科目 | 貸出金 | |
部局等 | 株式会社日本政策金融公庫泉佐野支店 | |
貸付けの根拠 | 株式会社日本政策金融公庫法(平成19年法律第57号) | |
貸付金の種類 | 事業資金 | |
貸付けの内容 | 材料仕入れ、諸経費等の支払に必要な運転資金の貸付け | |
貸付先 | 建設業を創業したとする者 | |
貸付金額 | 5,000,000円 | |
不当貸付金額 | 5,000,000円 |
株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)は、株式会社日本政策金融公庫法(平成19年法律第57号)等に基づき、国民一般向け業務において、雇用の創出を伴う事業等を新たに営もうとする者、これらの事業開始後おおむね5年以内の者を対象として、その創業等を支援するなどのため、事業資金を貸し付けている。
そして、公庫は、事業を新たに営もうとするなどの法人・個人からの初回借入申込みについては、企業実在又は創業見込みの確認に必要な書類等を徴するなどして審査を行うこととなっている。
公庫は、事業資金の貸付けについて、創業を装って不正な借入申込みをしていた事案3件(以下「偽装申込3事案」という。)に対する貸付けが判明したことから、平成20年6月に、全支店に対して注意喚起の通達を発している。通達では、偽装申込3事案に類似する事案への対応として、偽装申込3事案の具体例を示すとともに、企業実在に疑義があると判断される申込事案については、支店において企業実在の確認を慎重に行うよう指示している。そし て、公庫の各支店は、この通達が発せられた以降に、全国で14件の偽装申込3事案と類似した不正な借入申込みに対して通達で示された具体例と照合するなどして、その貸付けを防止していた。
本院は、22年4月に、公庫の総裁から会計検査院法第27条の規定に基づく報告(会計に関係のある犯罪の報告)を受けた。報告の内容は、公庫泉佐野支店が21年4月に行った事業資金の貸付けが建設業の創業を装った不正な借入申込みに対するものであり、貸付残高について延滞が発生しているなどとするものであった。
これを受けて、本院は、上記の貸付けが通達を発した20年6月以降に行われたものであることから、合規性等の観点から、この通達を踏まえた審査が適切に行われているかなどに着眼して、同支店において、貸付けに係る関係書類により実地に検査した。
検査したところ、同支店は、21年3月に初回申込みがあった建設業を創業したとする個人に対して、その借入申込みに関する書類等が偽装申込3事案の具体例と多くの点で同一の内容となっているなど酷似していたにもかかわらず、その審査時に、通達で示された上記の具体例との照合を行うことなく、企業実在に疑義を持たないまま、同年4月に、材料仕入れ、諸経費等の支払に必要な運転資金として事業資金5,000,000円(年利率3.95%、貸付期間 4年11か月)を無担保・無保証で貸し付けていた。
したがって、本件貸付金5,000,000円は、貸付時の審査における具体的な対応が通達により指示されているにもかかわらず、その対応をせずに貸付けの対象とならない不正な借入申込者に貸し付けられたものであり、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同支店において、偽装申込3事案に対する認識及び類似事案への対応の徹底が十分でなく、審査が適切に行われなかったことなどによると認められる。