ページトップ
  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第15 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

陸自指揮システムについて、ソフトウェアの各メニューの利用状況を十分に把握・検討した上で、必要性がなくなったメニューを廃止したり、利用が低調なメニューの具体的な利用方法等を示したりなどすることにより有効な運用が図られるよう改善させたもの


(3) 陸自指揮システムについて、ソフトウェアの各メニューの利用状況を十分に把握・検討した上で、必要性がなくなったメニューを廃止したり、利用が低調なメニューの具体的な利用方法等を示したりなどすることにより有効な運用が図られるよう改善させたもの

所管、会計名及び科目 防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省
  (項)武器車両等整備費
  平成18、19両年度は、
防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省
  (項)装備品等整備諸費
平成17年度は、
内閣府所管 一般会計 (組織)防衛本庁
  (項)装備品等整備諸費
部局等 陸上幕僚監部
陸自指揮システムの概要 各級指揮官の指揮・統制及び情報伝達・処理の正確性、迅速性等を向上させるため、各部隊等の各種状況を報告したり、幕僚活動を支援したりなどする機能を有するシステム
上記システムのソフトウェアに係るメニュー数 72個
上記システムのソフトウェアの改修に要した経費 27億2073万円(背景金額)(平成17年度〜21年度)

1 陸自指揮システムの概要

 陸上自衛隊は、陸上幕僚長、方面総監等の各級指揮官の指揮・統制及び情報伝達・処理の正確性、迅速性等を向上させる目的で、平成5年度から陸自指揮システムを導入している。この陸自指揮システムは、サーバ、ネットワーク、端末等の各種機器及びソフトウェアで構成されており、指揮下にある部隊等の各種状況を報告したり、幕僚活動を支援したりなどする機能を有するものである。
 陸自指揮システムには細分化された72個のメニューがあり、これらは〔1〕 主に有事や演習訓練等における利用を前提としたメニュー(以下「有事メニュー」という。)と、〔2〕 主に平時の利用を前提としたメニュー(以下「平時メニュー」という。)の2種類に分類され、その数はそれぞれ51個及び21個となっている。そして、陸上幕僚監部は、各メニューの具体的な利用方法等について、メニューの運用計画の策定、業務処理規則の制定等を行う各メニューの責任者が定める通達等にゆだねている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、有効性等の観点から、陸自指揮システムが有効に利用されているかなどに着眼して、陸上幕僚監部等(注1) において、20、21両年度の各メニューの利用状況に関する調書等を作成・提出させて、その内容を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

 陸上幕僚監部等  陸上幕僚監部、北部、東北、東部、中部、西部各方面総監部

(検査の結果)

 陸自指揮システムのソフトウェアは、その利便性を向上させるなどのため、システム開発以降、適宜に改修が行われており、17年度から21年度までに改修に要した経費は、次表のとおり計27億2073万余円となっている。

表 陸自指揮システムのソフトウェアの改修に要した経費
(単位:千円)

年度 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
経費 665,151 537,390 555,024 472,500 490,665 2,720,731

 そして、陸自指揮システムの利用状況等を検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 陸自指揮システムの運用及び管理の状況

 陸上幕僚監部は、陸自指揮システムの運用及び管理のために、陸自指揮システムの運用及び管理要領(平成17年陸幕情研第233号。以下「要領」という。)を制定している。要領によると、各方面総監部から陸上幕僚監部に対して四半期ごとに陸自指揮システムの稼働状況を報告することとなっており、各方面総監部は、この報告により、各メニューのアクセスログ数等を報告していた。
 しかし、陸上幕僚監部は、アクセスログ数等の統一的な報告様式及び集計方法を要領に定めていなかったため、各方面総監部から提出された報告書において、一部のメニューがまとめて報告されていたり、アクセスログ数の集計方法が区々となっていたりして、各メニューの利用状況を十分に把握・検討することができない状況となっていた。このため、今後の陸自指揮システムの利活用に十分反映できない状況になっていると認められた。

(2) 陸自指揮システムのメニューの利用状況

 上記のような状況となっていたことから、本院は、陸上幕僚監部等に対して、アクセスログ数については、20、21両年度のうち、サーバに記録が残っていて集計が可能な21年10月から12月までの3か月分を対象として、大臣直轄部隊及び5方面隊(注2) (以下「6方面隊等」という。)に属する各部隊等のメニューごとのアクセスログ数を統一的な報告様式及び集計方法を示して作成・提出させるとともに、20、21両年度の演習訓練等における上記各部隊等のメニューの利用状況に関する調書等を作成・提出させた。そして、有事メニュー51個については主に演習訓練等での利用状況を、また、平時メニュー21個については主に各メニューの責任者による通達等の整備状況や利用状況をそれぞれ確認したところ、次のような状況となっていた。

 大臣直轄部隊及び5方面隊  大臣直轄部隊、北部、東北、東部、中部、西部各方面隊

ア 有事メニューの利用状況

 有事メニュー51個のうち、極めて専門的で利用する部隊等が限定されるなどの特殊な事情を有する15個を除いた36個を対象として利用状況を確認したところ、有事メニューを利用することが想定される演習訓練等において、6方面隊等のうち半数未満しか利用がないなど利用が低調となっていたメニューが14個あった。
 そして、これらのメニュー14個と残りのメニュー22個とのメニュー1個当たりの平均アクセスログ数を比較すると、後者の26,042件に対して、前者はわずか459件となっていた。
 また、上記のメニュー14個は、ソフトウェアの改修により機能が拡充された他のメニュー等で代替できるようになっていたなどのため必要性がない状況となっていたり(11個)、部隊等において利用方法が十分に理解されていないことなどから、演習訓練等における利用がほとんどない状況となっていたり(3個)していた。

イ 平時メニューの利用状況

 平時メニュー21個のうち、特殊な事情を有する6個を除いた15個を対象として、通達等の整備状況及び利用状況を確認したところ、各メニューの責任者が具体的な利用方法等を通達等で定めていなかったり(6個)、導入後の事情変更等により利用できなくなっていたり(2個)していたメニューがあった。
 そして、上記のメニュー計8個と残りのメニュー7個とのメニュー1個当たりの平均アクセスログ数を比較すると、後者の36,933件に対して、前者はわずか1,606件となっていた。

<事例>

 メニューAは、各駐屯地医務室において発生した患者の衛生統計データを入力、表示して、そのデータを多様な形式で集計して、衛生統計の基礎資料とするものである。しかし、同メニューの責任者である陸上幕僚監部衛生部長は利用方法等についての通達を発しておらず、平成21年10月から12月までの間の同メニューのアクセスログ数は、わずか136件となっていた。

 上記のように、指揮・統制の正確性、迅速性等を向上させる目的で導入されている陸自指揮システムが、メニューの利用状況を十分に把握・検討することができない状況となっていて今後の利活用に十分反映できない状況になっていたり、メニューの利用が低調となっていたりなどしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、陸上幕僚監部において、次のことなどによると認められた。

ア 各方面総監部から陸上幕僚監部に四半期ごとに報告させている各メニューのアクセスログ数等の統一的な報告様式及び集計方法を要領に定めていなかったこと

イ メニューの必要性について見直しを十分検討していなかったこと

ウ メニューの具体的な利用方法等について、メニューの責任者に通達等を適時適切に発するよう指導していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、22年7月に各方面総監部等に通達を発するなどして、陸自指揮システムのより有効な運用が図られるよう、次のような処置を講じた。

ア 要領を改正して、各方面総監部から陸上幕僚監部に四半期ごとに報告させている各メニューのアクセスログ数等の報告様式及び集計方法を統一させ、各メニューの利用状況を十分に把握・検討できるようにした。

イ 他のメニューの機能拡充や導入後の事情変更等により必要性がなくなったメニュー13個を廃止した。

ウ メニューの具体的な利用方法等について、メニューの責任者から通達が発せられていない各種報告等に関するメニュー及び利用方法が十分に理解されていないなどのため演習訓練等での利用が低調なメニューについて、それぞれ具体的な利用方法等を示した通達を発して利用の促進を図ることとした。