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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第15 独立行政法人国立印刷局|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

会議録の製造請負契約において、経済的な印刷方式の普及状況や折り作業の実態を反映した単価を適用することにより、予定価格の算定を適切なものとするよう改善させたもの


会議録の製造請負契約において、経済的な印刷方式の普及状況や折り作業の実態を反映した単価を適用することにより、予定価格の算定を適切なものとするよう改善させたもの

科目 外注加工費
部局等 独立行政法人国立印刷局本局
契約名 速記録製造加工請負契約
契約の概要 国会の委員会会議録の印刷物を製造するもの
契約の相手方 株式会社朝陽会、株式会社山越、株式会社トーコー印刷、中和印刷株式会社、蔦友印刷株式会社、株式会社光文社及び朝日印刷工業株式会社
契約 平成20年3月、21年3月 企画競争による随意契約
積算額 6億7064万余円 (平成20、21両年度)
低減できた積算額 6090万円 (平成20、21両年度)

1 契約の概要

(1) 会議録の製造請負契約の概要

 独立行政法人国立印刷局(以下「印刷局」という。)は、国会からの委託を受けて、国会の委員会会議録(以下「会議録」という。)を印刷局虎の門工場国会分工場で製造しているが、同時期に製造業務が集中し印刷局のみでは対応できない場合には、外部の印刷事業者と契約を締結して会議録の製造業務の一部(以下「製造業務」という。)を請け負わせることとしている。
 製造業務は、印刷局が貸与する会議録の印刷原稿を基に、データ作成、編集、校正、印刷出力、刷版、印刷、製本・諸加工等を行い、製品としての印刷物を納入させるものである。また、製品の仕様は、仕様書において、印刷原稿の種類及び納期によって「普通」「特急」「手書」の3種類に区分されており、会議録1部当たりの標準のページ数は、平成21年度の普通、特急両仕様がA4判で24ページ、手書仕様が同12ページとなっている。
 そして、印刷局は、製造業務を請け負わせるに当たり、印刷物1枚(A4判2ページ)当たりの単価を各仕様ごとに定めた単価契約によることとしていて、20、21両年度は、印刷事業者7社と計14件の単価契約を締結している。

(2) 予定価格の算定方法について

 印刷局は、製造業務に係る請負契約の予定価格の算定に当たり、会議録1号分の標準的な製造部数(以下「標準部数」という。)が1,220部であることから、この部数を基に、刊行物である積算参考資料等に基づき算出した製版費、印刷費及び製本費を合計し、この金額に諸経費及び材料費を加えることにより算定していた。
 そして、製版費のうち印刷出力、刷版両工程に要する費用については、編集及び校正が終了したデータをいったんフィルムに出力し、フィルムをプレセンシタイズ・プレート(注) (以下「PS版」という。)に焼き付け印刷用刷版を作成する方式(以下「フィルム製版方式」という。)によることとして金額を算出していた。
 また、製本費のうち、刷り上がったA3判の紙(以下「刷本」という。)を二つ折りにしてA4判にする作業(以下「折り作業」という。)に要する費用については、刷本が1,220枚単位で作成されるものであることから、この1,220枚ごとに折り作業を行うものとして金額を算出していた。
 印刷局は、上記のとおり会議録1号分の製造に要する費用を算出した上で、この費用を標準部数である1,220部で除し、更に各仕様ごとに定めた会議録1部当たりの印刷物の標準的な枚数(21年度では12枚又は6枚)で除することにより、前記の印刷物1枚当たりの単価を算出していた。そして、この単価に各仕様ごとの発注予定枚数を乗じて得た金額を合計するなどして、予定価格を20年度は4億1320万余円、21年度は2億5744万余円と算定していた。

 プレセンシタイズ・プレート アルミ板に感光性樹脂が塗布されている版材

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、印刷局本局において、経済性等の観点から、予定価格の算定が作業の実態を反映したものとなっているかなどに着眼して、前記14件の会議録の製造請負契約について、契約書、予定価格調書等の書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 製版費について

 積算参考資料には、製版費のうち、印刷出力、刷版両工程に要する費用について、前記のフィルム製版方式の費用のほかに、コンピュータ・トゥ・プレート方式(以下「CTP版方式」という。)の費用が掲載されている。CTP版方式は、編集及び校正が終了した電子データをフィルムに出力することなく、PS版に直接出力することから、データをフィルムに出力する工程が不要であり、フィルム製版方式に比較して、経済的(21年度の普通仕様の印刷物1枚当たりでは0.98円の減)となる。印刷局は、過去の実績から契約の相手方は中小規模の印刷事業者であり、設備投資の面から中小規模の印刷事業者にはCTP版方式が普及していないと判断し、フィルム製版方式によることとして費用を算出していた。
 しかし、CTP版方式は、現在、中小規模の印刷事業者も含め一般に普及していると認められるものであり、現に本件契約の契約相手方である7社から提出されている作業工程表等においても、5社はCTP版方式により作業を行うとしていた。

(2) 製本費について

 積算参考資料には、製本費に含まれる製本・諸加工の工程のうち折り作業に要する費用について、折り作業を行う紙の枚数に応じた単価表が掲載されており、折り作業をまとめて行う枚数が増加すれば、1枚当たりの折り作業に要する費用は低減することになっている。そして、印刷局は、前記のとおり、刷本1,220枚ごとに折り作業を行うものとして、上記の単価表における1,000枚以上2,000枚未満の単価(21年度では2.62円/枚)を採用し、これにより折り作業の費用を算出していた。
 しかし、刷本は会議録1号分がまとめて印刷され、その判型、紙質等は同一であることから、折り作業も標準部数に会議録1部当たりの刷本の枚数(21年度は6枚又は3枚)を乗じた会議録1号分の刷本の総枚数(21年度は7,320枚又は3,660枚)ごとに行うのが通例であり、現に本件契約の契約相手方である7社における折り作業は、会議録1号分の刷本の総枚数をまとめて行っていた。したがって、会議録1号分の刷本の総枚数に応じた単価(21年度では1.10円/枚又は1.35円/枚)を採用すべきであった。
 このように、印刷局が、会議録の製造請負契約の予定価格の算定に当たり、印刷出力、刷版両工程についてフィルム製版方式によることとして費用を算出したり、折り作業について刷本の総枚数でなく1,220枚に応じた単価を採用して費用を算出したりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記のとおり、本件契約の予定価格を印刷出力、刷版両工程に要する費用についてCTP版方式によることとし、折り作業に要する費用について会議録1号分の刷本の総枚数に応じた単価を採用して修正計算すると、諸経費対象額に材料費を含めていなかったことなどによる積算過小を考慮しても、20年度は3億7289万余円、21年度は2億3675万余円となり、印刷局が算定していた予定価格、20年度4億1320万余円、21年度2億5744万余円をそれぞれ4030万余円、2068万余円、計約6090万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、印刷局において、経済的な印刷方式の普及状況や印刷事業者が行う折り作業の実態を十分に把握していなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、印刷局は22年9月以降に締結される会議録の製造請負契約の予定価格の算定に当たっては、製版費の算出についてはCTP版方式によることとし、折り作業に要する費用の算出については会議録1号分の刷本の総枚数に応じた単価を採用することにより、予定価格の算定を適切に行うこととする処置を講じた。