肉用牛繁殖基盤強化総合対策事業(平成16年度から18年度までは地域肉用牛振興対策事業、15年度以前は肉用牛生産基盤安定化支援対策事業)は、肉用牛繁殖基盤強化総合対策事業実施要綱(平成19年19農畜機第323号)等に基づき、社団法人全国肉用牛振興基金協会(16年3月31日以前は社団法人全国肉用牛協会。以下「全国協会」という。)が、肉用牛ヘルパー活動推進事業(15年度は肉用牛ヘルパー組織支援対策事業。以下「ヘルパー事業」という。)を行うのに必要な資金に充てるための基金を造成する事業等に対して、これに必要な費用の全額を機構が補助するものである。
ヘルパー事業は、肉用牛生産の労働負担の軽減を図るために、民法法人等であって都道府県の区域ごとに都道府県知事が適当と認める団体(以下「指定団体」という。)が、肉用牛生産者の互助組織として設立された肉用牛ヘルパー利用組合が諸活動を実施するのに要する経費について、その2分の1以内の額の補助金を交付するものである。そして、全国協会は、機構が交付した補助金により造成した基金を取り崩して、指定団体が交付した補助金の額と同額を補助している。
本院が、機構及び5事業主体において会計実地検査を行ったところ、1事業主体において次のような事態が見受けられた。
補助事業者 | 間接補助事業者 | 補助事業 | 年度 | 事業費 | 左に対する機構の補助金相当額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める機構の補助金相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(839) | 社団法人全国肉用牛振興基金協会 | 社団法人鹿児島県畜産協会十島村肉用牛ヘルパー組合 (事業主体) |
肉用牛ヘルパー活動推進 | 15〜19 | 13,061 | 6,530 | 6,099 | 3,049 |
十島村肉用牛ヘルパー組合(以下「ヘルパー組合」という。)は、平成15年度から19年度までの間に、肉用牛ヘルパー(以下「ヘルパー」という。)に対する賃金の支払や会議の開催等に計13,061,170円の事業費を要したとして、指定団体である社団法人鹿児島県畜産協会(15年6月30日以前は社団法人鹿児島県畜産会。以下「県協会」という。)に実績報告書を提出し、これにより県協会から補助金計6,530,585円の交付を受けていた。そして、ヘルパー組合は、上記事業費の算定に当たり、組合員が鹿てい児島中央家畜市場(以下「家畜市場」という。)で開催される競り市へ子牛を出荷する際に、〔1〕削蹄(てい)(注) 、〔2〕家 畜市場への搬入・管理、〔3〕家畜市場への上場・引渡しの各作業をヘルパーが代行した場合、ヘルパー組合制定の規約(以下「規約」という。)に基づき、1頭当たり〔1〕の作業に1,000円、〔2〕の作業に1,500円(19年度のみ1,000円)、の〔3〕作業に2,000円の賃金をヘルパーに支払ったとして、この1頭当たりの賃金の単価に出荷頭数を乗じてヘルパーに対する賃金の支払額を算定するなどしていた。また、ヘルパー組合の経理は規約に基づいて十島村職員が行っていた。
しかし、ヘルパー組合は、実際には、ヘルパーに支払う賃金の単価を、削蹄作業については規約よりも低額な1頭当たり500円としたり、家畜市場への搬入・管理及び上場・引渡し作業については出荷頭数によらずに競り市に参加した生産者1人につき1日当たり7,000円としたりするなどしており、ヘルパー組合が15年度から19年度までの間に実際に要した事業費は計6,961,500円にすぎなかった。
したがって、前記の事業費13,061,170円との差額計6,099,670円が過大に精算されており、これに係る県協会の補助金相当額計3,049,835円と同額の機構の補助金相当額計3,049,835円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、ヘルパー組合及びその経理を担当していた十島村職員において、事業の適正な執行に対する認識が十分でなかったこと、県協会において、本件補助事業の審査及び確認が十分でなかったこと、機構及び全国協会において、県協会に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。