(平成20年度決算検査報告 参照)
国土交通省は、河川工事に伴う鉄道工事の施行を鉄道事業者に委託している事業主体に対して補助金を交付している。この工事の工期は長期にわたることが多いことから、事業主体は、鉄道事業者との間で、全体の工事の内容、総事業費等を記した協定(以下「全体協定」という。)を締結し、さらに、年度内に施行可能な工事内容等を明確にするための協定(以下「年度協定」という。)を締結していて、年度協定ごとに、出来高等を把握した後に委託費を支払い、これに係る国庫補助金の交付を受けている。そして、年度協定に基づく工事が年度内に完了できない場合には工期を延伸して翌年度に工事を繰り越すなど年度協定を変更することとしている。
しかし、事業主体は、この延伸した工期が終了していないうちに、全体協定に基づいて新たな翌年度の年度協定を締結していたため、両年度協定における工期の一部が重複していて、年度協定ごとの工事の出来高の把握を的確に行えない状況であるのに、年度協定に基づく工事がすべて完了したとして鉄道事業者に委託費を支払っている事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、事業主体に対して、当該年度と翌年度の年度協定における工期を重複させないよう助言するなど指導を徹底し、もって、委託した鉄道工事に係る支払を適切に行わせるよう、国土交通大臣に対して平成21年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、21年11月に地方整備局等に事務連絡を発し、事業主体に対して、鉄道事業者との複数年度にわたる委託事業の実施に当たり当該年度と翌年度の年度協定における工期を重複させないことなどを助言し、これを周知徹底する処置を講じていた。