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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

国立大学法人が保有している未利用の土地や建物等について、当該資産を保有する合理的な理由の有無を検討して具体的な処分計画又は利用計画を策定するなどし、これにより資産の有効活用を図るよう改善の処置を要求したもの


(1)—(4) 国立大学法人が保有している未利用の土地や建物等について、当該資産を保有する合理的な理由の有無を検討して具体的な処分計画又は利用計画を策定するなどし、これにより資産の有効活用を図るよう改善の処置を要求したもの

科目 固定資産
部局等 (1) 国立大学法人東北大学
(2) 国立大学法人東京学芸大学
(3) 国立大学法人東京芸術大学
(4) 国立大学法人琉球大学
保有している土地及び建物の平成21年3月31日現在の帳簿価額 土地 (1) 1353億3763万余円
(2) 1489億8853万円
(3) 373億5680万円
(4) 127億4820万円
3344億3116万余円
建物 (1) 991億1745万余円
(2) 147億3179万余円
(3) 216億2989万余円
(4) 119億7775万余円
1474億5689万余円
上記のうち未利用の土地や建物等に係る帳簿価額 土地 (1) 45億2029万円
(2) 23億7332万円
(3) 33億1297万円
(4) 2億4883万円
104億5543万円
建物 (1) 689万円
(3) 3939万円
(4) 1697万円
6326万円
合計 (1) 45億2718万円
(2) 23億7332万円
(3) 33億5237万円
(4) 2億6580万円

 本院は、国立大学法人が、教育研究等の業務を確実に実施するために必要なものとして国から承継して保有している土地及び建物のうち、利用していない土地や建物等の処分及び有効活用について、平成22年10月19日に、国立大学法人東北大学、同東京学芸大学、同東京芸術大学及び同琉球大学(以下、これらを合わせて「4国立大学法人」という。)の各学長に対して、「保有している土地・建物の処分及び有効活用について」として、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
 これらの処置要求の内容は、4国立大学法人のそれぞれの検査結果に応じたものとなっているが、これを総括的に示すと以下のとおりである。

1 国立大学法人の保有資産の概要

(1) 国立大学法人の保有資産

 90国立大学法人(4大学共同利用機関法人を含む。以下同じ。)は、資産として、土地(キャンパス、演習林等。21年3月31日現在の帳簿価額計4兆8926億余円)及び建物(教育・研究施設等。同帳簿価額計2兆4152億余円)を保有しており、その大宗は、16年4月に国立大学法人が教育研究等の業務を確実に実施するために必要なものとして国から承継したものである。
 そして、国立大学法人は、毎事業年度国から交付される運営費交付金等を原資として、保有している土地や建物等の資産の維持管理を行っており、保有資産の維持管理に当たっては、管理規則を制定するなどして、保有資産の使用状況等を把握して適正な運用に努めるとともに、常に良好な状態を確保するよう維持・保全に留意し、保有資産が教育研究等の業務に必要がなくなったと認められるときは、売却等の処分を行うことができるなどとしている。

(2) 保有資産の処分

 国立大学法人の保有資産のうち国から承継した土地については、国立大学法人法(平成15年法律第112号)において、当該土地を処分したときは、売却収入の範囲内で文部科学大臣が定める基準により算定した額に相当する金額を独立行政法人国立大学財務・経営センター(以下「財経センター」という。)に納付すべき旨の条件を付して出資されたものとするとされており、国立大学法人は、原則として、当該土地の売却収入から建物の取壊し費用等を除いた額に100分の50を乗じて得た金額を財経センターに納付することとされている。
 そして、財経センターは、納付された資金を原資として、国立大学法人等を対象として、施設整備に必要な資金の交付を行っている。

(3) 保有資産の見直し

 経済財政改革の基本方針2007(平成19年6月閣議決定)において、独立行政法人における資産債務改革を独立行政法人改革及びその改革工程と整合性を取りつつ推進することとされており、国立大学法人についても、大学改革との整合性を取りながら同様に改革を推進することとされている。
 そして、国立大学法人の保有資産の見直しについては、「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」(平成21年6月文部科学大臣決定)において、国立大学法人は、効率的な法人運営を行うため、保有資産の不断の見直し及び不要とされた資産の処分に努めること、さらに、既存施設の有効活用、施設の計画的な維持管理の着実な実施等に努めることとされている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、効率性、有効性等の観点から、国立大学法人が保有している土地や建物が教育研究等の業務を確実に実施するという目的に沿って有効に活用されているか、利用していない土地について、売却等の処分計画や施設を整備した上での利用計画が策定されているかなどに着眼して、90国立大学法人のうち31国立大学法人において、31国立大学法人が21年3月31日現在で保有している土地及び建物を対象として、施設の配置図等の関係書類を検査するとともに、現地に赴き土地や建物の現況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 上記31国立大学法人のうち22年10月までに検査を完了した4国立大学法人(保有している土地(帳簿価額計3344億3116万余円)、建物(帳簿価額計1474億5689万余円))において、教育研究等の業務を確実に実施するために必要であるとして土地や建物を16年4月に国から承継してから5年を超えているのに、具体的な処分計画又は利用計画を策定しないまま有効に利用していない土地があるなどの適切でない事態が見受けられた。

(1) 国から承継して保有している土地を利用していないもの

 国から承継して保有している土地を利用していないものが、表1 のとおり、4国立大学法人において、計19件(敷地面積計346,859.0m 、帳簿価額計100億5181万余円)見受けられた。
 これらの事態を態様別にみると、〔1〕 国から校舎用地等を承継して保有しているものの、当該用地を売却するなどして処分したり、施設等を整備して有効に活用したりすることなく、雑木林地等のまま保有しているものが計15件(敷地面積計320,596.7m 、帳簿価額計78億6331万余円)、〔2〕 国から承継した職員宿舎等を取り壊して更地としたものの、当該更地を売却するなどして処分したり、施設等を整備して有効に活用したりすることなく保有しているものが計4件(敷地面積計26,262.3m 、帳簿価額計21億8850万余円)となっていた。
 また、態様〔1〕 の事態のうち1件については、利用していない職員宿舎用地(敷地面積1,477.0m 、帳簿価額6486万余円)が第三者によって駐車スペースとして不法に使用されていた。

表1
 保有している土地を利用していないもの

国立大学法人名 態様 件数 敷地面積 帳簿価額
東北大学 〔1〕
〔2〕
4
2
6
59,190.0m2
21,467.4m2
80,657.4m2
28億1587万余円
13億6597万余円
41億8185万余円
東京学芸大学 〔1〕
〔2〕
3
2
5
11,538.7m2
4,794.9m2
16,333.6m2
15億5079万余円
8億2253万円
23億7332万余円
東京芸術大学 〔1〕 1 137,698.0m2 32億4967万余円
琉球大学 〔1〕 7 112,170.0m2 2億4696万余円
計 4国立大学法人 〔1〕 計
〔2〕 計
合計
15
4
19
320,596.7m2
26,262.3m2
346,859.0m2
78億6331万余円
21億8850万余円
100億5181万余円

上記の事態のうち、態様〔1〕 について事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

 国立大学法人東京芸術大学は、国から取手団地(茨城県取手市)の土地(敷地面積164,095.4、帳簿価額3,872,700,000円)を承継して保有している。そして、文部科学省に対して同団地内の137,954.0m を整備予定地として報告している。
 同団地の土地は、上野団地(東京都台東区)が手狭になったことから、国立大学法人化前の国立東京芸術大学が、教育・研究環境の改善等を目的として、一部の学科等の全面移転等を計画し、昭和61年から63年にかけて取得等したものである。
 しかし、平成11年に取手団地を利用する美術学部の1学科が新設されたものの、計画していた一部の学科等の全面移転等は結局実施されなかった。このため、上記整備予定地のうち、石彫場、工房等として利用している256.0m を除く、残りの137,698.0m (帳簿価額3,249,672,800円)については、同団地の取得後20年以上経過しているにもかかわらず、具体的な施設等の整備計画が策定されないまま大半が雑木林地となっていた。

(2) 国から承継して保有している職員宿舎等を全く利用していなかったり、その利用が低調であったりしているもの

ア 国から承継して保有している職員宿舎を全く利用していないもの
 国から承継して保有している職員宿舎を、20事業年度までの3か年度以上にわたり全く利用していないものが、国立大学法人東北大学において、計2件(建物:延べ面積計103.0m 、帳簿価額計265万余円、土地:敷地面積計1,451.0m 、帳簿価額計5994万余円)見受けられた。
 これらの職員宿舎のうち、1件については入居できる職員が限定されていたため17年10月から、残りの1件については老朽化のため13年4月から、それぞれ入居する者がおらず、全く利用されていなかった。

イ 国から承継して保有している宿泊施設の利用が低調なもの

 国から承継して保有している宿泊施設で、その利用が低調なものが、表2 のとおり、3国立大学法人において、計3件(建物:延べ面積計1,609.8m 、帳簿価額計6060万余円、土地:敷地面積計18,551.8m 、帳簿価額計3億4367万余円)見受けられた。
 これらの宿泊施設は、各国立大学法人のすべての学生、教職員等が課外活動等に利用することができる施設であるが、利用者のニーズが変化したことなどにより、16事業年度から20事業年度までの間の各事業年度の施設稼働率(年間宿泊可能延べ人数に対する年間宿泊延べ人数の割合)が、毎事業年度それぞれ20%未満となっていた。

表2
 保有している宿泊施設の利用が低調なもの

国立大学法人名 件数 面積
上段:延べ面積
下段:敷地面積
帳簿価額
上段:建物
下段:土地
平成16事業年度から20事業年度までの間の各事業年度の施設稼働率
東北大学 1 301.0m2
2,731.1m2
423万余円
2億7850万円
9.2%〜18.7%
東京芸術大学 1 728.8m2
3,907.7m2
3939万余円
6330万円
8.9%〜11.6%
琉球大学 1 580.0m2
11,913.0m2
1697万余円
187万余円
8.9%〜11.6%
計 3国立大学法人 3 1,609.8m2
18,551.8m2
6060万余円
3億4367万余円
(注)
 施設稼働率は平成16事業年度から20事業年度までの間の最低値と最高値を示している。

 (改善を必要とする事態)

 4国立大学法人において、教育研究等の業務を確実に実施するために必要であるとして国から土地や建物を承継したものの、それぞれの事情や経緯があるなどとして、利用していない土地等や利用が低調である施設を、具体的な処分計画又は利用計画を策定しないまま保有している事態は、資産の有効活用の面から適切ではなく、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、4国立大学法人において、利用していない土地等や利用が低調となっている施設を保有しているのに、これらの資産について、将来利用する可能性があるなどとして、不断の見直しや、具体的な処分計画又は利用計画の策定を行っていないことなどによると認められる。

3 本院が要求した改善の処置

 国立大学法人については、前記のとおり、効率的な法人運営を行うため、保有資産の不断の見直し及び不要とされた資産の処分に努めること、さらに、既存施設の有効活用、施設の計画的な維持管理の着実な実施等に努めることが求められている。そして、国立大学法人が保有している土地や建物は、そのほとんどが国立大学法人化に伴って国から承継した資産であること、国立大学法人には、毎事業年度国から多額の運営費交付金が交付されており、これらの資産の維持管理に同交付金等を充てていることなどにかんがみると、国立大学法人においても、国の厳しい財政事情を考慮して、不要な資産については売却等の処分を着実に行うとともに、引き続き保有しようとする資産については一層の有効活用を図る取組が必要となっている。
 これらのことから、4国立大学法人に対して、前記の利用していない土地や建物等を今後も引き続き保有することについて合理的な理由が存在するか否かを検討して、当該土地等を保有することについて合理的な理由が存在しない場合には、当該土地等についての具体的な売却等の処分計画を策定し、合理的な理由が存在する場合には、具体的な当該土地等の利用計画を策定するなどして、当該資産の有効活用を図るよう改善の処置を要求する。