科目 | 営業費用 | |||
部局等 | (1) | 東日本電信電話株式会社本社及び17支店 | ||
(2) | 西日本電信電話株式会社本社及び33支店 | |||
電話交換機の更改等作業の概要 | 電話交換機を処理能力の高い新交換機に更改し、不用となった旧交換機を撤去し廃棄処分する作業 | |||
旧交換機に係る電気料金相当額 | (1) | 7184万余円 | (平成20、21両年度) | |
(2) | 4393万余円 | (平成20、21両年度) | ||
節減できた電気料金相当額(ア) | (1) | 5110万円 | (平成20、21両年度) | |
(2) | 3240万円 | (平成20、21両年度) | ||
旧交換機の処分に係る売却額等 | (2) | 売却額(収入) | 791万円 | (平成20、21両年度) |
廃棄処分費(費用) | 1537万余円 | (平成20、21両年度) | ||
貴金属の価額を算定した場合の増収額等(イ) | (2) | 売却増収額 | 590万円 | (平成20、21両年度) |
廃棄処分費節減額 | 720万円 | (平成20、21両年度) | ||
計 | 1310万円 | |||
(ア)、(イ)の合計 | (1) | 5110万円 | (平成20、21両年度) | |
(2) | 4550万円 | (平成20、21両年度) |
東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)は、加入者への電話サービスや他事業者の通信サービスに提供するために、加入者回線や電話交換所を多数設置し、東日本及び西日本地域における電話網をそれぞれ構築しており、この電話網を正常な状態に維持するために、毎年度、通信ケーブルや電話交換機等の通信設備の維持、更改等を行っている。
上記の通信設備のうち、電話交換所に設置され昭和58年から運用されてきた電話交換機(以下「旧交換機」という。)は、主制御装置、加入者回線収容装置、通話制御装置等の各種装置を数十台規模で組み合わせて1組の電話交換機が構成されていることから、相当の設置スペースを必要とし、また、それらの多数の装置を稼働させるために消費する電力も相当の量に上っている。
そこで、両会社は、平成8年度から旧交換機と比べて処理能力が向上した省スペース・省電力型の新ノードと呼ばれる電話交換機(以下「新交換機」という。)を新たに導入し、旧交換機から新交換機への更改を実施してきている。そして、両会社は、保有する旧交換機をすべて新交換機に更改することとし、20年度から27年度までの8年間で計2,057組(NTT東日本960組、NTT西日本1,097組)の旧交換機を更改する計画としている。
両会社は、上記のとおり、20年度以降に計2,057組の旧交換機を更改することにより、電話網の維持経費の削減にも取り組むこととしている。
そこで、本院は、経済性等の観点から、旧交換機の更改に伴う作業が適切に行われて電話網の維持経費の削減が図られているか、また、撤去した旧交換機の処分は適切に行われているかなどに着眼して、NTT東日本の10支店(注1)
、NTT西日本の17支店(注2)
において会計実地検査を行うとともに、両会社の本社から、NTT東日本全17支店(注3)
、NTT西日本全33支店(注4)
の作業データに係る関係書類の提出を受けるなどして、20、21両年度に更改された旧交換機350組(NTT東日本190組、NTT西日本160組)の更改状況及び処分状況等について検査を行った。
(注1) | 10支店 東京、千葉、埼玉、栃木、宮城、福島、岩手、山形、秋田、北海道各支店
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(注2) | 17支店 大阪、大阪東、大阪南、和歌山、京都、名古屋、三重、金沢、広島、山口、愛媛、香川、徳島、福岡、佐賀、長崎、熊本各支店
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(注3) | 17支店 東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨、長野、新潟、宮城、福島、岩手、青森、山形、秋田、北海道各支店
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(注4) | 33支店 大阪、大阪東、大阪南、和歌山、京都、奈良、滋賀、兵庫、名古屋、静岡、岐阜、三重、金沢、富山、福井、広島、島根、岡山、鳥取、山口、愛媛、香川、徳島、高知、福岡、北九州、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島、宮崎、沖縄各支店
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検査したところ、新旧交換機の更改については、手順に係るマニュアル等は制定されておらず、おおむね次のような手順により実施されていた。
〔1〕 電話交換所に新交換機を設置して機能確認等を行った後、加入者回線を新交換機にも並列に接続し、あらかじめ調整された切替日に、旧交換機から新交換機へ電話交換の機能を切り替えて、旧交換機による電話交換を停止する。
〔2〕 新交換機への切替後も、新交換機の運用で電話交換に障害が生ずるなどの万一の事態に備えることとして、しばらくの間、旧交換機の電源は遮断せずに、そのまま通電しておく。
〔3〕 新交換機での電話交換に障害が生じていないことを十分確認した後、旧交換機に接続されていた中継回線、監視制御回線等の切断作業を行って電話網から切り離す。その後、警報機能を解除するなどの作業を実施した後、旧交換機の各装置の電源をすべて遮断して、ケーブル等の撤去や旧交換機の搬出を行う。
〔4〕 撤去した旧交換機については、両会社の本社が定めた廃棄処分等に関するマニュアルに基づき、資源として回収できる金属等の価額を算定した上で、運搬、処分等の費用を差し引き、売却又は廃棄処分することとしている。
そして、上記の手順を基に、実際の作業状況等を検査したところ、次のような事態が見受けられた。
20、21両年度に更改された旧交換機350組(NTT東日本190組、NTT西日本160組)について、新交換機への切替日から旧交換機の電源遮断日までの日数を調査したところ、前記〔2〕 の障害の確認のために1か月以上の期間を置いていたり、前記の電話交換所内で逐次実施する各作業において次の作業を実施するまでに必要のない待機期間が生じていたりしていて、切替日から電源遮断までに長期間を要しているものが多数見受けられた。すなわち、NTT東日本において、22年3月末時点で電源遮断が完了していた141組(NTT西日本においては129組)については、切替日から電源遮断まで36日から384日、平均131日間(同21日から384日、平均81日間)を要しており、また、同時点で電源遮断が完了していなかった49組(同31組)については、切替日から平均110日(同77日)が既に経過しており、中には6か月以上の期間が経過しているものが7組(同4組)見受けられた。そして、これらの期間における旧交換機に係る電力消費量(注5) は、NTT東日本で641万kWh、NTT西日本で413万kWhとなっており、その電気料金を算定するとNTT東日本で7184万余円、NTT西日本で4393万余円となっていた。
しかし、これまでの交換機の更改では旧交換機に交換機能を戻した事態は生じていないことに加え、新交換機の性能が向上したことなどから、障害の有無の確認期間を短縮することは十分可能であった。また、旧交換機は、電話網から切り離された時点で交換機として機能しなくなるものであることなどから、優先度を下げずに、撤去するために必要な各作業を一連の作業として実施することで、より短期間で旧交換機の電源を遮断することが可能であった。
したがって、以上のように、旧交換機への通電期間を短縮し、電気料金を大幅に節減することが可能であったのに、新交換機が稼働するようになった後にも、速やかに電源を遮断することなく、長期間にわたって旧交換機にそのまま通電し電気料金を支払っていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記のことから、両会社が20、21両年度に実施した計350組の交換機の更改について、両会社それぞれにおけるこれまでで最も短い通電期間(NTT東日本において36日間、NTT西日本において21日間)を旧交換機への通電期間としてこの間の電力消費量を計算すると、前記のNTT東日本の電力消費量641万kWhは184万kWhとなり、差引き457万kWhを削減でき、また、NTT西日本の電力消費量413万kWhは108万kWhとなり、差引き305万kWhを削減できることとなる。そして、これらに係る電気料金相当額をNTT東日本で約5110万円、NTT西日本で約3240万円節減できたと認められた。
撤去された旧交換機には鉄、銅等の一般的な金属のほか、その電子基板等に金、銀等の貴金属が含まれており、近年、それらの市場価格が高騰していることから、旧交換機の処分の際における貴金属の価額の算定状況について調査したところ、NTT東日本では、旧交換機の処分に当たって全支店で貴金属の価額を算定しており、また、NTT西日本でも、20年12月に、本社から電子基板等に含まれる貴金属の含有率等に関する参考資料が配布されて以降は、貴金属の価額を算定している支店があった。しかし、NTT西日本の17支店(注6) では、上記の参考資料が貴金属の評価についての算定事例を示しただけのものであったため明確な指示と受け止めずに、処分した旧交換機計55組(19年度に撤去された3組を含む。)について、電子基板等に含まれる貴金属の価額を算定せずに鉄くず等として処分していた。そして、これらのうち25組については計791万円の売却収入を得ていたが、残りの30組については計1537万余円の処分費用を支払っていた。
このように、撤去した交換機から回収できる貴金属について適切な価額を算定せずに割安な額で売却していたり、割高な廃棄処分費用を支払っていたりしている事態は適切と認められず、改善の必要があると認められた。
前記の55組について、貴金属の価額を適切に算定していたとすると、廃棄処分から売却に変更できることとなるものが3組あるため、売却収入は28組に係る計1381万余円に増加することとなる一方、廃棄処分費は27組に係る計810万余円に減少し、前記の売却収入等と比較して合計約1310万円の増収又は経費の節減を図ることができたと認められた。
このような事態が生じていたのは、主として次のようなことによると認められた。
ア 両会社において、撤去予定の交換機のような旧設備に係る経費に対する経済性、効率性についての配慮が十分でなかったこと
イ NTT西日本において、本社が定めた廃棄処分等に関するマニュアル等に撤去する旧交換機等の通信設備に含まれている貴金属の価額の算定方法を明確に示していなかったこと、また、その取扱いについて各支店に対する指示が徹底していなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、両会社は、22年9月に、交換機更改工事における速やかな電源の遮断に向けた標準的な作業手順書を策定して各支店に周知するなどして、交換機の更改を効率的に実施して電気料金の削減を図る処置を講じた。
また、NTT西日本は、22年7月に、旧交換機等の撤去する通信設備を処分する場合の当該通信設備に含まれている貴金属の価額の算定方法を定めた文書及び貴金属の取扱いを明確に定めた指示文書を各支店に発して、その周知徹底を図る処置を講じた。