1 本院が要求した改善の処置
独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)は、経済的理由により修学に困難がある優れた学生等に学資を貸与している。しかし、学資の貸与を受けた者(以下「債務者」という。)の住所等を確実に把握していないために、延滞した割賦金の回収が適切に実施できていなかったり、返還期限猶予を機構に願い出れば承認される可能性のある債務者(以下「潜在的返還期限猶予対象者」という。)に対して返還期限猶予の願い出について十分指導できていなかったりなどしている事態が見受けられた。
したがって、機構において、住所不明者が判明した場合や連絡をとることができなくなった場合は債務者の連絡先を直ちに調査するなどの体制を整備するとともに、債務者の実情の調査及び潜在的返還期限猶予対象者の把握に努めるなどの体制を整備する処置を講ずるよう、独立行政法人日本学生支援機構理事長に対して平成21年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、機構において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、住所不明者が判明した場合や連絡をとることができなくなった場合について、21年12月までに、郵便物の返送等により住所不明であることが判明してから市町村に住所を照会するまでの過程における関連業務を機械化することなどにより住所調査に関する業務の迅速化を図って債務者の連絡先を直ちに調査したり、出身大学等に卒業後の債務者の住所等の管理状況等を報告させるなどして出身大学等との連携強化を図ったりするなどの体制を整備した。また、21年10月から民間への委託によりコールセンターを設置・運営して返還困難者の相談に対応したり、債務者に督促する機会を通じて返還期限猶予制度の周知を徹底したりするなどして、債務者の実情の調査及び潜在的返還期限猶予対象者の把握に努めるなどの体制を整備する処置を講じていた。