産業動物(注1) 獣医師修学資金給付事業(平成15年8月18日以前は産業動物獣医師確保特別修学資金給付事業)は、機構が、産業動物獣医師修学資金給付事業実施要綱(平成15年15農畜機第48号。以下「実施要綱」という。)等に基づき、社団法人中央畜産会(以下「中央畜産会」という。)が、産業動物獣医師修学資金(以下「修学資金」という。)を給付する事業(以下「給付事業」という。)を行うのに要する経費を補助する事業等に充てるため産業動物獣医師修学資金基金(注2) を造成する事業に対して、これに必要な費用の全額を補助するものである。
(注1) | 産業動物 畜産農業において扱っている牛、豚、鶏等の動物
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(注2) | 産業動物獣医師修学資金基金 この基金は平成21年度末に閉鎖され、22年度からは基金を造成せず機構の補助により事業を継続している。
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上記の中央畜産会が実施している、給付事業を行うのに要する経費を補助する事業は、一般社団法人又は一般財団法人であって都道府県知事が適当と認める団体(以下「県団体」という。)が、地域における産業動物獣医師の確保を図るため、修学資金の給付に関する契約を締結した者(以下「受給者」という。)に対し月額10万円以内の修学資金を給付する給付事業に要する経費の2分の1以内の補助金を交付するものである。また、修学資金の給付を受けることができる者は、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学において獣医学を専攻する学生であって、産業動物の診療業務に従事しようとする者とされている。
そして、受給者は、獣医師免許を取得後、診療施設等に就業した際に産業動物診療業務就業届(以下「就業届」という。)を、また、就業後は修学資金給付期間の2分の3の期間に達するまで毎年度末に産業動物診療業務従事状況届(以下「従事状況届」という。)を、それぞれ県団体に提出することとされている。また、受給者が獣医師免許を取得後、実施要綱等で定められた期間以内に診療施設等で産業動物の診療業務に従事しなかった場合や、従事した期間が修学資金給付期間の2分の3の期間に満たなかった場合などには、給付した修学資金を返還させることとされている。
本院が、機構、中央畜産会及び2事業主体(県団体)において会計実地検査を行ったところ、1事業主体において次のような事態が見受けられた。
補助事業者 | 間接補助事業者 | 補助事業 | 年度 | 事業費 | 左に対する機構の補助金相当額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める機構の補助金相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(838) | 社団法人中央畜産会 | 社団法人熊本県畜産協会 (事業主体) |
産業動物獣医師修学資金給付 | 10〜18 | 25,200 | 12,600 | 12,000 | 6,000 |
社団法人熊本県畜産協会(平成15年6月30日以前は社団法人熊本県畜産会。以下「熊本県畜産協会」という。)は、10年度から18年度までに6名に対して計25,200,000円の修学資金の給付を行っていた。
しかし、上記6名のうち2名は、16年4月及び19年4月にそれぞれ獣医師免許取得後、熊本県内の産業動物の診療施設に就業し、引き続き同施設において診療業務に従事しているとして就業届や従事状況届を熊本県畜産協会へ提出していたが、実際には、産業動物の診療業務とは関係のない東京都内の動物看護士等養成専門学校やペットの診療施設に就業していた。
したがって、熊本県畜産協会がこれら2名に給付した修学資金計12,000,000円は返還させる必要があるのに、これを返還させていなかったことは適切でなく、この修学資金に対して中央畜産会が交付した補助金相当額計6,000,000円に係る機構の補助金相当額計6,000,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、受給者において、本事業の趣旨や内容等の認識が十分でなく、適正な届出を行うなどの誠実な対応を執っていなかったこと、熊本県畜産協会において、本事業の趣旨や内容等の周知及び就業届等の記載内容の確認が十分でなかったこと、中央畜産会において、本事業の実施に係る審査確認及び熊本県畜産協会に対する指導が十分でなかったこと、機構において、中央畜産会に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。