所管、会計名及び科目 | 防衛省所管 | 一般会計 | (組織)防衛本省 | (項)武器車両等整備費 |
平成18、19両年度は、 | ||||
防衛省所管 | 一般会計 | (組織)防衛本省 | (項)武器車両等購入費 | |
平成17年度は、 | ||||
内閣府所管 | 一般会計 | (組織)防衛本庁 | (項)武器車両等購入費 | |
部局等 | 陸上幕僚監部 | |||
倉庫の概要 | 155mmりゅう弾砲を長期保管するための組立式の倉庫 | |||
有効に活用されていなかった倉庫の物品管理簿上の価格 | 22式 | 1億2837万円(平成21年度末) |
陸上自衛隊は、有事の際に大量の火力を随時随所に集中して広い地域を制圧するための装備品の一つとして、155mmりゅう弾砲FH70(以下「砲」という。)を多数保有している。
しかし、砲を含む主要特科装備については、防衛力の在り方を定めている「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成16年12月閣議決定。以下「大綱」という。)において、その保有定数が約900門(両)から約600門(両)に見直されたことから、陸上幕僚監部は、砲についても平成18年度から順次、保有定数を削減することにした。このため、陸上幕僚監部は、残存耐用年数が短い砲を優先するなどして削減する砲等を選定し、これを各年度に補給統制本部、3補給処(注1)
、1支処(注2)
等に対して通知している。
そして、陸上幕僚監部は、砲の保有定数を上記大綱の見直しに合わせて削減した上で、その後は各年度一定数を削減していき、42年度にそのすべてを用途廃止することとしている。
一方、実際の砲の保有数についてみると、昭和60年度から平成12年度までの間に調達した砲が、耐用年数の経過に伴い順次自然損耗していくことが見込まれており、特に、昭和62年度から平成4年度頃に多数調達された砲の自然損耗による用途廃止が28年度頃に年間約40門とピークを迎えることになることから、30年度以降において、保有数が保有定数を年間最大約30門下回るなど、大幅な保有定数割れを生ずる見込みとなっている(図
参照)。
そこで、陸上幕僚監部は、上記の大幅な保有定数割れに対処するため、大綱により削減することとされた砲の一部及び各駐屯地の部隊で運用している砲の一部を各補給処等で別途に長期間使用に供さずに保管させ(以下、別途に保管させている砲を「保管砲」という。)、これを30年度以降に活用して、保有定数割れの際の補充用とすることとした。
図 砲の保有数と保有定数の関係
注(1) | 保有数は、調達時期や使用状況等、主として自然損耗による用途廃止の数を考慮したものである。 |
注(2) | 保有定数は、大綱や野戦特科部隊における運用等により、陸上幕僚監部が定めるものである。 |
陸上自衛隊は、保管砲の保管に有用な資材として、多用途維持管理用資材(以下「倉庫」という。)を調達し、既存の建屋と併用して保管砲の保管を行うこととしている。倉庫は、ドイツ製の樹脂性天幕等と金属製骨組等からなる組立式で、1式につき砲を1門格納し、気密性が高く、除湿装置を備えるなど、建屋での保管に比べて、長期保管に適したものとなっている。そして、17年度から21年度までの間に倉庫計23式が4補給処(注3) 及び1支処に納入されている。
本院は、有効性等の観点から、倉庫が保管砲の長期保管用として有効に使用されているかなどに着眼して、陸上幕僚監部、4補給処及び1支処において、倉庫の使用状況及び倉庫内に保管する砲の選定方法を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
各補給処における倉庫の使用状況をみたところ、次表のとおり、倉庫7式が一度も使用されずに、3補給処及び1支処において梱包されたままの状態で保管されていて、このうちの2式はその期間が1年を超えていた。
また、倉庫の使用目的が十分に理解されていなかったことなどから、3補給処及び1支処において、倉庫8式が本来の目的と異なる他の補給品等の一時保管場所や車両の保管場所として使用されていたり、倉庫4式が納入された直後に砲を保有しない他の駐屯地の部隊へ管理換されたりしていた。
そして、保管砲は21年度末において2補給処(注4)
及び1支処に13門あったが、倉庫に保管されていた砲は1補給処(注5)
及び1支処の3門のみであり、残りの10門は建屋で保管されていた。
関東補給処は、平成21年度末までに倉庫計3式が納入されていたが、2式については一度も使用されずに、梱包された状態のまま保管されており、このうちの1式はその期間が約1年5か月となっていた。また、使用目的が十分に理解されていなかったことなどから、倉庫1式が納入後約4年2か月間、他の車両の保管場所等となっていて、本来の目的とは異なる目的で使用されていた。
一方、関東補給処は21年度末において保管砲を2門保有していたが、いずれも建屋で保管していた。
表 平成21年度末における倉庫の使用状況 | (単位:式) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注) 不用決定の1式は強風により破損したものである。 |
保管砲は、前記のとおり、30年度以降に見込まれる砲の保有定数割れの補充用として保管されるため、耐用年数の延長を図るオーバーホールを実施した後の砲等、保管後の供用時に十分な残存耐用年数を有する砲を選定することが合理的な方法である。
そこで、陸上幕僚監部が22年度に保管砲として選定している40門についてみると、オーバーホールが行われていないなど、残存耐用年数が短い砲が大部分となっていた。このため、これら40門は31年度から順次用途廃止が開始されることが見込まれ、このままでは、33年度以降大幅な定数割れを生ずるおそれがあり、砲が計画的かつ効率的に保管されていない状態となっていた。
また、1補給処及び1支処の倉庫に保管されていた前記の保管砲3門についても、いずれもオーバーホールが実施されていない砲が選定されていたため、合理的な選定となっていなかった。
したがって、21年度末現在で調達された倉庫23式のうち、不用決定された1式を除く22式(物品管理簿上の価格計1億2837万余円)の倉庫が保管砲用として適切に使用されていなかったり、保管砲の選定が合理的に行われていなかったりしていて、倉庫が有効に活用されていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、陸上幕僚監部において、補給統制本部、3補給処及び1支処等に対して倉庫の使用方法や目的を明確に示していなかったこと、また、保管砲の選定について残存耐用年数等を十分に考慮して合理的な選定を行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、22年3月に補給統制本部及び各方面総監部等に対して通達を発するなどして、倉庫の使用方法や目的を明確にするとともに、保管砲の選定について残存耐用年数等を十分に考慮して合理的な選定を行うこととし、これにより選定した砲を22年9月に補給統制本部及び各方面総監部等に通知するなどして、倉庫を有効に活用する処置を講じた。
(注1) | 3補給処 東北、関東、九州各補給処
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(注2) | 1支処 関西補給処桂支処
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(注3) | 4補給処 北海道、東北、関東、九州各補給処
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(注4) | 2補給処 関東、九州両補給処
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(注5) | 1補給処 九州補給処
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