会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)海上保安庁 | (項)船舶交通安全及海上治安対策費 |
部局等 | 国土交通本省(船員食卓料制度の所掌部局) | ||
11管区海上保安本部(支払部局) | |||
船員食卓料の概要 | 国土交通省に勤務する船員に対して、職務旅費として、船舶での勤務が発令されている間、支給される食卓料 | ||
海上保安庁の小型巡視艇に乗り組む船員に対する船員食卓料支給額 | 4億2758万余円(平成20、21両年度) | ||
上記のうち節減できたと認められる船員食卓料支給額 | 1億3816万円 |
国土交通省は、船舶に乗り組む職員(以下「船員」という。)に対して、「国土交通省に勤務する船員等に対する職務旅費支給規則」(平成13年国土交通省訓令第92号。以下「規則」という。)に基づき、職務旅費として、航海日当、船員食卓料等を支給することとしている。
このうち船員食卓料については、船員に対し、船舶での勤務が発令されている間(船舶への異動の発令日から当該船舶から他の船舶又は部署等への異動の発令の前日等まで)の毎日を対象として支給することとされている。
ただし、船舶での勤務が発令されている期間中であっても、港での停泊中には船内で食事をとらないこと(以下「欠食」という。)があることから、欠食分について船員食卓料を支給していることにならないよう、同省は、規則において、船舶を航海規模(注1)
等から4種類の区分(以下「船舶区分」という。)に分類し、各区分ごとに、当該船舶に乗り組む船員の勤務形態等を想定して1年間の食事数のうち欠食となるものの割合(以下「欠食率」という。)を想定した上で、船員食卓料の1日当たりの単価を欠食率が大きいほど小さくなるように定めている(次表
参照)。
(注1) | 航海規模 船舶の航海日数等を表すもので、次の式により算出される。
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表 船員食卓料の単価等 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
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注(1) | 単価には、食料配達手数料等附帯費(一種70円/日、二種甲及び二種乙62円/日、三種なし)を含む。 |
注(2) | 三種の単価は、欠食率によるのではなく、航海規模が二種甲の2/3程度であるため、二種甲の単価(食料配達手数料等附帯費を除く。)の2/3として定められている。 |
そして、海上保安庁の巡視船及び巡視艇(以下、これらを合わせて「巡視船艇」という。)に乗り組む船員については、巡視船艇の種別等が同じであれば航海規模等も同程度であると判断して、規則において、上記の表のとおりヘリコプター搭載型の巡視船の船員は一種、ヘリコプター搭載型以外の巡視船の船員は二種甲、巡視艇の船員は二種乙とするなどと巡視船艇の種別等ごとに同一の船舶区分を適用することとされている。ただし、巡視艇のうち、職員グループが複数編成されて交替勤務が行われている(以下、このような勤務形態を「複数クルー制」という。)ものの船員に支給する船員食卓料の額は三種の額とするとされている。
国土交通省における船員食卓料の支給額は毎年度多額に上っており、そのほとんどは海上保安庁に勤務する船員に対して支給するものである。そして、各船舶にどの船舶区分を適用するかの定めは基本的に昭和38年度までに定められたものであり、巡視船艇についての船舶区分の適用は前記のとおり種別等によって定められていて、その多くはその後見直しがなされていない。
そこで、本院は、経済性等の観点から、海上保安庁に勤務する船員に対する船員食卓料の支給は適切なものとなっているか、特に、巡視船艇についての船舶区分の適用は航海規模等の実態に適合したものとなっているかなどの点に着眼して検査した。
そして、海上保安庁の巡視船艇(複数クルー制が導入された巡視艇を除く。以下同じ。平成21年度末現在278隻)に乗り組む船員に支給した船員食卓料20年度16億2846万余円、21年度15億9653万余円、計32億2500万余円を対象として、国土交通本省、海上保安庁本庁及び11の管区海上保安本部のうちの6管区海上保安本部(注2)
において旅費請求書等の書類により会計実地検査を行うとともに、残る5管区海上保安本部(注3)
については、同本庁を通じて関係書類の提出を受けるなどして検査した。
(注2) | 6管区海上保安本部 第一、第二、第六、第七、第八、第十一各管区海上保安本部
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(注3) | 5管区海上保安本部 第三、第四、第五、第九、第十各管区海上保安本部
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検査したところ、二種乙の船舶区分が適用されている巡視艇の一部について、次のような事態が見受けられた。
すなわち、巡視艇は主に定けい港内や沿岸部付近で行動するものであり、その中でも小型の巡視艇(全長20m未満のもの。以下「小型巡視艇」という。21年度末現在103隻。小型巡視艇に乗り組む船員に対する船員食卓料の支給額は20年度2億2600万余円、21年度2億0157万余円、計4億2758万余円)の航海規模等の実態をみると、定けい港停泊日数は平均184.2日(想定は180日未満)と想定に近いものとなっているものの、航海規模は平均94.5日(想定は120日以上)となっており、想定されている航海規模を大幅に下回っている状況となっていた。
これは、小型巡視艇以外の巡視船艇は数泊から十数泊の連続した行動期間が標準となっているのに対して、小型巡視艇は、他の巡視船艇に比べて航続距離が短い一方、近年は速力等の性能が向上していることなどから、以前であれば宿泊を伴って運航していた海域へも日帰りで運航するようになっていること、小型巡視艇に乗り組む船員は、近年、陸上での捜査、取調べ等の業務が増加し、海上保安部等の事務所にも執務場所を有してそこで業務を行うなどしていて、船外で執務する機会が増えていることなどのため、日帰り運航が標準となっていて、出入港日数が以前よりも増えていることによると認められた。
したがって、海上保安庁の小型巡視艇に乗り組む船員に支給する船員食卓料については、小型巡視艇の航海規模の実態が想定されている規模を大幅に下回っており、二種乙ではなく三種の船舶区分を適用して支給するのが適切であると認められた。
以上のように、海上保安庁の小型巡視艇に乗り組む船員に支給する船員食卓料についての船舶区分の適用が航海規模の実態に適合したものとなっていない事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
小型巡視艇に乗り組む船員の船員食卓料について、三種の船舶区分の単価により算定すると、20年度1億5297万余円、21年度1億3643万余円、計2億8941万余円となり、前記の支給額を20年度7303万余円、21年度6513万余円、計1億3816万余円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、船員食卓料の支給に当たり、近年、小型巡視艇の航海規模の実態が変化してきていたのに、これを踏まえた船舶区分の適用の見直しを十分に行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、22年9月に規則を改正して、海上保安庁の小型巡視艇に乗り組む船員に支給する船員食卓料について、三種の船舶区分を適用することとして、23年1月以降これにより支給することとする処置を講じた。