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艦艇用編上靴等の調達に当たり、仕様書で定める要求事項を満たしていないのに、監督及び完成検査が適切でなかったため契約金額を支払っていたもの


(833) 艦艇用編上靴等の調達に当たり、仕様書で定める要求事項を満たしていないのに、監督及び完成検査が適切でなかったため契約金額を支払っていたもの

所管、会計名及び科目 防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省
        (項)防衛本省共通費
(項)武器車両等整備費
(項)平成16年度甲III型警備艦建造費
    平成16年度継続費 内閣府所管 一般会計
      (組織)防衛本庁
        (項)平成16年度甲III型警備艦建造費
部局等 装備施設本部
契約名 (1)(2) 艦艇用編上靴製造請負(平成20年度)
(3) 艦艇用編上靴製造請負(平成21年度)
(4) 中編上安全靴製造請負(平成20年度)
調達数量 (1) 2,068足
(2) 358足
(3) 1,611足
(4) 4,611足
契約の概要 海上自衛官が着用する艦艇用編上靴等を調達するもの
契約の相手方 株式会社ノサックス
契約 (1)(2) 平成20年10月一般競争後の随意契約
(3) 平成21年10月一般競争後の随意契約
(4) 平成20年9月一般競争後の随意契約
契約額 (1) 28,228,200円
(2) 4,886,700円
(3) 22,074,727円
(4) 26,047,539円
計 81,237,166円
完成検査 (1)(4) 平成21年1月
(2) 平成21年2月
(3) 平成22年2月
支払 (1)(4) 平成21年2月
(2) 平成21年3月
(3) 平成22年3月
適切を欠くと認められた支払額 (1) 28,228,200円(平成20年度)
(2) 4,886,700円(平成20年度)
(3) 22,074,727円(平成21年度)
(4) 26,047,539円(平成20年度)
計 81,237,166円

1 艦艇用編上靴及び中編上安全靴の調達の概要

(1) 製造請負契約の概要

 装備施設本部(以下「装本」という。)は、海上幕僚監部からの調達要求に基づき、平成20、21両年度に艦艇用編上靴の製造請負契約3件、20年度に中編上安全靴の製造請負契約1件の計4件の契約(契約金額計81,237,166円)を一般競争後の随意契約により株式会社ノサックス(以下「ノサックス」という。)と締結している。これらの契約は、海上自衛隊が作成した仕様書に基づき艦艇用編上靴等を製造し、各部隊に納入するもので、品質の担保等のために調達品に要求する事項については、次のとおりとしている。

ア 上記4件の契約の仕様書においては、作業者及び履物の静電気帯電が原因となって発生する災害・障害を防止するため、調達する艦艇用編上靴及び中編上安全靴の帯電防止性能に関し、「JIS T 8103(静電気帯電防止靴)」で定められた試験において所定の数値を満たすものとするとしている。

イ 20年9月に契約した中編上安全靴の調達に係る仕様書においては、さらに、工業標準化法(昭和24年法律第185号)の規定に基づく「JIS T 8101(安全靴)」及び「JIS T 8103(静電気帯電防止靴)」に適合する旨の表示の許可を受けたものとするとしている。

 なお、上記イの表示の許可に関しては、16年6月の工業標準化法の改正に伴い、製造業者等は、17年10月1日以降、登録の申請をして国から登録を受けた認証機関からJISへの適合性の認証を受けることにより、新たなJISマークを表示することができることとなっており、一方、同法の改正前の認定による古いJISマーク(以下「旧JISマーク」という。)は、20年10月1日以降は表示することができないこととなっている。

(2) 監督及び検査

 契約担当官等は、製造等の請負契約を締結した場合は、会計法(昭和22年法律第35号)等により、自ら又は補助者に命じて、契約の適正な履行を確保するために必要な監督及び給付の完了の確認をするために必要な検査をしなければならないこととなっている。そして、装本は、ノサックスの工場が所在する地域を管轄する中国四国防衛局の職員を補助者に任命して、前記4件の契約に係る監督及び品質確認のための完成検査を実施させている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、装本及び海上自衛隊横須賀地方総監部において、前記4件の契約について、合規性等の観点から、調達品が仕様書で定める要求事項を満たしているかなどに着眼して、契約関係書類、契約担当官等の補助者が作成した監督及び完成検査を実施した際の書類及び部隊に納入された現物を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり適切でない事態が見受けられた。

ア 帯電防止性能に関する要求事項について

 前記のとおり、4件の契約の仕様書においては、帯電防止性能に関し、「JIS T 8103(静電気帯電防止靴)」に定められた試験、すなわち、試験環境温度40±2℃、20±2℃、0+2℃の順序で実施する試験において、それぞれ所定の数値を測定することを要求事項としていた。しかし、調達品の完成検査においては、16℃又は19℃の試験環境下における測定のみとなっていて、仕様書で定められた試験方法に従って実施されたものとなっていなかった。このように、調達品は仕様書で定める要求事項を満たしていないのに、完成検査を実施した職員は、これを看過して合格と判定した旨の完成検査調書を作成していた。

イ JISへの適合性の認証に関する要求事項について

 20年度に契約した中編上安全靴については、仕様書において「JIS T 8101(安全靴)」及び「JIS T 8103(静電気帯電防止靴)」に適合する旨の表示の許可を受けたものとしていた。しかし、ノサックスは、調達品の製造に当たって、16年6月改正後の工業標準化法に基づくJISへの適合性の認証を受けていないのに、監督を実施した職員は、ノサックスがJISへの適合性の認証を受けているかどうかの確認を行っていなかった。また、21年1月の完成検査時には、20年10月1日以降は表示することができないこととなっている旧JISマークが調達品に表示されていて、改正後の工業標準化法に基づくJISへの適合性の認証を受けていないことが容易に確認できたのに、完成検査を実施した職員は、これを看過していた。

 したがって、仕様書で定める要求事項を満たしていないのに契約が履行されたとして、前記4件の艦艇用編上靴等の製造請負契約に係る契約金額を支払っていた事態は適切でなく、支払額計81,237,166円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、装本において、監督及び完成検査を適切に行うことについて認識が十分でなかったことなどによると認められる。