科目 | (一般勘定) 経常費用 | |||
部局等 | 独立行政法人科学技術振興機構 | |||
契約名 | 独立行政法人科学技術振興機構保有知的財産管理業務ほか | |||
契約の概要 | 独立行政法人科学技術振興機構が保有する特許権の維持管理を行うもの | |||
契約の相手方 | (1) | 72国内特許事務所 | ||
(2) | 社団法人新技術協会 | |||
契約 | (1) | 平成19年4月ほか 随意契約 | ||
(2) | 平成19年4月〜22年3月 随意契約、一般競争契約 | |||
支払額 | (1) | 1億4654万余円 | (平成19年度〜21年度) | |
(2) | 7403万余円 | (平成19年度〜21年度) | ||
計 | 2億2057万余円 | |||
節減できた支払額 | (1) | 1847万円 | (平成19年度〜21年度) | |
(2) | 950万円 | (平成19年度〜21年度) | ||
計 | 2797万円 |
(平成22年10月28日付け 独立行政法人科学技術振興機構理事長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴機構は、独立行政法人科学技術振興機構法(平成14年法律第158号)に基づき、科学技術の振興を図ることを目的として、新技術の創出に資することとなる科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発等を行っている。そして、これらの研究開発活動の成果の一つとして国内及び外国において特許権を取得するとともに、その特許権の管理(以下「特許権管理業務」という。)を行っている。
貴機構は、自らが保有する外国で登録された特許権(以下「外国特許権」という。)に係る特許権管理業務のうち外国特許権を維持するために必要となる特許料の納付業務を国内特許事務所に委託し、又は社団法人新技術協会(以下「協会」という。)に請け負わせている。
外国特許権には、貴機構が単独で保有するものと、共同研究等において他の機関等と共同で取得して保有するものがある。そして、特許権を維持するために必要な特許料は、貴機構が単独で保有する場合には自らが納付し、共同で保有する場合にはあらかじめ共有者の間で契約等で定めた持分比率に応じ負担し、代表者が他の共有者から維持の要否の確認を取るとともに特許料を徴収して納付している。
このうち貴機構が単独で保有する外国特許権の維持管理に係る特許料等の平成19年度から21年度までの支払額は、国内特許事務所に対して1億4654万余円、協会に対して7403万余円、計2億2057万余円となっている。
特許権は、各国の特許法に基づき付与される属地主義が採られており、特許権者が特許権を維持するためには、特許権ごとに期限管理を行い、期限までに特許料を各国特許庁に納付する必要がある。しかし、特許権者が特許料を外国の特許庁に直接納付することは、国内の特許権の場合と異なり困難を伴うため、特許料の納付を弁理士等に手数料を支払うことにより委託することが一般的な取扱いとなっていた。そして、弁理士法(平成12年法律第49号)の全部改正に伴い、特許料の納付に係る手続が弁理士の独占業務でなくなったことにより、特許権者は、経費削減のために特許権管理業務を一元化し、特許料の納付を代行して行う業務(以下「代行納付業務」という。)を主力事業とする法人等(以下「代行法人」という。)に行わせることが増加するなど、外国だけでなく国内においても代行納付業務を取り巻くビジネス環境は変化してきている。
本院は、経済性等の観点から、貴機構の特許権管理業務について、単独で保有する外国特許権の特許料の納付に係る手数料の支払が経済的なものとなっているかなどに着眼して、貴機構本部において、契約書、支払伝票等の書類により会計実地検査を行った。
貴機構が単独で保有する外国特許権の代行納付業務の状況を検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 国内特許事務所への代行納付業務の委託について
貴機構は、外国への特許の出願を国内特許事務所に委託し、特許権の代行納付業務をその後も慣行的に当該国内特許事務所に委託しているが、国内特許事務所は当該業務を自ら行わず、外国特許事務所や代行法人に行わせていた。そこで、国内特許事務所からの手数料の請求の内訳をみたところ、国内特許事務所は外国特許事務所や代行法人の手数料に自らの手数料を加えて請求していて、代行法人に直接請け負わせた場合と比較して割高な手数料となっていた。
イ 協会との代行納付業務の請負について
貴機構は、外国への特許の出願を委託した国内特許事務所が代行納付業務を取り扱わなかった場合等には代行納付業務を一括して協会に請け負わせているが、協会は当該業務を自ら行わず、代行法人を下請けとして行わせていた。そこで、協会からの手数料の請求の内訳をみたところ、協会は代行法人の手数料に自らの手数料を加えて請求していて、代行法人に直接請け負わせた場合と比較して割高な手数料となっていた。
以上のことから、貴機構が国内特許事務所に委託したり、協会に請け負わせたりしている単独で保有する外国特許権の代行納付業務について、代行法人に直接請け負わせることとすれば、手数料を節減できると認められる。
したがって、国内特許事務所に委託している代行納付業務を代行法人に直接請け負わせることとして手数料を計算すると、19年度496万余円、20年度612万余円、21年度738万余円、計1847万余円が節減できたと認められる。また、協会に請け負わせている代行納付業務についても代行法人に直接請け負わせることとして手数料を計算すると、19年度358万余円、20年度313万余円、21年度277万余円、計950万余円が節減できたと認められ、合計で2797万余円が節減できたと認められる。
貴機構が単独で保有する外国特許権の代行納付業務について、国内特許事務所が当該業務を自ら行わず外国特許事務所や代行法人に再委託等していたり、協会が当該業務を自ら行わず代行法人を下請けとして行わせていたりしていることから、代行法人と直接契約を締結した場合と比較して割高な手数料を支払っている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴機構において、前記のような代行納付業務を取り巻くビジネス環境の変化への対応が十分でなかったことにもよるが、主として次のことによると認められる。
ア 外国への特許の出願を委託した国内特許事務所に引き続き代行納付業務を委託していることについて見直しを行うことなく、慣行的に国内特許事務所に委託していること
イ 国内特許事務所が代行納付業務を取り扱わなかった場合等に一括して請け負わせている協会の代行納付業務について、協会の業務実態を考慮しないまま請け負わせていること
貴機構は、研究開発活動に伴い、今後も引き続き代行納付業務を外部に発注することが見込まれる。
ついては、貴機構において、国内特許事務所に委託し、又は協会に請け負わせている単独で保有する外国特許権の代行納付業務について、代行法人と直接契約して手数料を節減するよう是正改善の処置を求める。