会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | |
(項)地域活力基盤整備事業費等
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社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定) | |||
部局等 | 直轄事業 | 4地方整備局等 | |
補助事業 | 7道県 | ||
事業及び補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号)等 | ||
事業主体 | 直轄事業 | 10国道事務所等 | |
補助事業 | 7道県 | ||
計
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17事業主体 | ||
工事の概要 | 道路交通の安全確保等を図るために、平成20、21 両年度にNATM工法により実施するトンネル工事 | ||
工事費 | 直轄事業 | 681億3002万余円
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補助事業 | 498億6432万余円
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(国庫補助金交付額 | 281億5488万余円)
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送風機の運転に係る電力料の積算額 | 直轄事業 | 2億5603万余円
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補助事業 | 1億9684万余円
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低減できた送風機の運転に係る電力料の積算額 | 直轄事業 | 1億0500万円
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補助事業 | 8030万円
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(国庫補助金相当額 | 4520万円)
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標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
貴省は、道路交通の安全確保とその円滑化を図るために、国が行う直轄事業又は地方公共団体が行う国庫補助事業として、道路整備事業を実施している。
そして、国及び地方公共団体は、道路整備事業の一環として、トンネル工事を毎年度多数実施しており、工事に要する費用は多額なものになっている。これらのトンネル工事の多くはNATM工法(注1)
により実施されており、この工法による地山の掘削、ずり出し、コンクリートの吹付けなどの作業には、ドリルジャンボ、大型ブレーカ、コンクリート吹付機等の建設機械が使用されている。
そして、上記の建設機械の使用により、粉じん等が発生することなどから、坑内の良好な作業環境を保持するために、送風機等による粉じん対策等を行っている。
トンネル工事における粉じん対策については、「ずい道等建設工事における粉じん対策の推進について」(平成12年基発第768号の2労働省労働基準局長通知)やこの通知の具体的実施事項を定めた「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」等に基づき、切羽から坑口に向かって50m程度離れた地点における粉じん濃度目標レベルを3mg/m以下と設定して、坑内において空気中の粉じん濃度を定期的に測定し、粉じん濃度目標レベルを達成することとしている。
そして、上記のガイドラインでは、発生した粉じんの効果的な排出・希釈を行い、坑内 の粉じん濃度の低減に配慮することが必要であることから、坑外の清浄な空気を坑内に送 り込むための送風機等により換気を行うこととしている。
トンネル工事では、自然による通風が期待できない坑内に風量及び風圧の大きい送風機により清浄な空気を送り込む必要があることなどから、貴省制定の土木工事標準積算基準書及びこれを基に都道府県等がそれぞれ制定している積算基準等(以下、これらを合わせて「積算基準等」という。)によると、送風機は換気ファンを2段組み合わせた反転軸流式ファン(以下「2段式送風機」という。)の使用を標準としている(参考図
参照)。そして、貴省制定の建設機械等損料算定表(以下「損料算定表」という。)には、2段式送風機の規格は風量・風圧別に7規格(風量150m3
/分・風圧2.5kPaから風量2,000m3
/分・風圧4.9kPa)が記載されている。
貴省及び都道府県等は、トンネル工事の換気設備の設計に当たっては、「ずい道等建設工事における換気技術指針」(建設業労働災害防止協会編。以下「換気指針」という。)等に基づき、粉じん濃度目標レベルを達成するため、各工事におけるトンネルの断面積等から換気に必要な風量(以下「必要風量」という。)を算出することとしている。そして、トンネルの掘進に伴い送風距離が長くなるほど送風するために必要な風圧が増すことから、送風距離が最長となるトンネル工事の区間において必要となる風圧(以下「必要風圧」という。)を算出し、これらを基に損料算定表等に記載されている2段式送風機の中から必要風量・必要風圧を満足する規格の送風機を選定することとしている。
換気指針によると、2段式送風機の運転方法には、2段の換気ファンの両方を同時に運転する方法(以下「2段運転」という。)と、2段の換気ファンのうちいずれか一方を運転する方法(以下「1段運転」という。)とがある。そして、1段運転は2段運転と比べて、一方の換気ファンのみを運転することから、電力消費量が半減し電力料の低減が図られることになる。ただし、1段運転の場合、風量は2段運転の場合と同量を確保できるものの、風圧は2段運転の場合に比べ減少し、送風可能となる区間(以下「1段運転可能区間」という。)が短くなることから、1段運転可能区間を超える区間に送風するためには、風圧の大きい2段運転とする必要がある。
積算基準等では、2段式送風機の運転経費の積算に当たっては、1段運転と2段運転のいずれの方法を採用した場合でも積算できることになっており、また、運転経費は、送風機の使用期間中の機械損料及び電力料を基に算出することとされている。このうち電力料は、送風機の運転方法に応じた1時間当たりの電力消費量に1日当たりの運転時間、運転日数及び電力料単価をそれぞれ乗じて算出することとされている。
貴省は、「国土交通省公共事業コスト構造改善プログラム」等を策定するなどして、工事コストの縮減だけでなく、工事に伴う二酸化炭素の排出の抑制等にも取り組むこととしている。
そして、トンネル工事は、工事規模が大きく、作業工程も多い長期間にわたる工事であり、また、建設機械の使用により粉じんが発生することなどから、坑内の良好な作業環境を保持するために、常に送風機を運転しており、送風機の電力料は多額に上っている。
そこで、本院は、トンネル工事に使用する送風機について、経済性等の観点から、2段式送風機の運転方法の選定が適切に行われて、工事コストの縮減や環境負荷の低減等に配慮した積算が行われているかなどに着眼して検査した。
平成20、21両年度に施行したトンネル工事のうち、直轄事業として9地方整備局等(注2) 管内の22国道事務所等(注3) が施行した54工事、工事費総額1564億3069万余円及び補助事業として20道県村(注4) が施行した100工事、工事費総額1512億6586万余円(国庫補助金860億0874万余円)、計154工事を検査の対象として、上記の計42事業主体において各工事の設計図書等の書類により会計実地検査を行うとともに、必要に応じて工事現場に赴き現地の状況を確認するなどして検査した。
検査したところ、上記154工事のうち110工事では、換気指針等に基づき、2段式送風機の運転方法として、1段運転の可能性の検討を行い、トンネルの規模や送風距離等に応じ、トンネル工事の全区間で1段運転が可能である場合は全区間について1段運転を選定して、また、区間により2段運転が必要となる場合はその区間のみ2段運転を選定して、他の区間については1段運転を選定し、これにより送風機の電力料等を積算していたが、残りの44工事では次のとおりとなっていた。
すなわち、直轄事業として4地方整備局等(注5)
管内の10国道事務所等(注6)
が施行した19工事、工事費総額681億3002万余円及び補助事業として7道県(注7)
が施行した25工事、工事費総額498億6432万余円(国庫補助金281億5488万余円)、計17事業主体が施行した計44工事については、2段式送風機の運転方法の選定に当たり、1段運転の可能性の検討を行わず、トンネル工事の全区間について2段運転のみを選定して、送風機の電力料を直轄事業で計2億5603万余円、補助事業で計1億9684万余円と積算していた。
しかし、上記44工事について、1段運転可能区間については1段運転とすることとして、送風機の電力料を修正計算すると、直轄事業において計1億5096万余円、補助事業において計1億1651万余円となり、上記の積算額を直轄事業で約1億0500万円、補助事業で約8030万円(国庫補助金相当額約4520万円)低減できたと認められる。
北海道開発局室蘭開発建設部では、平成18年度から20年度までの間に、一般国道274号日高町新清見トンネル工事(工事費22億7995万円、工事延長901m)を施行している。この工事の換気設備の設計に当たっては、粉じん濃度目標レベルを達成するための必要風量を1,639m3
/分及びトンネル工事の全区間に送風するための必要風圧を1.64kPaと算出し、これにより風量2,000m3
/分・風圧4.9kPaの規格の2段式送風機を選定していた。そして、運転方法については全区間の換気を2段運転により行うこととし、送風機の運転に必要となる電力消費量を753,300kWhと算定して、電力料を809万余円と積算していた。
しかし、換気指針等に基づき、1段運転の可能性の検討を行ったところ、同じ規格の2段式送風機を1段運転で運転させた場合の風量は2,000m3
/分及び風圧は1.96kPaとなり、全区間について1段運転により対応できることから、1段運転を選定できたと認められる。
これにより、送風機の電力料等を修正計算すると、電力消費量は376,650kWh、電力料は404万余円となり、本件送風機の電力料の積算額は404万余円低減できたと認められる。
上記のように、2段式送風機の運転経費を算出するための運転方法の選定に当たり、トンネルの規模、送風距離等に応じて、2段運転に比べて電力消費量が半減する1段運転により粉じん濃度目標レベルを達成できる場合には、1段運転を選定することにより電力料を低減することができるのに、トンネル工事の全区間について2段運転を選定していて経済的な積算となっていない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、事業主体において、2段式送風機の運転経費を算出するための運転方法の選定に当たり、2段運転に比べて電力消費量が半減し電力料が低減できる1段運転の可能性の検討等を十分行っていなかったことにもよるが、貴省において、上記の検討の必要性について事業主体に十分周知徹底していなかったことなどによると認められる。
トンネル工事は、今後も引き続き多数実施されることが見込まれる。
ついては、貴省において、2段式送風機の運転経費を算出するための運転方法の選定に当たり、トンネルの規模、送風距離等に応じて、2段運転に比べて電力消費量が半減する1段運転により粉じん濃度目標レベルを達成できる場合には、1段運転を選定することにより、電力消費量の低減を図り経済的な電力料の積算を行うよう地方整備局等に対し周知徹底を図るとともに、都道府県等に対しても同様に助言を行い、これにより適切な工事費の積算を行うよう是正改善の処置を求める。
9地方整備局等 東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、北海道開発局
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22国道事務所等 岩手河川国道、湯沢河川国道、酒田河川国道、長野国道、甲府河川国道、高田河川国道、岐阜国道、高山国道、浪速国道、姫路河川国道、福山河川国道、岡山国道、中村河川国道、熊本河川国道、八代河川国道、鹿児島国道各事務所、札幌、函館、旭川、室蘭、釧路、留萌各開発建設部
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20道県村 北海道、青森、群馬、神奈川、新潟、山梨、岐阜、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、島根、高知、佐賀、熊本、大分、宮崎、沖縄各県、三原村
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4地方整備局等 東北、関東、北陸各地方整備局、北海道開発局
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10国道事務所等 湯沢河川国道、酒田河川国道、長野国道、高田河川国道各事務所、札幌、函館、旭川、室蘭、釧路、留萌各開発建設部
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7道県 北海道、新潟、三重、兵庫、島根、高知、宮崎各県
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トンネル工事における換気設備の概念図