会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)防衛本省 | (項)防衛本省共通費 |
(項)武器車両等整備費 | |||
(項)研究開発費 | |||
(項)在日米軍等駐留関係諸費 | |||
部局等 | 内部部局等6機関 | ||
契約の概要 | 行政事務等の効率化を目的とした各種情報システムの維持整備に関する役務を行わせるもの | ||
契約の相手方 | 5会社 | ||
検査対象とした契約件数及び支払額 | 29件 | 39億0480万余円(平成20、21両年度) | |
上記に係る積算額 | 39億3034万余円 | ||
低減できた積算額 | 2億1400万円(平成20、21両年度) | ||
予定価格の積算に作業実績を反映できない契約件数及び積算額 | 3件 | 5億0025万円(背景金額)(平成20、21両年度) |
(平成22年10月28日付け 防衛大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、会計処理等の行政事務、部隊間における通信、防衛上の情報収集等の効率化を目的として各種の情報システムを導入している。これらの情報システムは、別途製作したソフトウェアをインストールしたアプリケーションサーバやデータベースサーバ等と、これらを利用するパソコンをネットワークで接続する方式となっている。
そして、貴省は、今後の行政改革の方針(平成16年閣議決定)等により、各府省共通業務のほか、各府省固有の事務・事業についても民間への委託を積極的に推進して、行政の効率化を図ることとされたことなどを受けて、これらの情報システムの維持整備に関する役務について、毎年度多数の請負契約を締結して行わせている。これらの請負契約において、請負業者は、〔1〕 情報システムの稼働状況の監視、操作支援等のシステム運用業務、〔2〕 情報システムの安定稼働のために行うメールサーバ等の容量確認、バックアップ、ウィルス対策、機器やネットワークの障害発生時の対応、ヘルプサービス等のシステム管理業務を実施することとされており、その業務の実施は、システム管理技術者等(以下「技術者」という。)が行うこととなっている。
また、これらの業務は必要に応じ、貴省の庁舎内に常駐して情報システムの稼働状況の監視等を実施するものと、庁舎内に常駐することなく専用の電話窓口等を設置して、障害が発生した場合に速やかに連絡を取り、対処ができる体制を整えるものがある。そして、請負業者は仕様書等に基づき、作業内容等を記載した作業報告書等を作成して提出している。
貴省における予定価格は、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令のほか、調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第35号。以下「訓令」という。)等により、調達要求書、仕様書等、契約方式その他の契約条件に基づいて積算することとなっている。また、予定価格の積算方式は、原則として市場価格方式によるものとし、これにより難い場合には原価計算方式によることとなっている。
そして、訓令によれば、予定価格の積算は次の方法により行うこととなっている。
ア 市販の積算参考資料等、適当と認められる標準資料がある場合は、適当と認められる数値を適用して算定する。
イ 適当と認められる標準資料がない場合は、見積資料の提出を求めるなどして当該資料に基づき適当と認められる数値を適用して算定することができる。
ウ 前年度等に調達の実例がある場合は、その実例に基づいて標準資料又は見積資料に基づく数値を補正する方法により、算定することができる。
また、原価計算方式による場合は、会社等の加工費、直接材料費及び直接経費を積み上げた製造原価に適正利益等を付加するなどして積算することとなっている。
このうち、加工費については、見積資料に基づく数値等により決定した工数(以下「作業時間」という。)に作業時間当たり労務単価等(以下「時間単価」という。)を乗ずるなどして、契約ごとに算定することとなっている。また、契約実績の多い会社等については、各会社等の労務費等を基にした固有の時間単価をあらかじめ算定することとしている。
貴省は、毎年度、各種の情報システムの維持整備に関する請負契約(以下「システム維持整備請負契約」という。)を多数締結している。
そこで、本院は、経済性等の観点から、システム維持整備請負契約に係る予定価格の積算は、市場価格方式を原則として適切に行われているかなどに着眼して検査した。
本院は、貴省内部部局等6機関(注1) が平成20、21両年度に支払を行ったシステム維持整備請負契約のうち、広く一般に実施されている情報システムの運用、管理に関する業務を契約内容のすべて又は一部としている契約29件(支払額計39億0480万余円、予定価格の積算額計39億3034万余円)を対象として、契約に関する資料の提出を受け、その内容を確認するなどして会計実地検査を行った。
上記29件のシステム維持整備請負契約の予定価格の積算方法について検査したところ、次のとおり、標準資料の適用、前年度等における調達の実例の適用及び作業実績の積算への反映についての検討が十分でない事態が見受けられた。
前記のとおり、訓令では、適当と認められる標準資料がある場合は、これを適用して予定価格を積算することとされている。
前記29件のシステム維持整備請負契約のうち貴省内部部局等6機関が締結した24件の契約の予定価格の積算(積算額計33億6200万余円)についてみると、技術者の時間単価について、一般競争入札又は公募を実施したが応札等の意思を示した業者が1者のみであったなどのため、原価計算方式による固有の時間単価が算定されている場合は当 該業者の固有の時間単価を適用するなどの方法により、また、固有の時間単価が算定されていない場合は当該業者から提出された参考見積書の価格を査定するなどの方法により予定価格を積算していた。
しかし、これらの契約の仕様書等に記載されている業務は、いずれも、そのすべて又は一部が広く一般に実施されている情報システムの運用、管理に関する業務であり、契約相手方を特定する必要がないなどの理由により一般競争契約等としているものである。したがって、貴省内部部局等6機関が、技術者の時間単価の適用に当たって、固有の時間単価を適用するなどして予定価格を積算するのは適切ではなく、訓令に基づき、市販の積算参考資料に掲載されている時間単価を適用して予定価格を積算すべきであると認められる。
そこで、前記24件の契約について、市販の積算参考資料に掲載されている技術者の時間単価等を適用して積算額計33億6200万余円を修正計算すると計31億5614万余円となり、積算額は計約2億0580万円低減できたと認められる。
技術研究本部は、平成20、21両年度に、「防衛省中央OAネットワーク・システム(技本システム)の運用支援役務」に関する契約(20年度支払額10,762,500円、21年度同18,511,500円)を20年度にA社と、21年度にB社とそれぞれ締結しており、技術者の時間単価については、両年度とも契約相手方の固有の時間単価(約9,600円及び約9,900円)を適用していた。
しかし、この業務は、情報システムの運用状況を把握したり、障害の対応や情報システムの管理を行ったりするなどの業務であり、技術者の時間単価については、市販の積算参考資料に掲載されているサーバ及びネットワーク環境の設定を行い情報システムの管理を行う技術者である「システム管理技術者1」の時間単価(20年度5,518円、21年度5,512円)を適用して予定価格を積算すべきであると認められる。
なお、同本部においては、22年度の契約に当たり、本院の検査結果を踏まえるなどして、市販の積算参考資料に掲載されている時間単価を適用して予定価格を積算し、これにより契約している。
前記のとおり、訓令では、前年度等に調達の実例がある場合は、その実例に基づいて標準資料又は見積資料に基づく数値を補正する方法により、予定価格を積算することができるとされている。
前記29件のシステム維持整備請負契約のうち、貴省内部部局が21年度に締結した「防衛省中央OAネットワーク・システム(内局・施設庁システム)の運用支援役務」に関する契約の予定価格の積算(積算額38,154,847円)についてみると、技術者の時間単価については、契約相手方が固有の時間単価を算定している業者であったことなどから、契約相手方の固有の時間単価(約9,700円等)を適用したり、契約相手方から提出された参考見積書に記載されていた外注業者の時間単価(約6,200円等)を適用したりしていた。
しかし、貴省内部部局は、20年度にも同様の業務について、同一の契約相手方と契約を締結していて、この契約における技術者の時間単価(約4,900円)は、21年度の契約において適用した時間単価(約9,700円等及び約6,200円等)を大きく下回っているものとなっていた。したがって、このような契約に当たっては、前年度における調達実例を調査するなどして、予定価格を積算すべきであると認められる。
そこで、21年度の契約について、20年度の調達実例に基づく技術者の時間単価を適用して積算額3815万余円を修正計算すると2992万余円となり、積算額は約820万円低減できたと認められる。
システム維持整備請負契約は、契約相手方の技術者が貴省の庁舎内に常駐するなどして実施した業務量に応じた対価を支払うものであることから、予定価格の積算に当たっては業務に必要な作業時間を適切に見込んで算定する必要がある。このため、具体的な作業内容ごとの技術者数や作業時間等が記載された作業報告書等を確実に提出させてその作業実績を確認するとともに、これを次回の予定価格の積算に適切に反映させる必要がある。
前記29件のシステム維持整備請負契約のうち、貴省統合幕僚監部等2機関(注2)
が締結した3件の契約の予定価格の積算(積算額計5億0025万余円)についてみると、一般競争入札又は公募を実施したが応札等の意思を示した業者が1者のみであったため、当該業者から徴した参考見積書に示された技術者数や作業時間等を基に積算するなどしていた。
しかし、請負業者が仕様書等に基づき提出している作業報告書には、システム運用業務やシステム管理業務等の作業内容ごとの技術者数や作業時間が記載されていないことなどから、これらの実績が確認できない状況となっていた。
したがって、仕様書等に業務内容を明確に記述するとともに、作業内容ごとの技術者数や作業時間を記載した作業報告書等を提出させることなどにより、上記3件の契約の締結に当たって、作業実績を確認して、これを適切に反映させた積算を行う必要があると認められる。
陸上自衛隊補給統制本部は、平成20年度に、「陸幕システム等システム維持支援」に関する契約(支払額180,600,000円)をC社と締結しており、予定価格の積算(積算額181,034,000円)に当たっては、公募を実施したが応募した業者が1者のみであったため、当該業者から徴した参考見積書に示された見積額を基に積算していた。
しかし、請負業者が仕様書等に基づき提出している作業報告書には、システム運用業務やシステム管理業務等の作業内容ごとの技術者数や作業時間が記載されていないことなどから、請負業者から徴した参考見積書に示された見積額の妥当性について、実績により確認できない状況となっていた。
以上のとおり、検査の対象としたシステム維持整備請負契約29件のうち、前記(1)及び(2)の契約計25件に係る予定価格の積算額計34億0015万余円について、標準資料や前年度等の調達実例に基づく技術者の時間単価を適用するなどして修正計算すると計31億8607万余円となり、積算額は計約2億1400万円低減できたと認められる。
前記のとおり、システム維持整備請負契約の予定価格の積算に当たり、市場価格方式により標準資料や調達実例に基づく技術者の時間単価を適用すること、また、作業報告書等により作業内容ごとの技術者数や作業時間等の作業実績を確認してこれを次回の積算に反映させることなどについての検討が十分ではない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省内部部局等6機関において、予定価格の積算に当たり、標準資料や調達実例に基づく技術者の時間単価を適用すること及び作業報告書等により作業実績を確認してこれを次回の積算に適切に反映させることについての認識が十分でなかったこと、また、貴省において、これらの機関に対する指導が十分でなかったことによると認められる。
貴省は、近年、各種の情報システムの維持整備に関する役務を積極的に民間に行わせており、これらに係る請負契約が増加している。
ついては、貴省において、予定価格の積算を適切なものとするよう次のとおり是正改善の処置を求める。
ア システム維持整備請負契約の技術者の時間単価の適用に当たっては、
(ア) 訓令等に基づき、原則として、市場価格方式によるものとし、標準資料と見積資料とを比較することなどについて十分検討すること
(イ) 前年度等において調達の実例がある場合には、これを調査するなどして、調達実例等に基づく時間単価を適用することについて十分検討すること
イ 仕様書等において、業務内容を明確に記述するとともに作業内容ごとの技術者数や作業時間を記載した作業報告書等を確実に提出させることを明記するなどして、作業実績を確認しその実績を次回の積算に反映できるようにすること