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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 東京地下鉄株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

軌道面清掃等契約に係る委託費の積算に当たり、運転手及び作業員の職種を作業の内容等に応じて適切に選定することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの


軌道面清掃等契約に係る委託費の積算に当たり、運転手及び作業員の職種を作業の内容等に応じて適切に選定することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの

科目 鉄道事業営業費
部局等 東京地下鉄株式会社本社
契約名 銀座線ほか3線軌道面清掃その他業務委託契約等6契約
契約の概要 高圧洗浄車を使用して軌道面の汚れ等を高圧の水流で除去する方法で清掃するなどの作業を行わせるもの
契約の相手方 日本ハイウエイ・サービス株式会社、管清工業株式会社
契約 平成19年1月、20年3月、21年3月 見積合わせ競争契約
委託費 6億0320万余円 (平成19年度〜21年度)  
節減できた委託費 3630万円 (平成19年度〜21年度)  

1 委託契約の概要

(1) 軌道面清掃等業務委託契約の概要

 東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」という。)は、地下駅構内の軌道面を美化することによって地下鉄の快適な利用に資することなどを目的として、高圧洗浄車を使用して軌道面の汚れ等を高圧の水流で除去する方法で清掃するなどの業務(以下「軌道面清掃等業務」という。)を実施している(参考図参照 )。
 東京メトロは、軌道面清掃等業務を委託するに当たり、年間の業務量を考慮して、毎年度、2契約に分割して発注しており、平成19、20、21各年度に、見積合わせ競争契約により、日本ハイウエイ・サービス株式会社及び管清工業株式会社との間で、それぞれ軌道面清掃等業務に係る委託契約(以下「軌道面清掃等契約」という。)を単価(軌道面延長1m当たり等)契約で締結して軌道面清掃等業務を行わせている。軌道面清掃等契約に係る契約件数及び委託費の支払額は、19年度2件、1億9620万余円、20年度2件、2億0759万余円、21年度(22年1月27日までに履行された業務に係る分。以下同じ。)2件、1億9940万余円、計6件、6億0320万余円となっている。

(2) 委託費の積算

 東京メトロは、軌道面清掃等契約を締結するに当たり、軌道面清掃等業務に従事する運転手、作業員等の労務費に機械損料、材料費、諸経費等を加えるなどして委託費を積算している。そして、このうち運転手、作業員等の労務費については、毎年度農林水産省及び国土交通省が決定して公表している「公共工事設計労務単価(基準額)」(以下「公共工事設計労務単価」という。)に定められた職種ごとの労務単価を基にするなどして算定している。
 公共工事設計労務単価によれば、作業内容に応じて、運転手は「運転手(特殊)」及び「運転手(一般)」に、また、作業員は「特殊作業員」、「普通作業員」及び「軽作業員」にそれぞれ区分されており、これらの職種の定義・作業内容は、おおむね次表のとおりとなっている。

 公共工事設計労務単価における職種の定義・作業内容

職種 定義・作業内容
運転手 運転手(特殊) 重機械(主として道路交通法(昭和35年法律第105号)第84条に規定する大型特殊自動車免許又は労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第61条第1項に規定する免許、資格若しくは技能講習の修了を必要とし、運転及び操作に熟練を要するもの(機械重量3t以上のブルドーザ等))の運転及び操作について相当程度の技能を有して、主として重機械を運転又は操作して作業の主体的業務を行うもの
運転手(一般) 道路交通法第84条に規定する運転免許(大型自動車免許、普通自動車免許等)を有して、主として機械(貨物自動車、路面清掃車(4輪式)等)を運転又は操作して作業の主体的業務を行うもの
作業員 特殊作業員 相当程度の技能及び高度の肉体的条件を有して、主として軽機械(機械重量3t未満のブルドーザ等)を運転又は操作して行う土砂等の掘削、積込み又は運搬、人力による合材の敷均し及び舗装面の仕上げ等の各種作業の主体的業務を行うもの
普通作業員 普通の技能及び肉体的条件を有して、主として人力による土砂等の掘削、積込み、運搬、敷均し等の各種作業を行うもの
軽作業員 主として人力による軽易な清掃、後片付け等の各種作業を行うもの

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 東京メトロは、軌道面清掃等業務を地下鉄の重要な保守管理業務の一つと位置付けて実施しており、その委託費は毎年度多額に上っている。
 そこで、本院は、経済性等の観点から、軌道面清掃等契約に係る委託費の積算は作業の内容等に適合した適切なものとなっているかなどに着眼して、東京メトロにおいて、19、20、21各年度の前記軌道面清掃等契約計6件を対象に、契約書、積算書、委託業務完了届等の書類を確認するとともに、作業現場に赴いて軌道面清掃等業務の実施状況等を把握するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、東京メトロは、委託費の積算に当たり、高圧洗浄車の運転手については「運転手(特殊)」、高圧で散水して洗浄するためのノズルの操作等を行う作業員(以下「ノズル作業員」という。)については「特殊作業員」、ノズル作業員の補助等を行う者(以下「補助作業員」という。)については「普通作業員」の職種をそれぞれ適用していた。
 しかし、実際の作業の内容等からみて、これらの職種の適用は、次のとおり適切でないと認められた。

(1) 高圧洗浄車の運転手について

 高圧洗浄車の運転手は、貨物自動車の車台上に高圧洗浄機を装備した車両である高圧洗浄車を作業現場付近の路上まで運転するとともに、軌道面清掃等業務の実施中には、路上で高圧洗浄機の操作等を行っているが、この高圧洗浄車は、道路交通法等に規定する大型特殊自動車には該当しないことから、高圧洗浄車を道路上で運転するには大型特殊自動車免許を有している必要はなく、大型自動車免許等を有していれば足りる。また、高圧洗浄機の操作等については、労働安全衛生法上、免許、資格又は技能講習の修了は必要とされていない。
 したがって、高圧洗浄車の運転手については、前記の表の職種の定義・作業内容によれば「運転手(特殊)」とする必要はなく、「運転手(一般)」とすれば足りると認められた。

(2) ノズル作業員について

 ノズル作業員は、ノズルの先端部から高圧で噴出する水を軌道面に向けて散水して洗浄するなどしているが、この作業は、前記の表の軽機械を運転又は操作して行うなどの作業には該当しない。また、相当程度の技能及び高度の肉体的条件を有することを必要とせず、普通の技能及び肉体的条件を有していれば行うことができるものである。
 したがって、ノズル作業員については、「特殊作業員」とする必要はなく、「普通作業員」とすれば足りると認められた。

(3) 補助作業員について

 補助作業員は、高圧洗浄機とノズルをつなぐホースの動きを抑えたり、高圧洗浄に付帯するその他の簡易な作業を行ったりなどしているが、この作業は、前記の表の土砂等の掘削等の作業には該当しないものであり、人力による軽易な作業であると認められた。
 したがって、補助作業員については、「普通作業員」とする必要はなく、「軽作業員」とすれば足りると認められた。
 現に、同種作業を委託して実施している他の団体においては、高圧洗浄車の運転手は「運転手(一般)」として積算したり、ノズル作業員は「普通作業員」として積算したりしている状況であった。
 以上のように、軌道面清掃等契約に係る委託費の積算に当たり、作業の内容等を十分考慮せずに職種を適用している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(節減できた委託費)

 上記のことから、前記の軌道面清掃等契約6件について、作業の内容等に適合した職種により委託費を修正計算すると、19年度1億8551万余円、20年度1億9448万余円、21年度1億8682万余円、計5億6682万余円となり、前記の委託費計6億0320万余円を約3630万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、東京メトロにおいて、作業の内容等に適合した職種に基づいて軌道面清掃等契約に係る委託費の積算を行うことについての検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、東京メトロは、22年1月25日に関係部署に通知を発して、軌道面清掃等契約に係る委託費の積算に当たっては、作業の内容等に適合した職種を適用することとし、同月28日に21年度の契約を変更して、同日以降の履行分から適用する処置を講じた。

(参考図)

軌道面清掃等業務の概念図
軌道面清掃等業務の概念図