務負担行為により再取得を実施する場合は、先行取得を行うことを国が認めているもので、「国庫債務負担行為により直轄事業又は補助事業の用に供する土地を先行取得する場合の取扱いについて」(平成13年国総国調第88号国土交通事務次官通知)により、再取得時までに公社等が要した、〔1〕 先行取得に係る土地の取得費、〔2〕 当該土地に存する物件の移転等に要した補償費、〔3〕 先行取得に伴う事務費、〔4〕 当該土地を管理するために要した直接管理費及び〔5〕 先行取得した際の借入金等に係る利子支払額の合計額(以下「先行取得時の土地取得費等の合計額」という。)を補助対象事業費として計上できることとなっている。
一方、国庫債務負担行為によらない再取得を実施する場合は、先行取得を行うことについて国の関与はなく、地方公共団体の自主的な判断で先行取得が行われることになる。そして、当該事業用地を再取得する場合の補助対象事業費は、「街路事業に係る用地先行取得国庫債務負担行為等の取扱いについて」(平成2年都街発第7号建設省都市局街路課長通知。平成17年国都街第84号最終改正。以下「街路通知」という。)により、再取得時の近傍類地の取引価額を勘案した額(以下「土地評価額」という。)に補償費及び事務費を加えた額(以下 「再取得時の土地評価額等の合計額」という。)と先行取得時の土地取得費等の合計額とのいずれか低い額となっている(以下「街路通知の本則」という。)。
ただし、近傍類地の取引価格が下落局面にある場合においても、後年度に取得することが著しく不利又は困難であるなど先行取得を行うことについて、事業主体が有利となる以下のような合理的な理由(以下「特別な理由」という。)があるときは、国庫債務負担行為により再取得を実施する場合と同様に、先行取得時の土地取得費等の合計額を補助対象事業費に計上できることとなっている(以下「街路通知のただし書」という。)。
ア 市街化の進展が著しく、建築物の建築が進むことで、用地交渉が困難化し、事業費の増大が見込まれる場合
イ 将来の土地が細分化されるおそれがある等の事情から、事業の円滑な執行上地権者の買取りの申出に早急に応ずるべき場合
ウ 実施中の他の事業と併せて用地を取得することにより、用地交渉の困難化を避け、事業の円滑な執行に資する場合
エ 地権者の状況、事業の特性等から判断して、用地を一括取得することにより、交渉費用等を削減し、事業費の増大を避けることができる場合
貴省は、国庫債務負担行為によらない再取得を実施する場合、当該街路事業においては、事業箇所の多くが市街地にあり、建物等の建築が進み、移転を要する物件が多数存在するなど、事業の特殊性により、先行取得を行う必要性が高いことも多くあることなどから、前記の街路通知のとおり、補償費や利子支払額、地価下落に伴う時価差額(先行取得時の土地取得費と再取得時の土地評価額との差額)等も補助対象事業費に計上できることとしている。
そして、地方公共団体は、交付金等により、上記再取得等の事業を実施するとき及び事業が完了したときは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)等に基づき、地方整備局等又は都道府県に交付申請書及び完了実績報告書を提出し、地方整備局等又は都道府県は、補助事業の目的及び内容が適正であるかなどの審査を行い、また、地方公共団体に対する指導を行うこととされている。
地価は、三大都市圏において、昭和61年頃から平成3年までは急激に上昇していたが、4年以降は相当な下落に転じており、また、地方圏においても、4年までは上昇していたが、5年以降下落傾向が続いている状況である。
そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、街路事業で再取得を行った事業用地の取得価額について、地価の下落傾向が続いている中で、その補助対象事業費への計上が、街路通知に基づいて適切に行われているかなどに着眼して検査した。
本院は、22都道府県(注1) において、管内の143事業主体が、19年度から21年度までの間に街路事業で再取得を行った1,575契約の事業用地(取得面積計458,741m2 、契約金額計1342億3669万余円、補助対象事業費計1127億3447万余円、交付金等計573億7157万余円)を対象として、土地売買契約書、完了実績報告書、用地交渉記録等の書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、10府県(注2)
管内の29事業主体が再取得を行った282契約の事業用地(取得面積計85,240m2
、契約金額計289億2275万余円、補助対象事業費計277億6831万余円、交付金等計147億1250万余円)において、〔1〕 都市計画事業の認可後に先行取得した事業用地の再取得において、街路通知のただし書のアを適用して、先行取得時の土地取得費等の合計額を補助対象事業費に計上していたり、〔2〕 地権者からの口頭による買取りの申出や要望をもって先行取得した事業用地の再取得において、街路通知のただし書のイを適用して、先行取得時の土地取得費等の合計額を補助対象事業費に計上していたりするなどの事態が見受けられた。
しかし、上記〔1〕 については、都市計画事業の認可後は、都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づく建築制限が課せられていることから、都市計画事業の施行の障害となる建築物の建築が許可されることはなく、街路通知のただし書のアに該当しないと認められ、また、上記〔2〕 については、街路通知のただし書のイの「買取りの申出」は、貴省によると、都市計画法等により一定の要件の下に行われる地権者からの書面による買取申出や買取請求等とされていることから、単なる口頭による買取りの申出や要望は、街路通知のただし書のイに該当しないものである。
さらに、貴省は、街路通知のただし書の適用に当たっては、特別な理由があることを示す根拠資料が必要であるとしているが、前記の282契約にあっては、いずれも再取得時において特別な理由があることを示す根拠資料がない状況であった。
したがって、補助対象事業費の計上に当たっては、街路通知のただし書によるのではなく、街路通知の本則により、再取得時の土地評価額等の合計額を補助対象事業費に計上すべきであったと認められる。
上記について事例を示すと、次のとおりである。
広島市は、地方道路交付金事業により、平成19年度に、都市計画道路高陽可部線の改築のた めの用地(2,082.67m2
)を広島市用地先行取得特別会計から2億9797万余円(交付金1億6388万余円)で再取得している。
本件用地は、11年3月から12年12月までの間に、市街化の傾向が著しくなるおそれがある地域内にあるなど、都市開発資金貸付要領(平成11年建設省経整発第28号ほか、建設省建設経済局長通知ほか)に定める貸付対象の要件に該当すると判断し、貴省から、都市開発資金の貸付けを受けて先行取得したものである。そして、同市は、本件再取得に係る補助対象事業費について、上記の理由から、街路通知のただし書のアに該当すると解釈して、先行取得時の土地取得費等の合計額である上記の再取得額を計上していた。
しかし、本件先行取得は、8年の都市計画事業の認可後であって、都市計画法に基づく建築制限が課せられており、都市計画事業の施行の障害となる建築物の建築が許可されることはないことから、街路通知の本則により、再取得時の土地評価額等の合計額1億9971万余円(交付金相当額1億0984万余円)を補助対象事業費に計上するべきであったと認められる。
大阪府高石市は、地域活力基盤創造交付金事業により、平成21年度に、都市計画道路南海中央線加茂地区の改築のための用地(184.43m2
)を、高石市土地開発公社から1億3579万余円(交付金7468万余円)で再取得している。
本件用地の先行取得について、同市は、地権者から口頭による買取要望があり、同公社に依頼して、4年5月に行ったとしている。そして、本件再取得に係る補助対象事業費について、地権者から口頭による買取要望があったことから、街路通知のただし書のイに該当すると解釈して、先行取得時の土地取得費等の合計額である上記の再取得額を計上していた。
しかし、街路通知のただし書のイの「買取りの申出」とは、都市計画法等に基づく書面による買取申出や買取請求等のことであって、単なる口頭による買取りの申出や要望では、街路通知のただし書のイに該当しないことから、街路通知の本則により、再取得時の土地評価額等の合計額2434万余円(交付金相当額1338万余円)を補助対象事業費に計上するべきであったと認められる。
そこで、前記の再取得契約282件について、街路通知の本則により補助対象事業費を修正計算すると、計227億9326万余円となり、前記補助対象事業費の計上額計277億6831万余円はこれに比べて49億7505万余円(交付金等相当額26億2191万余円)過大になっていると認められる。
街路事業の事業用地の再取得について、街路通知のただし書を適用する特別な理由がないのにこれを適用して、補助対象事業費の計上額が過大になっている事態は、街路通知の定めに沿わないもので、ひいては、国の関与がなく地方公共団体の判断で先行取得した事業用地の地価変動に伴う危険負担を国が負うことともなるもので、適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。
ア 街路通知のただし書の定めが抽象的で、具体的にどのような場合が該当するかが明確にされていなかったり、街路通知のただし書のイの「買取りの申出」の範囲や、街路通知のただし書の適用に当たって特別な理由があることを示す根拠資料が必要であることが、街路通知等に明示されていなかったりしていること
イ 事業主体において、上記のアや、街路通知の定めに対する理解が十分でないことのため、拡大解釈されていること
ウ 地方整備局及び10府県において、上記のアや、特別な理由があることを示す根拠資料がないこともあって、交付金等の交付申請等に対する審査及び指導が十分行われていないこと
街路事業における用地の再取得は、多数実施され、交付金等の交付額も多額に上っている。
ついては、貴省において、街路事業における用地の再取得に係る補助対象事業費の算定が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 街路通知のただし書について、適用の具体的な基準や範囲等を示すこと
イ 地方公共団体に対して、上記アの内容を含め、街路通知の内容や趣旨を周知徹底するとともに、街路通知のただし書を適用する場合には、特別な理由があることを示す根拠資料を保存させること
ウ 地方整備局等及び都道府県に対して、同様に周知徹底し、交付金等の交付申請等に対する審査及び指導を十分行わせること