科目 | 管理費用 | |
部局等 | 本社、2管理局 | |
換気設備の概要 | トンネル利用者の安全で快適な通行及びトンネル内における各種の管理業務のための環境を確保することなどを目的として設置するもの | |
換気設備の運転に要した電力量料金 | 5415万余円 | (平成20、21両年度) |
上記のうち節減できた電力量料金 | 3679万円 |
首都高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)から借り受けた高速道路の維持管理業務の一環として、機構と締結した協定等に基づいて、トンネル内に設置している照明設備、換気設備等の各種設備の管理・運用を行っている。
このうち、換気設備は、「機械設備設計要領(トンネル換気設備編)」(平成21年6月制定。それ以前はトンネル換気設備設計要領等。以下「設計要領」という。)等に基づいて、トンネル利用者の安全で快適な通行及びトンネル内における各種の管理業務のための環境を確保することなどを目的として設置されている(参考図参照)
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会社は、上記の換気設備の設置目的を達成するのに必要なばい煙透過率(100m当たりの光の透過率)の設計値(高速道路の設計速度60km/h以下の場合は40%以上、同80km/h以上の場合は50%以上)及び一酸化炭素濃度の設計値(100ppm以下)が設計要領に定められていることから、ばい煙透過率及び一酸化炭素濃度を計測する機器をトンネル内に設置し、これによる計測を行っている。
そして、換気設備の運用を行っている西東京、東東京、神奈川各管理局は、これらの機器による計測値が上記の設計値の範囲内に自動的に収まるように換気設備の運転(以下、この運転を「計測制御運転」という。)が行われるよう設定しており、このうち西東京、神奈川両管理局では、ばい煙透過率が設計値に近づくことを未然に防ぐため、計測制御運転の設定に加えて、トンネル内の自然換気だけではばい煙透過率が設計値の範囲内に収まらなくなると見込まれる交通量が発生すると想定される時間帯(以下「ばい煙対策時間帯」という。)に換気設備が自動的に運転(以下、この運転を「定時運転」という。)されるように設定している。
高速道路の換気設備の運転は、高速道路の重要な管理業務であり、多額の電力量料金等の経費を要している。
一方、近年の自動車排出ガス規制等によって、自動車から排出されるばい煙等の換気対象物質は大幅に減少している。
そこで、本院は、経済性等の観点から、換気設備の運転が適切に行われ、電力量料金の節減が図られているかなどに着眼して、本社及び計測制御運転に加えて定時運転を行っている西東京、神奈川両管理局において会計実地検査を行った。そして、検査に当たっては、計測制御運転に加えて定時運転を行っている両管理局管内の9トンネルの換気設備(これらの運転に要した電力量料金20年度3038万余円、21年度2377万余円、計5415万余円)について、トンネル内、トンネル坑口周辺に設置されている受電所等に赴いて、換気設備の設置状況や運転時間等の運用状況を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、会社は、自動車から排出されるばい煙等の近年の大幅な減少に伴い、換気設備の能力の算定に用いる自動車1台当たりのばい煙排出量の数値を低減することなどを内容とするトンネル換気設計方法の変更についての通知(以下「変更通知」という。)を20年6月に発しており、この設計方法の変更によって供用中のトンネル内の換気設備の運用の見直しを図ることが可能となっていたのに、この変更通知を今後新規に設置する換気設備の設計にのみ適用することとして高速道路の新設等の業務を所掌する建設局に通知しただけで、高速道路の維持管理業務を所掌する管理局には通知していなかった。
そして、神奈川管理局においては16年度に、また、西東京管理局においては17年度にそれぞれ定時運転に係るばい煙対策時間帯の設定変更を行って以降、22年5月の会計実地検査時まで変更は行っていない状況であった。
そこで、会社が、上記の本院の検査結果を踏まえて、変更通知の内容に基づいて定時運転について再検討したところ、前記の9トンネルについては、自動車1台当たりのばい煙排出量の数値が低減することにより、ばい煙対策時間帯がなくなる結果となることから、定時運転を行う必要はないものであった。
したがって、計測制御運転に加えて定時運転を行っている換気設備について、変更通知の内容に基づいて運用の見直しが図られていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記のとおり、前記9トンネルの換気設備の運用を変更通知により換気設計方法が変更された後の20年7月から適切に行っていれば、換気設備の運転に要する電力量料金は、定期点検に基づく試運転に要する時間を考慮しても20年度1227万余円、21年度508万余円となることから、前記の電力量料金20年度3038万余円、21年度2377万余円に比べて20年度1810万余円、21年度1868万余円、計3679万余円が節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、会社において、前記の変更通知の内容が自動車1台当たりのばい煙排出量の数値を低減するものであることから、これに基づいて供用中のトンネル内の換気設備の運用を再検討する必要があったのに、このことについての認識が十分でなかったこと、このため変更通知を建設局のみに通知していて管理局には通知していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、会社は、22年6月に、次のような処置を講じた。
ア 換気設備の運用について見直しを図るよう定時運転を行っている2管理局を含む全管理局に通知するなどした結果、すべての定時運転を取りやめることとして電力量料金の節減を図った。
イ 今後トンネル換気設計方法を変更する場合は、供用中のトンネル内の換気設備の運用の見直しを図るよう管理局に周知することとする旨の通知を発した。
換気設備の概念図