成田国際空港株式会社(以下「成田会社」という。)は、平成16事業年度に、保有する代替地用地のうち時価が著しく下落した地区について、固定資産の減損に係る会計基準及び同基準の適用指針(以下「減損基準等」という。)に基づいて減損処理を行っている。そして、減損基準等によれば、重要性が乏しい不動産に該当しない不動産の回収可能価額の算定は鑑定評価額によることとなっている。しかし、成田会社は、市街化区域以外にある代替地用地等12地区について、帳簿価額が高額であることから、その減損額は当期純利益の額に重要な影響を与えるなどしているのに、市場性が低いことをもって重要性が乏しい不動産に該当するものと判断したなどとして、鑑定評価を行うことなく固定資産税評価額により回収可能価額を算定していて、減損基準等の趣旨に沿った減損処理を行っていないと認められる事態が見受けられた。
したがって、成田会社において、回収可能価額の算定を減損基準等の趣旨に沿って行うよう、成田国際空港株式会社代表取締役社長に対して21年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、成田会社本社において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、成田会社は、本院指摘の趣旨に沿い、22年2月に「代替地の減損処理に係る運用基準」を制定して資産の重要性の判断基準を明確にするなどして、減損基準等の趣旨に沿った合理的な回収可能価額の算定を行うこととする処置を講じていた。