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  • 平成21年度|
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駐機場の整備に当たり、コンクリート舗装工の施工が適切でなかったため、舗装にひび割れが発生していて工事の目的を達していなかったもの


(832) 駐機場の整備に当たり、コンクリート舗装工の施工が適切でなかったため、舗装にひび割れが発生していて工事の目的を達していなかったもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)施設整備費
部局等 熊本防衛支局
工事名 鹿屋(19)駐機場新設土木工事
工事の概要 海上自衛隊鹿屋航空基地において、P—3C型航空機の駐留、給油、整備等を行うための駐機場を整備するもの
工事費 165,039,000円(当初契約額98,385,000円)
請負人 日本道路株式会社
契約 平成20年2月一般競争契約
しゅん功検査 平成21年7月
支払 平成21年3月、9月2回
不適切な施工となっていた工事費 93,154,334円(平成21年度)

1 工事の概要

 この工事は、熊本防衛支局(以下「支局」という。)が、海上自衛隊鹿屋航空基地において、P—3C型航空機の駐留、給油、整備等を行うための駐機場(46,932m )を新設する一環として、平成19年度に、このうち11,586m の舗装工等の工事を工事費165,039,000円で実施したものである。
 このうち舗装工は、航空機の安全な運用に資するよう、「飛行場基本施設等の設計要領」(平成19年装技調第48号。以下「設計要領」という。)等に基づき、駐機場の表面を厚さ30cmのコンクリートで舗装するものである。
 そして、舗装工の施工に当たっては、自走式の舗装機械によりコンクリートを打設することから、機械の走行方向に打ち継ぎ目(以下「施工目地」という。)ができることとなる(以下、施工目地によって分割されるブロックを「舗装版」という。)。この舗装版の幅は、設計要領において、舗装の厚さが30cmの場合は7.5m以下を標準とすることとされていることから、支局は、本件工事の舗装版の幅を7.5mとするよう設計していた(参考図参照)
 また、設計要領等では、舗装の厚さが30cmの場合の施工目地はかぎ型構造として隣接する舗装版と接続させることにより、コンクリート舗装が航空機の荷重を伝達する能力(以下「荷重伝達能力」という。)を有する構造とすることなどと規定されている。そして、施工目地の地表面部については、雨水の浸入を防止するなどのため、幅8mm、深さ20mmの溝状に切削し、目地材を注入することとされている(参考図参照)
 そして、支局は、設計図書等に基づき、舗装工の施工面積(11,586m )を8舗装版に分けて、また、施工目地の総延長を1,544mとすることとして、請負人は、次のような手順により施工することとしていた。

ア かぎ型付きの型枠(以下「型枠」という。)を間隔が7.5mになるように設置して、移動しないように鉄ピンで固定する。

イ 型枠上のレールを走行する舗装機械によりコンクリートを打設して、コンクリートが硬化した後に、型枠を取り外し、かぎ型が形成された面を次に打設する舗装版との施工目地とする。

ウ 同様に、隣接する舗装版のコンクリートを打設して、コンクリートが硬化した後に、施工目地の地表面部を切削して、目地材を注入する。

2 検査の結果

 本院は、支局において、合規性等の観点から、施工が設計図書等に基づき適切に行われているかなどに着眼して、21年12月に会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書、工事写真等の書類及び現地の状況を検査したところ、コンクリート舗装工の施工が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、目地材に沿って、幅0.1mmから3.0mmのひび割れが広範囲にわたって、その延長は計233mに達していたことから、現地において、46本のコアを採取するなどして施工状況を確認したところ、次のように施工が行われていたと認められた(参考図参照)

ア 型枠は、コンクリートの打設作業中に移動しないよう鉄ピンで固定することができるようになっているのに、一部の鉄ピンしか使用しないところがあるなど、型枠が十分に固定されていなかった。

イ 上記により、舗装機械の振動等により型枠が移動して舗装版の幅が7.5mを超えるものとなっていた部分があったことから、請負人は、舗装版の地表面部のみを幅が設計どおり7.5mとなるように舗装版の上部をコンクリートカッターで切りそろえていた。また、表面の粗くなっていた型枠を使用したことなどから、かぎ型が損傷していた。このため、46本のコアのうち31本のコアにおいて、かぎ型構造が十分に形成されていなかった。

ウ 目地材は、設計図書によると、施工目地の地表面部に注入することとされているのに、46本のコアのうち26本のコアにおいて、上記イで切りそろえた位置に注入されていた。

 そして、22年1月に行った再度の会計実地検査において確認したところ、ひび割れが延びていたり新たな箇所に生じていたりして、ひび割れの総延長は254mとなっていた。
 したがって、本件コンクリート舗装工(11,586m )は、施工が適切でなかったため、放置しておくと、ひび割れにより生ずるコンクリート片が駐機場内に散乱して航空機のタイヤを損傷したりエンジンに吸入されたり、また、施工目地のかぎ型構造が十分に形成されていないことにより舗装版の荷重伝達能力が低下したりなどして、航空機の安全な運用に支障が生ずるおそれがある状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る工事費相当額93,154,334円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、請負人がコンクリート舗装工を設計図書等に基づき適切に施工する認識に欠けていたこと、支局の監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

舗装版の概念図

舗装版の概念図

施工目地の設計概念図

施工目地の設計概念図

施工目地の施工概念図

施工目地の施工概念図