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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 全国健康保険協会|
  • 不当事項|
  • 役務

健康保険被保険者証のカードケースの作成契約において、納品検査が適正でなかったため、誤植があるカードケースを受領して代金を支払ったり、カードケースの再発送等のために追加費用を支払う結果となったりしていたもの


(835) 健康保険被保険者証のカードケースの作成契約において、納品検査が適正でなかったため、誤植があるカードケースを受領して代金を支払ったり、カードケースの再発送等のために追加費用を支払う結果となったりしていたもの

科目 (健康保険勘定)業務経費
部局等 全国健康保険協会本部
契約名 (1) 健康保険被保険者証一括更新にかかるカードケースの作成業務(平成21年度)
(2) カードケースの送付に係る宛名ラベルの作成・封入・仕分作業等15契約(平成21年度)
契約の概要 (1) 健康保険被保険者証を1 枚ずつ収納しそれを発送する際の梱包材を兼ねて使用するカードケースの作成業務を行わせるもの
(2) カードケースの再発送業務を行わせるものなど
支払の相手方 (1) 日本ユニシス・サプライ株式会社
(2) 14会社
契約 (1) 平成21年4月 一般競争契約
(2) 平成21年7月ほか 一般競争契約及び随意契約
契約額 (1)   19,785,150円 (平成21年度)
(2)   103,758,411円 (平成21年度)
  123,543,561円  
不当と認める支払額 (1) 誤植があったカードケースに対する支払額 6,461,349円 (平成21年度)
(2) カードケースの再発送費等の追加費用 103,441,461円 (平成21年度)
  109,902,810円  

1 委託契約の概要

 全国健康保険協会(以下「協会」という。)は、平成20年10月1日に、社会保険庁から健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく政府管掌健康保険事業を承継して、保険者として健康保険事業を運営している。
 そして、協会は、上記の業務承継に伴い国に替わって協会が保険者となるため、健康保険被保険者証(以下「保険証」という。)を切り替える必要が生じたことから、21年6月から10月までの間に、すべての保険証を一括で更新して順次事業所に発送し、事業所が被保険者に保険証を配布している。
 協会は、上記保険証の発送に必要なカードケース(注) 3300万枚の作成業務を、21年4月に一般競争契約により、日本ユニシス・サプライ株式会社(以下「作成業者」という。)に契約額19,785,150円で委託している。また、協会は、保険証をカードケースに挿入してこれを事業所ごとに分けて封筒に封入する業務等を別の業者(以下、この業務等を行う業者を「封入業者」という。)に委託しており、本件カードケースについては作成業者から封入業者に6回に分けて直接納品させることとしていた。

 カードケース 保険証の表面に印字されている被保険者等の氏名等が摩耗するのを防止するための梱包材を兼ねているもので、縦9.9cm、横7.6cmの紙製の台紙に保険証を1枚収納できるポケット様のフィルムが貼(は)り付けられていて、表面に保険証の臓器提供意思表示欄の記入についての注意事項、裏面に保険証の取扱いについて注意事項がそれぞれ印字されている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 協会が発送したカードケースに印刷された臓器移植に関する問い合わせ先について、正しくは「(社)日本臓器移植ネットワーク」とすべきところを「(株)日本臓器移植ネットワーク」とする誤植があったことが、21年6月に外部からの通報によって判明したため、協会は、誤植があるまま事業所に発送していたカードケース約295万枚を作成し直した上で再発送することを公表した。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、前記のカードケース作成業務契約における納品検査が適正に実施されているかなどに着眼して、協会において、説明を聴取したり、契約書、仕様書等の関係書類を確認したりするなどして会計実地検査を行った。

(2)検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 協会では、一般に、印刷を伴う業務委託契約の納品検査を行うに当たっては、印刷前に受託業者から校正原稿を提出させ、その印刷内容を複数人で確認することにしている。また、納品の際には、全国健康保険協会会計規程(平成20年規程第38号)等に基づき、給付の完了の確認をするため契約書、仕様書その他関係書類により検査を行い、その結果、給付が契約の内容に適合しないものであるときは、その旨及びその対応措置についての意見を検査調書に記載することとしている。そして、本件カードケース作成業務についても、仕様書において、作成業者は、カードケースの校正原稿を作成して協会に提出し、また、カードケースの完成品を封入業者に納品する際には、そのサンプル品を協会に提出することとされていた。
 しかし、協会では、作成業者から提出された校正原稿の印刷内容の確認や納品の際のサンプル品の検査を担当者が単独で行うなどしていて、誤植を見過ごして、21年6月に契約書、仕様書に定められたとおりに納品された旨の検査調書を作成していた。
 この結果、協会は、誤植が判明した時点で既に納品されていた第2回納品分までの1077万7000枚を受領して代金6,461,349円を支払っていた。
 そして、協会は、この誤植が前記の社団法人が営利目的で臓器移植を行っているとの誤解を生じさせ、適正な移植医療の推進を阻害する状況を招来しかねないとして、誤植が判明した時点で封筒に封入されていたものについては、開封して保険証を正しい表記のカードケースに挿入し直した上で再度封入したり、事業所に発送済みとなっていたものについては正しい表記のカードケースを再発送したりするなどの業務を封入業者等14会社に委託するなどして、これらに係る費用計103,441,461円を当初予定していた保険証等の発送にかかる費用とは別に支払っていた。
 したがって、協会において、誤植を見過ごしたままカードケースを受領して代金6,461,349円を支払ったり、納品検査を適正に行っていれば必要がなかったカードケースの再発送等に103,441,461円の追加費用を支払う結果となったりしていたことは適切でなく、計109,902,810円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、協会において、作成業者が提出した校正原稿やサンプル品に誤植があったのに、これに対する納品検査が適正を欠いていたことなどによると認められる。