科目 | 給与等 | |
部局等 | 日本銀行本店 | |
通勤手当の概要 | 職員のうち通勤のため公共交通機関を常時利用しその運賃を負担する者等に支給するもの | |
本店及び全国32 支店の職員に対して支給した通勤手当の額 | 13億0464万余円 | (平成20、21両事業年度) |
事業年度中にバス等の通勤経路に変更がなかった職員に対するバス等の利用に係る通勤手当の要支給額 | 2億4806万余円 | (平成20、21両事業年度) |
上記の要支給額と割引後の要支給額との開差額 | 3350万円 |
日本銀行は、「給与準則および同取扱要項」(昭和32年人第249号)に基づき、職員に定例給与、諸手当等を支給している。諸手当のうち通勤手当は、通勤手当支給規程(昭和51年文第168号)及び通勤手当支給規程取扱要項(昭和51年文第169号。以下、これらを合わせて「規程等」という。)に基づき、職員のうち通勤のため公共交通機関を常時利用しその運賃を負担する者等に支給することとなっている。
規程等によると、通勤手当は、支給額(6か月分)を、年2回定例給与と合算して支給することとなっており、このうちバス等(路面電車を含む。以下同じ。)の公共交通機関を利用する場合(以下、この場合の通勤手当を「バス等通勤手当」という。)の支給額は、次のように算定することとなっている。
往復運賃(片道運賃×2)×支給開始日から6か月間の日本銀行の営業日数
また、通勤手当の支給事由が消滅した場合は、その職員は、当該手当の未使用期間について算定した払戻し相当額等を返納することとなっている。
日本銀行は、平成11年12月に、事務の合理化・効率化を行うため、運賃計算等のパッケージソフトを導入し、通勤手当の支給額算定事務を本店で集中処理することとした。この際、バス等通勤手当の支給額の算定については、原則として定期券代により支給額を算定するそれまでの方法から前記の方法に変更したが、日本銀行はその理由を次のとおりとしている。
ア バス事業者等によっては、定期券に係る運賃の割引率が低いため、定期券代が前記の方法で算出した額より割高になる場合や定期券を中途解約したときの払戻し額が大きく減額される場合があること
イ バス等については、全国のバス事業者等の運賃等の割引率の情報を網羅しているパッケージソフト等がなく、ホームページを開設して運賃の割引状況等の情報を提供しているバス事業者等が少なかったことなどから、本店において、当該情報を効率的に把握することが極めて困難であること
本院は、日本銀行が本店及び全国の32支店(国内事務所を含む。以下同じ。)の職員に対して20、21両事業年度に支給した通勤手当13億0464万余円について、経済性等の観点から、バス等通勤手当の支給額の算定方法が経済的かつ合理的なものとなっているかなどに着眼して、本店及び14支店(注1) において、通勤手当申請書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、日本銀行の本店及び全国の32支店の職員のうち、通勤のためバス等を利用する職員(以下「バス等利用職員」という。)で上記の各事業年度を支給対象期間として当該各事業年度中に通勤経路の変更がなかったバス等利用職員(20事業年度1,081人、21事業年度1,063人)について、規程等に定められた算出方法によるバス等通勤手当の要支給額は計2億4806万余円となっていた。
しかし、本院が、インターネット等により、バス事業者等のホームページ等を調査して把握したバス等の回数乗車券等及び定期券による運賃の割引状況等が、20、21両事業年度においても22年3月末時点と同様であるとすれば、上記のバス等利用職員ごとに、回数乗車券等による割引後の片道運賃(注2)
を基にした金額と定期券代を基にした金額のうち、より経済的な金額を集計すると、20、21両事業年度の要支給額は計2億1456万余円となり、前記の要支給額2億4806万余円と3350万余円の開差が認められた(開差が生じたバス等利用職員は20事業年度1,079人、21事業年度1,059人)。
このように、バス事業者等のホームページ等から運賃の割引状況等を把握することが容易になっているなどの近年の状況下において、回数乗車券等及び定期券による運賃の割引状況等を勘案せずに、多数のバス等利用職員に対して通常の片道運賃を基にバス等通勤手当を算出し支給している事態は、運賃の割引状況等の確認等に伴う事務量の増加等を考慮したとしても適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、日本銀行において、運賃の割引状況等を容易に把握することが可能となっているにもかかわらず、より経済的な支給額の算定方法の検討を適時に行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本銀行は、22年4月に規程等を改正して、同年6月以降に支給する分から、バス等通勤手当を割引後の運賃等を基に算出して支給することとする処置を講じた。