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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

社会資本整備事業で整備した施設に係る長寿命化事業の実施について、長寿命化計画の策定及び施設情報の管理が適切に行われ、施設の維持管理、更新が計画的かつ効率的に実施されるよう意見を表示したもの


(13) 社会資本整備事業で整備した施設に係る長寿命化事業の実施について、長寿命化計画の策定及び施設情報の管理が適切に行われ、施設の維持管理、更新が計画的かつ効率的に実施されるよう意見を表示したもの

会計名及び科目 (1) 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)
(項)地域連携道路事業費
(項)北海道地域連携道路事業費
(項)沖縄地域連携道路事業費
(平成19年度は、道路整備特別会計(項)道路事業費)
(2) 社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)
(項)港湾事業費
(項)北海道港湾事業費
(項)離島港湾事業費
(項)沖縄港湾事業費
(3) 一般会計 (組織)国土交通本省
(項)港湾事業費
社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)
(平成19年度は、港湾整備特別会計(港湾整備勘定))
(項)港湾事業費
(項)北海道港湾事業費
(項)沖縄港湾事業費
(項)エネルギー・鉄鋼港湾施設工事費
平成19年度は、港湾整備特別会計(特定港湾施設工事勘定)
(項)エネルギー港湾施設工事費
部局等 9地方整備局等
補助及び事業の根拠 (1) 道路法(昭和27年法律第180号)、予算補助
(2) 港湾法(昭和25年法律第218号)等
(3) 港湾法(昭和25年法律第218号)等
補助事業者
(事業主体)
(1)
19都府県、11政令指定都市、256市町村   計286事業主体
(2)
14都府県、5政令指定都市、4市等   計23事業主体
(1)及び(2)の純計290事業主体
長寿命化事業等の概要 (1)(2) 事業主体が整備した道路橋及び係留施設等の予防保全的管理のために、施設ごとの点検、調査及び補修の実施時期等を定めた長寿命化計画を策定等するもの
(3) 国が整備した港湾施設について、長寿命化計画を策定等するもの
上記の事業主体が実施した長寿命化事業の事業費 (1) 41億8587万余円 (平成19年度〜21年度)
(2) 5億9598万余円 (平成20、21両年度)
計47億8186万余円 (平成19年度〜21年度)
上記に対する国庫補助金交付額 (1) 20億6610万円
(2) 2億5378万円
23億1989万円 (背景金額)
国が整備した港湾施設に係る長寿命化計画の策定等事業費 (3) 12億3227万円 (背景金額)(平成19年度〜21年度)

【意見を表示したものの全文】

 社会資本整備事業で整備した施設に係る長寿命化事業の実施について

(平成22年10月28日付け 国土交通大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 施設の維持管理及び更新の概要

(1) 施設の維持管理

 国は、社会資本整備重点計画法(平成15年法律第20号)に基づき、社会資本整備事業を重点的、効果的かつ効率的に推進するため、平成20年度から24年度までを計画期間とする「社会資本整備重点計画」(平成21年3月31日閣議決定)を策定している。
 そして、貴省は、上記の計画に基づき、社会資本整備事業で整備した道路施設、港湾施設、下水道施設、河川管理施設等の維持管理や更新の在り方について、施設に損傷等が発生した後に対処する従来の事後的管理から、施設を定期的に点検、調査して、致命的欠陥が発現する前に速やかに対処する予防保全的管理への転換を図り、施設の寿命を延ばし、ライフサイクルコストの縮減を図ることとしている。

(2) 社会資本整備事業における長寿命化の取組

 貴省は、社会資本整備事業で整備した施設について、その重要性や規模に応じた計画的な維持管理を行い、長寿命化を実現するために、期間を限って長寿命化のための計画を策定したり、計画的な改築を行ったりすることとしている。
 そして、道路整備事業及び港湾整備事業(以下、これらを合わせて「2事業」という。)においては、他の社会資本整備事業に先行して、道路橋及び係留施設等の土木構造物を対象に予防保全的管理の基本となる長寿命化のための計画(以下「長寿命化計画」という。)の策定に要する費用等を補助する国庫補助事業をおおむね5年間の期間に限って導入している。
 この長寿命化計画には、今後に行われる施設ごとの点検、調査及び補修の内容や実施時期等を具体的に定めることとなっている。また、同計画策定のために行った点検結果から得られた施設の損傷状況、劣化の進行予測や計画策定によるコストの縮減効果についても記載することとなっている。そして、施設管理者は同計画に基づき優先順位の高いものから点検、調査及び補修を行うなど計画的に施設の維持管理を行うこととされ、これによ り、施設のライフサイクルコストの縮減を図っていくこととしている。
 なお、長寿命化計画の策定には、上記のようにコストの縮減効果を算出するなど専門知識が必要とされることから、一般に、計画の策定は専門業者へ委託して行われている。
 2事業における施設管理者及び長寿命化のための国庫補助事業の概要は、以下のとおりである。

ア 道路整備事業

 道路橋等の道路施設は、道路法(昭和27年法律第180号)に基づき、政令で指定する国土交通大臣が維持管理する区間以外の一般国道と都道府県道については都道府県及び政令指定都市(以下、政令指定都市を「政令市」という。)が、市町村道については市町村が各々道路管理者として維持管理することとされている。
 そして、貴省は、19年度に、都道府県及び政令市は23年度までを、市町村は25年度までを事業期間として、事業主体ごとに策定する道路橋の長寿命化計画の策定及び同計画策定のために行う施設の点検に要する費用の一部を補助する長寿命化修繕計画策定事業(以下「長寿命化事業」という。)を導入している。

イ 港湾整備事業

 港湾施設は、港湾法(昭和25年法律第218号)に基づき、地方公共団体等が港湾管理者として維持管理することとされている。そして、地方公共団体等は、自ら設置した港湾施設のほか、国が整備した港湾施設(以下「国有港湾施設」という。)についても、国との間で締結した管理委託契約に基づいて維持管理することとされている。
 また、港湾の施設の技術上の基準を定める省令(平成19年国土交通省令第15号)の改正(平成19年4月1日施行)に伴い、港湾管理者は、港湾施設の設置者が策定した長寿命化計画に基づき当該施設を維持管理することとされた。これにより、国有港湾施設については、国が長寿命化計画を策定し、港湾管理者は国が策定した同計画に基づき国有港湾施設を維持管理することとなった。
 そして、貴省は、20年度に、原則として24年度までを事業期間として、港湾管理者が自ら設置した係留施設等について、施設ごとに策定する長寿命化計画の策定及び同計画策定のために行う施設の損傷や劣化状況の点検、調査に要する費用の一部を補助する長寿命化計画策定事業(以下、道路整備事業における長寿命化修繕計画策定事業と同様に「長寿命化事業」という。)を導入している。

(3) 維持管理、更新に必要なデータの管理

 長寿命化事業の実施に当たっては、長寿命化計画の内容をより的確なものとするため、施設の諸元データのほか、過去に実施した点検データや計画策定のために行った点検、調査結果のデータ、施設の補修内容等の施設情報を適切に記録、整理し、保存することが重要であり、また、策定した長寿命化計画に基づく施設の維持管理に当たっても、今後の長寿命化計画の検証、見直しに資するために、点検データ等の重要な施設情報を適切に記録、整理し、保存することが重要となる。このことから、これらの重要な施設情報については、施設を維持管理し、更新するまでの期間にわたって適時適切に活用されるよう、事業主体において記録、整理していくことが必要である。
 また、地方公共団体等においては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)の制定を契機として、職務上使用する文書(以下「公文書」という。)の管理について定めた文書管理規程等において、公共事業の実施に伴って取得した書類、設計図書等についても公文書としてその内容に応じた保存期間や保存場所を一般に定めている。

図 地方公共団体における一般的な文書管理の流れ

図地方公共団体における一般的な文書管理の流れ


2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 我が国の厳しい財政状況の下、高度経済成長期に多数整備された施設は、老朽化が進行し、その割合が増大していく状況にあることから、今後は、従来の事後的管理から予防保全的管理を前提とした効率的な施設の維持管理をより着実に推進して、施設の寿命を延ばし、ライフサイクルコストの縮減を図ることが必要とされている。
 そこで、本院は、長寿命化事業が先行して導入され、比較的進ちょくしている2事業において、効率性、有効性等の観点から、長寿命化計画は適切に策定されているか、また、点検データ等の重要な施設情報は適切に管理され、有効に活用されて、今後の効率的な維持管理、更新に資するものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 20都道府県(注1) 、11政令市(注2) 及び760市町村等計791事業主体(道路整備事業は787事業主体、港湾整備事業は31事業主体であり、重複する事業主体を控除している。)が2事業により整備し、22年3月末において維持管理している道路橋及び係留施設等は計289,863施設ある。
 このうち、290事業主体が19年度から21年度までの間に実施した計53,358施設(うち道路橋52,545施設、係留施設等813施設)に係る長寿命化事業(事業費計47億8186万余円、国庫補助金計23億1989万余円)を対象として、290事業主体において、長寿命化計画の策定状況、予防保全的管理の取組状況等について、長寿命化計画等の書類及び現地を確認するなどして会計実地検査を行った。また、国有港湾施設については、国が当該施設の長寿命化計画を策定することとなっていることから、9地方整備局等(注3) が整備し、14都府県(注4) 、5政令市(注5) 及び11市等の事業主体が維持管理している国有港湾施設1,043施設のうち、国において長寿命化計画が策定されるなどしている574施設(国の長寿命化計画の策定及び計画策定のための点検、調査に要した事業費計12億3227万余円)について、29事業主体において会計実地検査を行った。

(注1)
 20都道府県  東京都、北海道、大阪府、秋田、栃木、千葉、新潟、山梨、静岡、三重、滋賀、奈良、和歌山、岡山、山口、福岡、佐賀、熊本、大分、沖縄各県
(注2)
 11政令市  札幌、横浜、川崎、新潟、静岡、浜松、大阪、堺、岡山、北九州、福岡各市
(注3)
 9地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、九州各地方整備局、北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局
(注4)
 14都府県  東京都、大阪府、秋田、千葉、新潟、静岡、和歌山、岡山、山口、福岡、佐賀、熊本、大分、沖縄各県
(注5)
 5政令市  横浜、川崎、大阪、北九州、福岡各市

(検査の結果)

 検査したところ、長寿命化計画の策定及び施設情報の管理について、次のような事態が見受けられた。

(1) 道路整備事業における長寿命化計画の策定

 19年度から21年度までの間に、19都府県(注6) 、11政令市(注7) 及び256市町村等計286事業主体が、道路橋52,545橋を対象に実施している長寿命化事業(事業費41億8587万余円、国庫補助金20億6610万余円)についてみたところ、長寿命化計画の策定状況は次のようになっていた。

ア 既存の点検結果の活用

 国は、道路橋について重大な損傷や事故が発生した場合に、事業主体に対して、緊急点検を実施し、施設に関する重要な情報として点検結果の報告を求めるなどしている。
 そして、都道府県及び政令市は、道路構造令(昭和45年政令第320号)が5年11月に改正され、道路橋の設計荷重が20tから25tに引き上げられたことに伴い、維持管理する道路橋について耐荷力照査を実施している。この耐荷力照査は、既設の道路橋に対する補修工事の必要性の有無等を新しい設計荷重に基づいて検討するものであり、その結果は、施設の点検、補修を今後実施していく上で重要な施設情報である。
 しかし、19都府県及び11政令市のうちの25事業主体においては、長寿命化計画の策定を業者に委託して実施するに当たり、今後の点検、補修の実施時期の優先順位に影響を与える耐荷力照査の結果の情報を業者に提供していなかった。このため、長寿命化計画の策定において耐荷力照査の結果が活用されず、今後の点検、補修の実施に当たり、時期の優先順位が必ずしも的確なものになっていないなど予防保全的管理を推進する上で十分なものとなっていない状況となっていた。

<事例1>

 A県は、平成19年度から21年度までに長寿命化事業を事業費2億0335万余円(国庫補助金9982万余円)で実施している。実施に当たっては、既存の点検データ等の施設情報を委託業者に提供することとしていた。しかし、同県では、補修工事等が必要とされた42橋に係る耐荷力照査の結果の情報を提供していなかった。このため、長寿命化計画は、42橋の耐荷力照査の結果が活用されないまま策定されていて、42橋のうち35橋は、同計画において31年度までの10年間に補修工事を実施するとしている185橋に含まれていない状況となっていた。

イ 移管に伴う点検データ等の引継ぎ

 109事業主体は、道路の新設、政令市への移行等による道路管理者の変更に伴い、17年度から21年度までの間に旧道路管理者から道路橋2,999橋の移管を受けている。
 しかし、このうち38事業主体では、施設の維持管理を行う上で引き継ぐ必要のある施設情報の範囲について認識が十分でなかったことなどから、移管を受けた297橋について、既存の点検データ等の重要な施設情報が適切に引き継がれていなかった。このため、長寿命化計画の策定に当たって、過去に実施された点検データ等が活用できず、精度の高い劣化の進行予測が的確に行えないなど予防保全的管理を推進する上で十分なものとなっていない状況となっていた。

<事例2>

 B市は、平成20、21両年度に長寿命化事業を事業費1億7789万余円(国庫補助金8894万余円)で実施しており、同事業における長寿命化計画の策定に当たっては、19年4月の政令市への移行に伴ってC県から移管を受けた道路橋523橋を計画の対象に含めていた。一方、同県は、道路橋の損傷状況を把握するための定期的な点検を9年度以降実施しており、同市に移管した道路橋の一部も定期点検の対象となっていた。
 しかし、同市は、移管を受けるに当たって、上記の定期点検の対象となっていた道路橋を含めた144橋の施設情報を引き継いでいなかった。このため、当該既存の点検データ等を、同市が長寿命化計画策定のために実施した点検結果により把握した施設の損傷状況等と比較するなどの活用ができず、精度の高い劣化の進行予測が的確に行えない状況となっていた。

(注6)
 19都府県  東京都、大阪府、秋田、栃木、千葉、新潟、山梨、静岡、三重、滋賀、奈良、和歌山、岡山、山口、福岡、佐賀、熊本、大分、沖縄各県
(注7)
 11政令市  札幌、横浜、川崎、新潟、静岡、浜松、大阪、堺、岡山、北九州、福岡 各市

(2) 港湾整備事業における長寿命化計画の策定

 19年度から21年度までの間に、国において長寿命化計画の策定を進めているなどしていて、29事業主体が維持管理している国有港湾施設574施設(国の長寿命化計画の策定及び計画策定のための点検、調査に要した事業費計12億3227万余円)についてみたところ、長寿命化計画の策定状況は次のようになっていた。
 港湾施設の長寿命化計画は、施設ごとに策定されるため、事業主体が自ら設置した施設の長寿命化計画については、施設ごとの点検、補修の実施時期の平準化や事業主体における港湾整備事業以外の事業の実施状況等との調整を図りつつ計画を策定している。また、国有港湾施設の長寿命化計画については、国が策定しているため、事業主体は、同計画に基づく維持管理を行うこととした管理委託契約を更新する際などに、国との間で計画の内容について協議を行うなどしている。そして、上記の574施設のうち、21年3月末までに国において長寿命化計画が策定済みのものは、23事業主体が維持管理する国有港湾施設181施設となっている。
 しかし、上記のうち16事業主体の150施設については、長寿命化計画の策定に当たって、国と事業主体との間で十分な協議が行われておらず、同計画は、港湾施設の点検、補修の内容や実施時期等について両者の意向が十分反映されたものとなっていなかった。このため、長寿命化計画の策定から1年以上経過した22年3月末においても、国が策定した長寿命化計画に基づいた点検が行われていないなど長寿命化計画に基づく予防保全的管理を推進する上で十分なものとなっていない状況となっていた。
 また、3事業主体が維持管理する19施設については、国と事業主体との連携が十分でないことから、事業主体が自ら設置した港湾施設とともに実施した国有港湾施設に係る点検、調査結果が国有港湾施設の長寿命化計画の策定に活用されていない状況となっていた。

<事例3>

 D市は、自ら設置した51港湾施設のほか国有港湾施設を116施設維持管理している。そして、国は平成20年度に、116施設のうち86施設を対象に事業費8263万余円で長寿命化計画を策定していた。しかし、これらの86施設について長寿命化計画で実施することとした点検の内容や実施時期は、同市と国との間で十分な調整が図られていなかったことなどから、同市が直ちに対応できるものとなっておらず、翌21年度末においても同市と国との間で管理委託契約が更新されていなかった。このため、国が策定した長寿命化計画に示された施設の点検が行われていない状況となっていた。

(3) 施設情報の管理

 19年度から21年度までの間に、道路橋の長寿命化事業を実施している前記286事業主体及び、20、21両年度に、係留施設等813施設を対象に長寿命化事業(事業費5億9598万余円、国庫補助金2億5378万余円)を実施している14都府県(注8) 、5政令市(注9) 及び4市等の計23事業主体(2事業の純計290事業主体)についてみたところ、長寿命化事業における施設情報の管理は、次のような状況となっていた。
 道路橋及び係留施設等の点検データ等は、道路橋が供用開始と同時に大型車両等による繰り返し荷重作用を受けたり、係留施設等が供用開始と同時に海水の影響を受けたりするなど、構造物の劣化が進行しやすい厳しい環境条件にあることなどから、予防保全的管理のために欠かせない重要な施設情報となっている。
 しかし、2事業の146事業主体においては、長寿命化事業における点検データ等の管理に当たって、施設を維持管理し、更新するまでの期間にわたって点検データ等を適時適切に活用できるよう、地方公共団体等が定めた文書管理規程等に基づく公文書として保存期間や保存場所を定めるなどの組織的な記録、整理が十分行われていない状況となっていた。このため、今後施設を長期間維持管理していく間に、点検データ等が所在不明となったり、誤って廃棄されたりすると、予防保全的管理を推進する上で支障を来すことになると認められた。

(注8)
 14都府県  東京都、大阪府、秋田、千葉、新潟、静岡、三重、和歌山、岡山、山口、福岡、佐賀、大分、沖縄各県
(注9)
 5政令市  横浜、川崎、大阪、北九州、福岡各市

(改善を必要とする事態)

 上記のように、道路整備事業において、長寿命化計画の策定や予防保全的管理を実施する上で重要な施設情報の活用や引継ぎが適切に行われていない事態や、国有港湾施設の長寿命化計画の策定に当たり、貴省と事業主体との協議、調整が十分でないため、計画に基づく施設の維持管理が実施されていなかったり、点検、調査結果が活用されていなかったりしている事態、また、2事業において、長寿命化事業における点検データ等の重要な施設情報について、適時適切に活用できるよう記録、整理が十分行われていない事態は、今後長期にわたって長寿命化計画に基づいた施設の予防保全的管理を推進していく上で支障を来すもので、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。

ア 長寿命化計画の策定

(ア) 道路整備事業の事業主体において、長寿命化計画の策定や予防保全的管理の実施に必要となる重要な施設情報の活用についての認識が十分でないこと
(イ) 道路整備事業の事業主体において、施設の移管に当たって、施設の維持管理を行う上で引き継ぐべき重要な施設情報の範囲についての認識が十分でないこと
(ウ) 貴省及び港湾整備事業の事業主体において、国有港湾施設の長寿命化計画に基づいて予防保全的管理を実施していくための協議、調整及び連携が十分でないこと

イ 施設情報の管理

 2事業の事業主体において、長寿命化事業における点検データ等の重要な施設情報を適時適切に活用できるよう記録、整理することなどについての認識が十分でないこと

3 本院が表示する意見

 社会資本整備事業で整備した施設の効率的な維持管理、更新は、高度経済成長期に多数整備され、老巧化が進行している施設の割合が今後増大していくことから、ますます重要となってくる。そして、公共事業費が縮減されている状況の下、従来の事後的管理から予防保全的管理に転換することにより、施設の寿命を延ばし、ライフサイクルコストの縮減を図ることが重要である。このため、既に長寿命化事業を実施している事業主体だけでなく、今後長寿命化事業を開始する多くの事業主体においても、予防保全的管理のための的確な長寿命化計画を策定し、これに基づいて適切に施設の維持管理を実施していくことが必要となってくる。
 ついては、貴省において、長寿命化計画の策定及び施設情報の管理が適切に行われ、施設の維持管理、更新が計画的かつ効率的に実施されるよう、次のとおり意見を表示する。

ア 長寿命化計画の策定

(ア) 道路整備事業の事業主体に対し、長寿命化計画の策定や予防保全的管理を実施するに当たり、今後の長寿命化計画の策定や検証、見直しの際に十分活用できるよう、重要な施設情報の範囲を明確にした上で周知すること
(イ) 道路整備事業の事業主体に対し、施設の移管に当たって、移管後も適切な維持管理ができるよう長寿命化事業の実施に必要となる重要な施設情報を整理、提供し、これらが確実に引き継がれるよう周知すること
(ウ) 国有港湾施設の長寿命化計画に基づいた維持管理が確実に実施できるように、港湾整備事業の事業主体との間で、協議、調整及び予防保全的管理の実施が円滑に進ちょくする実施体制を整備し、併せて長寿命化計画の策定に重要な施設情報が活用できるよう緊密に連携すること

イ 施設情報の管理

 2事業の事業主体に対し、長寿命化事業における点検データ等の重要な施設情報については、施設を維持管理し、更新するまでの期間にわたって、適時適切に活用できるよう管理する必要があることを周知すること