会計名 | 一般会計 | |
部局等 | 陸上幕僚監部、陸上自衛隊8駐屯地 | |
国有財産の分類 | (分類)行政財産(種類) | 公用財産(区分)土地 |
検査対象とした国有財産の概要 | 陸上自衛隊の21駐屯地が管理している、平成10年度から21年度までの間に廃止された自動車教習所の跡地 | |
有効に活用されていない教習所跡地の面積及び国有財産台帳価格 | 163,046m2 | 45億2764万円(平成22年3月末) |
(平成22年10月20日付け 防衛省陸上幕僚長あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴自衛隊は、災害派遣等のために直ちに部隊を運用できるよう、部隊ごとに、運行車両の準備、操縦手の待機等の即応体制を保持し、このためには、各部隊の所在する駐屯地等内において、保有する大型自動車等の各種車両を運行できることが必要であるとしている。
貴自衛隊の新隊員は、教育終了後に一般部隊へ配属されるため、車両操縦手としての早期戦力化を図る必要がある。そこで、貴自衛隊は、車両操縦手を継続的に養成することなどを目的とした自動車教習所(以下「教習所」という。)を常時運営している。教習所は、駐屯地又は駐屯地が管理する訓練場の敷地に設置され、技能教習及び技能検定のための設備を有しており、その面積は8,000m2
以上必要とされているなどのため、駐屯地等内で広い敷地を占めている。
貴自衛隊は、「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成7年11月安全保障会議・閣議決定)において、従来の18万人体制を抜本的に見直し、16万人体制に移行することとしている。そして、これに基づく「中期防衛力整備計画(平成8年度〜平成12年度)」(平成7年12月安全保障会議・閣議決定)において、防衛力の合理化、効率化、コンパクト化等を基本として防衛力整備を進めることとし、師団の改編等を通じて体制を縮小化しており、これに伴い、教習所の教習体制についても統合・集約化する見直しを行い、平成10年度以降、教習所を順次廃止してきた。
また、財政当局から、教習所については、原則として海上自衛隊、航空自衛隊を含む3自衛隊間で教習所を共同使用することなどを前提に、19年度以降の教習所の最適な配置の在り方について検討し、既存の施設の統廃合を強力に推進することが求められていることから、引き続き教習所を計画的に廃止している。
教習所を廃止するに当たり、教習所を管理する駐屯地は、教習所を廃止する際に、明確な根拠規程はないものの、廃止理由、廃止する施設の現況、跡地の利用方法等を記載した教習所廃止計画(以下「廃止計画」という。)を作成し、上級部隊から承認を受けることにしている。そして、貴自衛隊において10年度から21年度までの間に廃止された教習所は計21か所に上っており、当該教習所の跡地(以下「教習所跡地」という。)を21駐屯地(注1)
がそれぞれ管理している。
本院は、有効性等の観点から、上記の21駐屯地が管理する教習所跡地が有効に利用されているかなどに着眼して、防衛省内部部局、陸上幕僚監部、4方面総監部(注2) 及び4駐屯地(注3) において会計実地検査を行うとともに、それ以外の17駐屯地については教習所跡地の利用実績等の関係書類を提出させるなどして検査を実施した。
検査したところ、次のような状況となっていた。
すなわち、貴自衛隊における前記21駐屯地の教習所跡地(面積計428,064m2
、国有財産台帳価格計134億8451万余円)のうち、12駐屯地(注4)
の教習所跡地については、廃止計画に車両整備工場や宿舎を整備するなどと記載されており、いずれも教習所のコースや建物等の施設(以下、これらを「教習所施設」という。)を撤去するなどした後、廃止計画に記載のとおり利用されていた。
しかし、残りの9駐屯地(注5)
の教習所跡地については、教習所施設の一部を撤去するなどしていたが、ほとんどの教習所施設が残置されたままとなっていた。このうち20年3月に廃止された滝川駐屯地の教習所を除く8駐屯地の教習所跡地(面積計163,046m2
、国有財産台帳価格計45億2764万余円)は、5年以上の長期間にわたり教習所施設が残置されたままとなっており、この中の2駐屯地の教習所跡地は、残置期間が10年以上となっていた。
そして、上記8駐屯地の廃止計画についてみると、このうち6駐屯地(注6)
については、廃止計画が保存年限経過により既に廃棄されていたため、同計画における教習所跡地の利用方法を確認することができなかった。また、残りの2駐屯地(注7)
の廃止計画においては、車両操縦訓練等に利用するとされていたが、訓練等による具体的な利用計画がほとんど策定されていなかった。
さらに、前記8駐屯地の教習所跡地の利用状況についてみると、利用状況が記録されていないなどのため、訓練等による利用実績は書類上確認できない状況であった。また、本院が陸上幕僚監部を通じるなどして各駐屯地から報告を受けた教習所跡地の利用実績についても、書類上で確認することができない上に、仮にこれらを認めたとしても利用実績は低調であり、十分に利用されているとは認められなかった。
小倉駐屯地の曽根訓練場内にある小倉自動車教習所(面積12,702m2 、国有財産台帳価格447,019,169円)は、平成14年3月に廃止されたが、教習所施設が残置されたままとなっていた。また、廃止計画が既に廃棄されていたため、同計画における教習所跡地の利用方法を確認することはできなかった。そして、教習所跡地を含む演習場全体の利用状況の記録によれば、21年度に53日間利用したとなっていたが、教習所跡地の利用実績は確認できなかった。さらに、同駐屯地から受けた教習所跡地の利用実績に関する報告では、十分に利用されているとは認められなかった。
前記のとおり、8駐屯地の教習所跡地について、教習所施設が長期間にわたり残置されていて、廃止計画における今後の利用方法が確認できなかったり、具体的な利用計画がほとんど策定されていなかったりなどしたまま、有効に活用されていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴自衛隊において、次のことなどによると認められる。
ア 教習所跡地は国有財産であって有効に利用しなければならないとの認識が十分でなく、廃止計画の作成やその見直しについての根拠規程がないなど有効活用に向けた方策が十分執られていないこと
イ 廃止計画に基づく具体的な利用計画を策定することにより教習所跡地の利用の実効性を図ることが徹底されていないこと
ウ 教習所跡地の利用状況を記録する体制が整備されておらず、利用状況を十分に確認できる体制となっていないこと
教習所跡地は国民共通の貴重な資源である国有財産であり、教習所部分にかかる敷地の価額は高額となっていることなどから、有効に活用する必要がある。
ついては、貴自衛隊において、教習所跡地の有効活用を図るために、次のとおり改善の処置を要求する。
ア 教習所跡地については、その利用方法等を適時適切に見直すことができるように、廃止計画の作成等についての具体的な定めを設けることなどにより、同跡地の取扱いを明確にすること
イ 教習所跡地のうち、長期間利用されていないなど十分な有効活用がなされていない教習所跡地については、その必要性の検討を行った上で、不要な教習所跡地については、用途廃止に向けて所要の手続を執るなどすること、また、引き続き必要な教習所跡地については、教習所施設を撤去して演習場用地として利用するなどの同跡地の利用計画を策定することなどにより今後の利用の実効性を図ること
ウ 教習所跡地の利用方法等の見直しができるよう、同跡地の利用状況を適切に記録するなどの体制を整備すること
(注2) | 4方面総監部 北部、東北、東部、中部各方面総監部
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(注3) | 4駐屯地 仙台、松本、松山、小倉各駐屯地
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(注4) | 12駐屯地 函館、青森、仙台、秋田、郡山、久里浜、北富士、金沢、久居、日本原、松山、久留米各駐屯地
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(注5) | 9駐屯地 滝川、美幌、松本、福知山、信太山、山口、小倉、竹松、国分各駐屯地
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(注6) | 6駐屯地 福知山、信太山、山口、小倉、竹松、国分各駐屯地
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(注7) | 2駐屯地 美幌、松本両駐屯地
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