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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第15 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

特地勤務手当等の支給に当たって、特地官署等の状況を報告させることなどにより、必要な場合には官署の状況に即して速やかに指定の解除等を行い、特地勤務手当等を支給しないことなどとするよう改善させたもの


(1) 特地勤務手当等の支給に当たって、特地官署等の状況を報告させることなどにより、必要な場合には官署の状況に即して速やかに指定の解除等を行い、特地勤務手当等を支給しないことなどとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛本省共通費
(項)自衛官給与費
部局等 内部部局
特地勤務手当等の概要 離島その他の生活の著しく不便な地に所在する官署等に勤務する自衛官等に対して、精神的な負担や生活の不便等に給与上の対処を行うために支給するもの
14分屯基地における特地勤務手当等の支給額 7億8849万余円(平成21年度)
上記のうち特地官署等の指定解除を行わなかったため2分屯基地において支給された特地勤務手当等の支給額   5615万円  

1 特地勤務手当等の概要

(1) 特地勤務手当等の支給手続

 防衛省は、防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)等に基づき、離島その他の生活の著しく不便な地に所在する官署(以下「特地官署」という。)、また、これに準ずる官署(以下「準特地官署」という。また、特地官署と合わせて「特地官署等」という。)に勤務する自衛官等に対して、精神的負担や生活の不便等に給与上の対処をするため、一般職の国家公務員に準じて、特地勤務手当及び特地勤務手当に準ずる手当(以下、これらを「特地勤務手当等」という。)を支給している。
 特地勤務手当等が支給される官署は、防衛省の職員の給与等に関する法律施行令(昭和27年政令第368号。以下「給与政令」という。)により、1級から6級までに区分されるなどしており、特地勤務手当基礎額に各級別に定められた率を乗ずるなどして算出された月額が特地勤務手当等として毎月支給されることとされている。また、各官署の属する級の区分(以下「級地区分」という。)は、防衛大臣が定め、防衛省職員給与施行細則(昭和30年防衛庁訓令第52号)に掲げることとされている。

(2) 級地区分の決定方法及び手当の支給についての経過措置

 防衛省内部部局は、級地区分の決定に当たって、人事院の級地区分の決定方法に準じて、官署から最寄りの公共施設等までの距離等の調査を定期的に行い、その距離等を点数化するなどしている。また、定期調査等の結果、特地官署等としての指定の解除又は級地区分の格下げ(以下「指定の解除等」という。)があった場合には、人事院規則9—55(特地勤務手当等)に準じて設けた経過措置により、特地勤務手当等の支給額を3年間で段階的に引き下げていくこととしている。
 なお、人事院によると、この経過措置は、官署の周辺環境が変化するなど他律的な要因である場合に適用されるものであり、官署が移転するなどの自律的な要因である場合には適用しない取扱いとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性等の観点から、特地勤務手当等の支給が制度の趣旨に沿って適切に行われているかに着眼して検査した。
 検査に当たっては、固定式警戒管制レーダー装置(以下「レーダー装置」という。)により監視管制業務を行う航空警戒管制部隊が配備されている基地の多くが特地官署等に指定されていることから、これにより特地勤務手当等が支給されている14分屯基地(注) (離島に所在するものを除く。平成21年度の特地勤務手当等の支給額7億8849万余円)を対象として、防衛省内部部局、航空幕僚監部、航空自衛隊輪島分屯基地において、級地区分の決定方法や、分屯基地の勤務実態を確認するなどして会計実地検査を行った。また、輪島分屯基地以外の13分屯基地については、公共施設等までの距離等の調査結果が記載された報告書(以下「実情調査報告書」という。)等を徴し、その内容を精査するなどして検査を行った。

 14分屯基地  網走、当別、襟裳、大湊、山田、加茂、大滝根山、峯岡山、輪島、笠取きようがみさきせふりやま山、経ヶ岬、高尾山、背振山及び高畑山各分屯基地

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 輪島及び高尾山両分屯基地(以下「2分屯基地」という。)は、いずれも、レーダー装置のアンテナ等が山頂に設置されているが自衛官等が常駐していない地区(以下「山頂地区」という。)と、山を下った場所に所在し、庁舎にレーダー装置の表示制御装置等が設置されていて自衛官等が常駐している地区(以下「市街地区」という。)とに分かれていた。
 そして、実情調査報告書によると、2分屯基地は、山頂地区を官署の測定基点として最寄りの公共施設等までの距離を計測しており、防衛省内部部局は、この距離等により決定された級地区分(輪島分屯基地は2級、高尾山分屯基地は準特地官署)に基づき、21年度における特地勤務手当等をそれぞれ4941万余円及び674万余円、計5615万余円支給していた。
 しかし、前記のとおり、2分屯基地の山頂地区には自衛官等は常駐しておらず、自衛官等が常駐している市街地区は、生活の著しく不便な地には該当しないと思料されたことから、防衛省内部部局等に対して、市街地区を官署の測定基点として最寄りの公共施設等までの距離等を計測させ、これを精査したところ、2分屯基地とも公共施設等に近接しており、特地官署等には該当せず指定を解除すべきものと認められた。
 このことについて、防衛省内部部局では、人事院が級地区分の決定方法を21年4月に改正するとの情報を受けて20年4月に実施した各官署の実態調査の結果、同年12月には、2分屯基地の級地区分を見直す必要があると認識していたが、21年1月、人事院からの同年4月の改正を見送るとの情報を受け、級地区分の見直しに向けた手続を中断したとしていた。
 そして、人事院が改正を行った22年4月に、2分屯基地の級地区分を見直したものの、それ以降も、経過措置を適用して見直しにより引き下げた額の特地勤務手当等を支給していた。
 しかし、前記のとおり、防衛省内部部局において、20年12月には2分屯基地の指定の解除の必要性について認識しており、また、指定の解除は、測定基点を山頂地区から市街地区に変更したことによるものであって、前記の人事院の取扱いの趣旨に照らせば、周辺環境の変化等の他律的要因ではなく、測定基点の変更という自律的要因に基づくものであるから、2分屯基地の級地区分の見直しの必要性を認識した20年12月以降速やかに特地官署等の指定の解除をするとともに、解除後は経過措置を適用しないこととすべきものと認められた。
 以上のように、官署の級地区分の見直しにおいて、特地官署等としての指定の解除等を速やかに行っていなかったり、測定基点を変更したことによる指定の解除等であるのに経過措置を適用して特地勤務手当等を支給したりしている事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、防衛省内部部局において、航空自衛隊の各分屯基地の実態把握が十分でなかったこと、測定基点を変更した場合における特地勤務手当等の支給に経過措置は適用されないことについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、22年10月に、各幕僚監部等に通知を発して、防衛省内部部局に特地官署等の状況を報告させることなどについて周知徹底を図り、必要な場合には官署の状況に即して速やかに指定の解除等を行うようにするとともに、給与政令等の改正を行い、測定基点の変更があった分屯基地等については、経過措置による特地勤務手当等を支給しないこととするなどの処置を講じた。