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  • 平成21年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

独立行政法人及び国立大学法人における会計監査人の監査の状況について


第4 独立行政法人及び国立大学法人における会計監査人の監査の状況について

検査対象 (1) 独立行政法人75法人
(2) 国立大学法人90法人
独立行政法人等における会計監査人監査の概要 独立行政法人又は国立大学法人の財務諸表、事業報告書(会計に関する部分に限る。)及び決算報告書に対して、法律の規定に基づき公認会計士又は監査法人が行う監査
上記の会計監査人監査に係る監査報酬額及び監査の対象年度 (1) 69億2307万円(平成16年度〜20年度)
(2) 44億4941万円(平成16年度〜20年度)

1 検査の背景

(1) 独立行政法人等の制度及び会計監査人監査の概要

 独立行政法人制度の趣旨は、事前関与・統制を極力排し、事後チェックへの重点の移行を図るため、主務大臣の監督、関与その他の国の関与を必要最小限のものとすることであるとされている。そして、独立行政法人制度の共通的な枠組みは、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)に定められており、独立行政法人を所管する主務大臣の監督、関与その他国の関与を必要最小限にして、主務大臣が法人に対して指示する中期目標の下で自主的かつ透明な法人運営を確保するとともに、法人の業務実績を事後的に評価し、中期目標期間の終了時点で業務等の全般的な見直しを行うなどとされており、また、その財源措置について国は独立行政法人に対して、業務の財源に充てるために必要な金額を交付することができるとされている。
 そして、独立行政法人の会計については、中央省庁等改革の推進に関する方針(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)において、企業会計原則によることを原則とするが、公共的な性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算性を前提としないなどの独立行政法人の特殊性を考慮して必要な修正を加えるものとされている。
 そこで、営利企業とは異なる特殊性を考慮した独立行政法人会計基準(平成12年2月16日独立行政法人会計基準研究会(総務庁(13年1月6日以降は総務省)が開催)設定)が定められ、その後も必要に応じて改訂が行われている。
 上記の会計基準における一般原則によれば、独立行政法人の会計は、独立行政法人の財政状態及び運営状況に関して、真実な報告を提供するものでなければならず、また、財務諸表によって、国民その他の利害関係者に対し必要な会計情報を明瞭に表示し、独立行政法人の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならないなどとされている。独立行政法人の会計は、原則として企業会計原則によるものとされるが、上記の会計基準が優先するものとして、これに基づいて処理することとされている。
 また、国立大学法人(大学共同利用機関法人を含む。以下同じ。)の会計については、国立大学法人法施行規則(平成15年文部科学省令第57号)の規定に基づき、国立大学法人会計基準(平成16年文部科学省告示第37号)が定められ、同基準に基づいて処理することとされている。
 そして、独立行政法人は、通則法第38条の規定に基づき、毎事業年度(以下「年度」という。)、貸借対照表、損益計算書、利益の処分又は損失の処理に関する書類その他主務省令で定める書類及びこれらの附属明細書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該年度の終了後3月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならないこととされている。
 さらに、独立行政法人は、通則法第39条の規定に基づき、その資本の額その他の経営の規模が政令で定める基準に達しない独立行政法人を除き、財務諸表、事業報告書(会計に関する部分に限る。)及び決算報告書(以下「財務諸表等」という。)について、監事の監査のほか、会計監査人の監査(以下「会計監査人監査」という。)を受けなければならないとされている。また、国立大学法人についても、国立大学法人法(平成15年法律第112号)第35条において通則法第39条の規定が準用されていて、すべての国立大学法人が会計監査人監査を受けなければならないとされている。
 この会計監査人は、公認会計士又は監査法人に限定されており、主務大臣が選任することとされている。このために独立行政法人及び国立大学法人(以下、これらを「独立行政法人等」という。)の長は、会計監査人の候補者の名簿を主務大臣に提出することとされている。独立行政法人等は主務大臣によって選任された会計監査人と会計監査契約を締結して、その会計監査契約に基づき監査が実施される。
 独立行政法人等における会計監査人監査は、会計監査人の権限、義務及び責任について法令上の具体的な定めがないなど、株式会社における会計監査人監査とは異なっている。

(2) 会計監査人監査の基準

 独立行政法人に対する会計監査人監査の基準は、「独立行政法人に対する会計監査人の監査に係る報告書」(平成13年3月独立行政法人会計基準研究会設定。15年7月改訂)において取りまとめられ、公表されている。この報告書において、この監査の基準は、会計監査人が通則法に定める監査を行うに当たって、法令によって強制されなくても、常に遵守すべき性格のものであり、また、会計監査人が独立行政法人との間で会計監査契約を締結するに際して、当該契約に盛り込まれることが望ましいとされている。国立大学法人については、この独立行政法人に係る報告書等を参考としつつ、国立大学法人の特性を踏まえて、「国立大学法人に対する会計監査人の監査に係る報告書」(平成16年3月国立大学法人会計基準等検討会議設定)が取りまとめられている(以下、これらの報告書を合わせて「監査基準報告書」という。)。
 監査基準報告書には、独立行政法人等に対する会計監査人の監査の基本的な考え方が示されており、これによれば、独立行政法人等の財務運営に関する真実の情報が報告され、この情報に対して適切な事後チェックを行う仕組みが用意されることが必要であるとされ、独立行政法人等に対する会計監査人監査の導入目的は、通則法、独立行政法人会計基準、同注解等に基づき作成された財務諸表等が、独立行政法人等の財政状態、運営状況等財務運営に関する真実の情報を正しく表示していることを担保することであるとされている。
 また、このほかにも、上記の基本的な考え方には、監査における法規準拠性の考え方、会計監査人監査における経済性及び効率性等の視点などが示されており、独立行政法人等に対する監査は財務諸表等の監査が制度の中核であるなどとしながらも、民間企業とは異なる独立行政法人等の公共的な性格にかんがみ、財務諸表等に重要な影響を与える違法行為等の発見、非効率的な取引等(経済性及び効率性等の観点から問題があると認められる取引及び会計事象をいう。以下同じ。)の発見に努めることなどが求められている。
 そして、監査基準報告書では、独立行政法人等に対する会計監査人監査について、その理論及び実務は、今後、より一層の進展が期待されるところであり、それらの進展に伴い、監査基準報告書の内容も、より一層の充実が図られるべきであるとして、具体的な指針等も含めて、日本公認会計士協会が関係者と協議の上、適切に、かつ、継続して検討を行うことが必要であると考えるとしている。

(3) 独立行政法人等の監事

 独立行政法人等には、通則法等に基づき独立行政法人等の業務を監査する監事を置くこととされている。この業務の監査には、財務諸表等の監査を行うことも含まれていると解されており、独立行政法人等は、財務諸表等を主務大臣に提出するときは、前記のとおり監事の監査を受けなければならないとされ、財務諸表等に対する監事の意見を付けなければならないとされている。また、独立行政法人等は、会計監査人を選定するときは、監事の同意を得なければならないとされている。

(4) 会計監査人監査に係る監査報酬額

 国の業務等の独立行政法人化は、13年4月以降、進められてきたところであり、16年4月には、国立大学(大学共同利用機関を含む。)が法人化された。この結果、22年3月末における独立行政法人等は188法人(独立行政法人98、国立大学法人90)となり、このうち、会計監査人監査を受けることが義務付けられている独立行政法人等は165法人(独立行政法人75、国立大学法人90)あり、これらの法人における会計監査人監査に係る監査報酬額は20年度に係る監査で計26億1028万余円となっている。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 独立行政法人等に対する会計監査人監査については、制度導入から既に相当期間が経過し定着していること、また、監査基準報告書についても会計監査人監査の理論及び実務の進展に伴い継続して検討を行うことが必要であるとされていることを踏まえ、本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、主として次の項目に着眼して検査した。

〔1〕 会計監査契約の契約状況はどのようになっているか。また、会計監査人の候補者の選定方法は適切なものとなっているか。
〔2〕 会計監査人監査の実施状況はどのようになっているか。
〔3〕 独立行政法人等の公共的性格から求められている法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査はどのようになっているか。
〔4〕 会計監査人と監事との連携はどのようになっているか。

 また、上記からまでを踏まえて、独立行政法人等における会計監査人監査は制度導入の目的等に照らし成果を上げているか、問題点又は改善すべき点はないかなどにも着眼して検査した。

(2) 検査の対象及び方法

 検査は、22年3月末現在において、通則法等の規定により会計監査人監査を受けることが義務付けられている独立行政法人等165法人を対象とした(表1参照 )。
 検査の実施に当たっては、上記の165法人から提出を受けた会計監査契約、監査の実施等の状況についての調書等を分析するとともに、これらのうち72法人について会計実地検査を行った。さらに、独立行政法人等を監査する会計監査人の意見を参考にするため、独立行政法人等165法人が21年度に会計監査契約を結んだ監査法人において実際に監査を担当した監査責任者等に対する書面による意見調査(以下「意見徴取」という。)を実施し、これらのうち163法人の監査責任者等から意見を得た。

表1  検査の対象とした独立行政法人等

番号 独立行政法人名 番号 独立行政法人名 番号 国立大学法人名 番号 国立大学法人名
1 情報通信研究機構 47 福祉医療機構 1 北海道大学 47 三重大学
2 大学入試センター 48 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 2 北海道教育大学 48 滋賀大学
3 国立青少年教育振興機構 49 日本貿易振興機構 3 室蘭工業大学 49 滋賀医科大学
4 国立科学博物館 50 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 4 小樽商科大学 50 京都大学
5 物質・材料研究機構 51 水資源機構 5 帯広畜産大学 51 京都教育大学
6 防災科学技術研究所 52 自動車事故対策機構 6 旭川医科大学 52 京都工芸繊維大学
7 放射線医学総合研究所 53 空港周辺整備機構 7 北見工業大学 53 大阪大学
8 国立美術館 54 海上災害防止センター 8 弘前大学 54 大阪教育大学
9 国立文化財機構 55 情報処理推進機構 9 岩手大学 55 兵庫教育大学
10 労働安全衛生総合研究所 56 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 10 東北大学 56 神戸大学
11 農林水産消費安全技術センター 57 雇用・能力開発機構 11 宮城教育大学 57 奈良教育大学
12 家畜改良センター 58 労働者健康福祉機構 12 秋田大学 58 奈良女子大学
13 農業・食品産業技術総合研究機構 59 国立病院機構 13 山形大学 59 和歌山大学
14 農業生物資源研究所 60 医薬品医療機器総合機構 14 福島大学 60 鳥取大学
15 農業環境技術研究所 61 環境再生保全機構 15 茨城大学 61 島根大学
16 森林総合研究所 62 日本学生支援機構 16 筑波大学 62 岡山大学
17 水産総合研究センター 63 海洋研究開発機構 17 宇都宮大学 63 広島大学
18 日本貿易保険 64 国立高等専門学校機構 18 群馬大学 64 山口大学
19 産業技術総合研究所 65 国立大学財務・経営センター 19 埼玉大学 65 徳島大学
20 製品評価技術基盤機構 66 中小企業基盤整備機構 20 千葉大学 66 鳴門教育大学
21 土木研究所 67 都市再生機構 21 東京大学 67 香川大学
22 建築研究所 68 奄美群島振興開発基金 22 東京医科歯科大学 68 愛媛大学
23 交通安全環境研究所 69 医薬基盤研究所 23 東京外国語大学 69 高知大学
24 海上技術安全研究所 70 日本高速道路保有・債務返済機構 24 東京学芸大学 70 福岡教育大学
25 港湾空港技術研究所 71 日本原子力研究開発機構 25 東京農工大学 71 九州大学
26 海技教育機構 72 年金・健康保険福祉施設整理機構 26 東京芸術大学 72 九州工業大学
27 国立環境研究所 73 年金積立金管理運用 27 東京工業大学 73 佐賀大学
28 自動車検査 74 住宅金融支援機構 28 東京海洋大学 74 長崎大学
29 造幣局 75 郵便貯金・簡易生命保険管理機構 29 お茶の水女子大学 75 熊本大学
30 国立印刷局 30 電気通信大学 76 大分大学
31 日本万国博覧会記念機構 31 一橋大学 77 宮崎大学
32 農畜産業振興機構 32 横浜国立大学 78 鹿児島大学
33 農業者年金基金 33 新潟大学 79 鹿屋体育大学
34 農林漁業信用基金 34 長岡技術科学大学 80 琉球大学
35 北方領土問題対策協会 35 上越教育大学 81 政策研究大学院大学
36 平和祈念事業特別基金 36 金沢大学 82 総合研究大学院大学
37 国際協力機構 37 福井大学 83 北陸先端科学技術大学院大学
38 国際交流基金 38 山梨大学 84 奈良先端科学技術大学院大学
39 新エネルギー・産業技術総合開発機構 39 信州大学 85 筑波技術大学
40 科学技術振興機構 40 岐阜大学 86 富山大学
41 理化学研究所 41 静岡大学 番号   大学共同利用機関法人名
42 宇宙航空研究開発機構 42 浜松医科大学 87 人間文化研究機構
43 日本スポーツ振興センター 43 名古屋大学 88 自然科学研究機構
44 日本芸術文化振興会 44 愛知教育大学 89 高エネルギー加速器研究機構
45 勤労者退職金共済機構 45 名古屋工業大学 90 情報・システム研究機構
46 高齢・障害者雇用支援機構 46 豊橋技術科学大学
(注) 各法人の名称中「独立行政法人」、「国立大学法人」及び「大学共同利用機関法人」は記載を省略した。

3 検査の状況

(1) 会計監査契約の状況

 前記165法人に係る会計監査契約の契約額の16年度から20年度(いずれも監査の対象年度)までの状況は、表2のとおりとなっている。

表2 会計監査契約額の状況
(単位:法人、千円)

区分 平成16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 合計
独立行政法人 法人数 63 67 71 75 75
契約額 1,186,253 1,214,014 1,303,906 1,608,600 1,610,304 6,923,079
1法人平均 18,829 18,119 18,364 21,448 21,470
国立大学法人 法人数 88 90 90 90 90
契約額 845,068 812,469 842,699 949,193 999,983 4,449,414
1法人平均 9,603 9,027 9,363 10,546 11,110
法人数 151 157 161 165 165
契約額 2,031,321 2,026,484 2,146,606 2,557,794 2,610,288 11,372,494
1法人平均 13,452 12,907 13,332 15,501 15,819

 このように、会計監査契約額は、20年度において独立行政法人で計16億余円、国立大学法人で計9億余円となっており、これを1法人当たりの平均契約額でみると、それぞれ2147万余円、1111万余円となっている。
 また、上記165法人のうち、20年度の監査時間数の実績が確認できた162法人(独立行政法人73、国立大学法人89)を対象に、契約額を実際の監査時間数で除して監査時間1時間当たりの平均報酬単価(以下「時間単価」という。)を算出すると、表3のとおりとなっている。参考として、日本公認会計士協会が行っている監査実施状況調査による調査結果を基に監査報酬及び監査時間数から本院が試算した時間単価(いずれも実際の監査時間数を基にしている。)を併せて示すと、独立行政法人等の時間単価は、会社法(平成17年法律第86号)に基づく監査の時間単価とほぼ同水準となっている。

表3 平成20年度の時間単価
  〔1〕 独立行政法人監査 〔2〕 国立大学法人監査 〔3〕 金融商品取引法監査
(個別財務諸表のみ提出会社)
〔4〕 金融商品取引法監査
(連結財務諸表提出会社)
〔5〕 会社法監査
時間単価(円) 14,716 13,664 10,903 11,752 13,508
(注) 〔3〕 、〔4〕 及び〔5〕 については日本公認会計士協会が実施している「監査実施状況調査」の監査報酬及び監査時間数に基づいて本院が試算したものである。

(2) 会計監査人の候補者の選定状況

ア 受嘱者の状況

 前記のとおり、独立行政法人等は主務大臣によって選任された者を受嘱者として会計監査契約を結ぶこととなる。そして、その任期は選任の日以後最初に終了する年度の財務諸表等についての主務大臣の承認の時までとされている。
 そこで、前記の165法人の会計監査契約の受嘱者についてみると、すべての独立行政法人等が監査法人を受嘱者としており、これを監査法人別にみると、表4のとおりとなっている。

表4 監査法人別の受嘱状況
(単位:法人、%)

年度 あずさ監査法人 新日本監査法人 監査法人トーマツ 三大監査法人
(注)
中央青山監査法人
その他監査法人
法人 割合 法人 割合 法人 割合 法人 割合 法人 割合 法人 割合 法人 割合
平成16年度 39 25.8 57 37.7 11 7.2 107 70.8 44 29.1 0 0.0 151 100
17年度 44 28.0 58 36.9 15 9.5 117 74.5 40 25.4 0 0.0 157 100
18年度 52 34.4 63 41.7 19 12.5 134 88.7 17 11.2 0 0.0 151 100
19年度 61 36.9 68 41.2 35 21.2 164 99.3 1 0.6 165 100
20年度 60 36.3 65 39.3 38 23.0 163 98.7 2 1.2 165 100
(注)
中央青山監査法人は、平成18年9月に、みすず監査法人となり、19年7月末日をもって業務を終了し解散している。

 このように、受嘱者は、あずさ監査法人(22年7月1日以降は有限責任あずさ監査法人)、新日本有限責任監査法人(20年6月30日以前は新日本監査法人)及び監査法人トーマツ(21年7月1日以降は有限責任監査法人トーマツ)のいわゆる三大監査法人が過半を占め、特に19年度以降は98%以上を占めている。これら以外の監査法人が受嘱者となっている独立行政法人等は、19年度で1法人、20年度で2法人のみであり、いずれも同一の監査法人が受嘱者となっていて、中央青山監査法人で独立行政法人等の監査を経験した者が監査責任者として監査を行っている。
 次に、各法人の各年度の会計監査契約について、前年度の受嘱者との関係についてみると、表5のとおりとなっている。

表5 前年度と同一の受嘱者との契約の状況
(単位:件)

区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 5年連続
前年度と同一の監査法人との契約
(うち中央青山(みすず)と契約)
145
(39)
135
(25)
125
158
90
前年度と異なる監査法人との契約
(うち中央青山(みすず)から変更)
6
(5)
22
(15)
36
(27)
7

 このように、前年度と同一の受嘱者と契約している例が多く、16年度から20年度まで、5年連続して同一の受嘱者と契約している法人も90法人見受けられた。この背景として、次のイ又はウのような理由があると思料される。なお、このうち5法人は21年度において20年度と異なる監査法人と契約していて、残りの85法人は6年連続して同一の受嘱者と契約している。

イ 会計監査人の候補者の選定方法

 検査したすべての独立行政法人等において、会計監査人は、独立行政法人等の長が作成した会計監査人の候補者の名簿の第一順位の者が選任されている。そして、上記のとおり、同一の監査法人と連続して契約している独立行政法人等が多数であり、特に20年度の場合は、契約額2000万円以上の会計監査契約を締結している32独立行政法人等(独立行政法人27、国立大学法人5)のうち、31法人までが前年度と同一の監査法人と契約していることから、これら32法人に対する会計実地検査において、20年度における会計監査人の候補者の選定方法等を検査した。
 上記32法人のうち、27法人は、当該年度の監査について、公募又は三大監査法人等に直接依頼するなどの方法により複数の監査法人に対して提案書の提出を求めていた。
 そして、この27法人について提案書の提出状況をみると、前年度と同一の監査法人1者しか提出がなかったものが12法人、複数の者から提出を受けて審査を行ったものが15法人あり、15法人のうち14法人は前年度と同一の監査法人を会計監査人の候補者として選定していた。
 そこで、上記の15法人について、その審査の基準をみたところ、監査法人の状況、当該独立行政法人等に対する監査の実施体制・計画、監査の費用等を審査の項目としていた。このうち、監査法人の状況において公会計を担当する部門の規模、独立行政法人等に係る監査実績、当該独立行政法人等の業務の熟知度等を審査の項目としており、特に9法人(注1) においては、独立行政法人会計基準等の策定に関与した実績を審査の項目としていた。
 しかし、独立行政法人会計基準は12年に、国立大学法人会計基準は15年に策定、公表されており、これらに関する実務上の留意点を取りまとめた「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A」等も改訂が重ねられ、充実・改善が図られてきていることから、会計基準の策定に関与した実績を審査の項目とする必要はないと認められる。
 そして、上記の審査の項目については、契約額が2000万円未満の133法人のうち、会計実地検査を実施した40法人についてみても、ほぼ同様の状況となっていた。
 なお、会計監査人の候補者の選定に際して三大監査法人以外の監査法人等から独立行政法人等に対して提出された提案書の件数は、20年度では4監査法人等から7法人に対して7件であったものが、21年度では8監査法人等から30法人に対して35件に増加しており、独立行政法人等の監査業務への応募は三大監査法人以外にも拡大する傾向がうかがえる。

ウ 次年度以降を考慮した選定

 前記32法人から複数の監査法人に対して提案書の提出を求めていた27法人を除く5法人のうち、3法人は、前年度以前において2か年度から5か年度の複数年度にわたる期間を通して監査を行うことを前提とした提案書の提出を監査法人等に対して求め、これを審査して会計監査人の候補者を選定した上で、この結果によって選任された会計監査人を、選任された年度の次年度以降においても会計監査人の候補者とすることにしていた。そして、実際に、当該3法人は、会計監査人として選任された者は原則として次年度以降の会計監査人の候補者とすることを明示して複数年度にわたる期間を通した監査について提案書の提出を監査法人に対して求めた上で、これを審査して会計監査人の候補者を選定しており、当該会計監査人に選任された監査法人1者に対して次年度以降も提案書の提出を求めていた。
 このような次年度以降を考慮した選定を実施する理由について、これを実施している独立行政法人等は、会計監査人交替時に発生する、当該独立行政法人等の状況を把握するために必要となる予備調査等に要する人的・物的コストの削減が見込めることに加えて、会計監査人が当該法人業務に習熟することによる監査の効率的実施等、監査の質的向上が期待できるとしている。また、監査法人の提案書でも、予備調査に係る費用が次年度以降削減できるとしているものがある。さらに、意見徴取においても、毎年度会計監査人の候補者の選定が行われると、監査の効率化が計画しづらいという意見のほか、監査契約までの手続に期間を要することにより監査業務の日程に影響するといった意見も見受けられた。
 上記のことから、人的・物的コストの削減や監査の質的向上を期待して次年度以降を考慮した選定を実施する場合であっても、これらを実現するためには、監査法人等に対して原則として次年度以降の会計監査人の候補者とすることを明示して複数年度にわたる期間を通した監査を考慮した提案書の提出を求めることが必要である。
 しかし、残る2法人のうち、1法人(注2) では、中期目標期間の初年度において公募を行うことにより選任された会計監査人を引き続き会計監査人とすることが効率的、かつ、経済的であるとして、中期目標期間は提案書の提出を求めることなく会計監査人の候補者としていたが、初年度の公募において、提案書の提出を求めるに当たり、原則として次年度以降の会計監査人の候補者とすることを明示していなかった。
 なお、残る1法人は、当該法人の事業内容、会計業務を熟知していることなどを理由として、前年度の受嘱者である監査法人のみに限定して提案書の提出を求めるなどした上で会計監査人の候補者としていたが、21年度は複数の監査法人に対して提案書の提出を求めている。

 上記イ及びウのとおり、独立行政法人等においては、会計監査人の候補者の選定に当たって、〔1〕 審査の項目として会計基準の策定に関与した実績を考慮することなどを改め、また、公会計部門の規模、独立行政法人等に係る監査実績、当該独立行政法人等の業務の熟知度等を項目とする際は、これらを過度に重視することのないよう、独立行政法人等の規模等に応じて適切に考慮したりすることなどにより、一部の監査法人が過度に有利とならないようにしたり、〔2〕 次年度以降を考慮した選定方法を活用する場合については、監査法人等に対して原則として次年度以降の会計監査人の候補者とすることを明示して複数年度にわたる期間を通した監査を考慮した提案書を求めたりすることが必要である。

(3) 会計監査人監査の実施状況

ア 会計監査契約の履行と監査報酬の支払時期

 会計監査契約では監査報酬に関してその支払時期を契約書で定めている。
 通則法等によれば、独立行政法人等は会計に関する事項について規程を定め、これを主務大臣に届け出なければならないとされている。そして、これらの規程においては、代価の支払に当たっては履行の確認を行うことを原則としている。
 監査業務は、年度が終了した後に独立行政法人等が財務諸表等を作成して会計監査人へ提出し、会計監査人が財務諸表等の監査の実施に一定の期間を要した後に監査報告書を提出することで、履行が完了する。したがって、履行が完了する時期は、監査対象年度が終了した後の5月下旬から6月下旬までとなることが通例である。
 上記の状況を踏まえて、監査報酬の支払の時期が履行の完了前になっていないか、20年度の会計監査契約における支払時期の規定について検査したところ、履行が完了する前の21年4月までに監査報酬の全額を支払うこととしていた法人が24法人(注3) 見受けられた。
 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>

 A法人は、平成20年度の監査について20年7月に、監査法人との間で監査報酬額9,000千円とする会計監査契約を締結した。そして、監査法人は、20年9月から21年6月にかけて監査を実施し、21年6月に監査報告書を提出していた。しかし、当該契約における監査報酬の支払時期についてみたところ、20年9月に監査報酬の全額を支払うこととしており、実際の支払もこのとおり行っていた。

 独立行政法人等には国と異なり財政法(昭和22年法律第34号)で定める会計年度独立の原則は適用されず、また、会計監査契約の場合、全額を前金払とするなどの商慣習等は見受けられないことを踏まえると、受嘱者からの求めに応じて履行完了前に監査報酬額の一部を支払う契約とする場合であっても、適切な履行を確認する必要性の観点から、最終の支払は履行が完了しその確認を行った後とするよう契約内容を見直す必要がある。

イ 会計監査人の独立性の確保及び監査の品質管理

 監査業務に従事する者は、監査責任者と補助者から構成される。監査責任者は、監査業務の遂行を統括する責任を負う者であり、補助者には公認会計士と公認会計士以外の者が含まれている。
 大会社等に対する会計監査には、会計監査人の独立性の確保及び監査の品質管理の一層の厳格化が求められており、公認会計士法(昭和23年法律第103号)第34条の11の3において、連続する7会計期間のすべての会計期間の財務書類について監査を行った場合の監査責任者の交替ルールが定められている。独立行政法人等に対する会計監査においても、監査基準報告書は、監査責任者について、上記の交替ルールを踏まえて、同一の者が長期間にわたって同一の会計監査を担当することは適切ではなく、監査責任者の交替ルールを中期目標期間との関連を踏まえて定める必要があるなどとしている。そして、独立行政法人については連続する5か年度又は中期目標期間において、また、国立大学法人については連続する6か年度において監査責任者となった者は、会計監査人の独立性の確保及び監査の品質管理の観点から適当と認められる期間は、原則として当該独立行政法人等の監査責任者となることができないという監査責任者の交替ルールを確立することが適切であるなどとしている。
 そこで、19年度までに第1期中期目標期間を終了している55法人について、監査責任者の状況をみたところ、連続する5か年度又は中期目標期間を超えて同じ監査責任者が監査に関与している法人が4法人(注4) 見受けられた。
 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<事例2>

 B法人は、平成20年度の監査に係る会計監査人候補者を募集したところ、従来会計監査契約を締結していた監査法人1者から応募があった。当該監査法人から提出された提案書には、監査責任者として公認会計士2名の氏名が示されていたが当該2名はいずれも、B法人が設立された15年度から19年度までの第1期中期目標期間を通して監査責任者としてB法人の監査に関与しており、第2期中期目標期間初年度に当たる20年度は6か年度目の監査となっていた。
 しかし、B法人において監査責任者の交替についての認識が十分でなかったことなどから、監査責任者の過去の関与状況を確認することなく、当該2名を監査責任者とする会計監査契約を締結していた。そして、実際に監査を行った後提出された監査報告書においても当該2名が監査責任者となっていた。

ウ 財務諸表等の適期の提出による監査日程の確保及び提出に当たっての機関決定

 会計監査人が財務諸表等の監査対象書類を受領し、監査を終えて監査報告書を提出するまでの日程(以下「監査日程」という。)について、株式会社の監査においては、会社計算規則(平成18年法務省令第13号)により、会計監査人は計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日などの日までに会計監査報告の内容を通知しなければならないとされている(会社計算規則第130条第1項第1号)。この通知期限の定めには、会計監査人に対して適切な監査を行うために必要な期間を保障する目的があると考えられる。
 独立行政法人等の監査においては、監査基準報告書によれば、独立行政法人等は、会計監査人監査が十分かつ円滑に行われるよう、監査日程の確保に努めなければならないとされ、特に財務諸表等の監査対象書類を会計監査人に提出する時期について、通則法第38条に定める期限に対して、少なくとも商法(明治32年法律第48号)や「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」(昭和49年法律第22号。平成18年5月からはそれぞれ会社法、会社計算規則で規定されている。)等の類似の規定に定める日程を十分に確保しなければならないとされている。さらに、この趣旨を担保するため、会計監査人と独立行政法人等との間で締結される会計監査契約において、必要に応じて、監査日程について明確に定めることが望ましいとされている。
 また、株式会社においては、財務諸表の作成に対する経営者の責任と、当該財務諸表の適正表示に対する監査人の責任との区別がされており、前記の計算書類は取締役又は執行役が作成している。独立行政法人等の監査においても、監査基準報告書によると、通則法第38条等に基づき財務諸表等を作成し、独立行政法人等の財政状態等を適正に表示する責任は独立行政法人等の長が負い、その財務諸表等の適否に関する監査意見の表明については、会計監査人が責任を負うという二重責任の原則が適用される。この二重責任の原則の観点から、独立行政法人等は、財務諸表等の監査対象書類を会計監査人に提出するに当たっては、独立行政法人等の内部においてしかるべき機関決定を経た上で行わなければならないとされている。
 そこで、20年度の会計監査契約において、会計監査人への財務諸表の提出期限及び会計監査人からの監査報告書の提出期限を契約書上でどのように設定しているか、実際の財務諸表の提出に当たってしかるべき機関決定を行っているかなどについて検査した。
 会計監査契約において定められた会計監査人への財務諸表の提出期限から会計監査人からの監査報告書の提出期限までの期間について、監査日程が十分に確保されているかをみると、表6のとおりとなっていた。

表6 財務諸表の提出期限から監査報告書の提出期限までの契約上の日数

提出期限記載無 提出期限記載有 合計
4週間未満 4週間以上
1週間未満 1週間以上2週間未満 2週間以上3週間未満 3週間以上4週間未満
11法人
(6.6%)
1法人
(0.6%)
4法人
(2.4%)
14法人
(8.4%)
32法人
(19.3%)
51法人
(30.9%)
103法人
(62.4%)
165法人
(100%)

 このように、会計監査契約で提出期限を明記していなかったものが11法人(注5) あり、また、定めていても、財務諸表の提出期限から監査報告書の提出期限までの期間が、株式会社の監査では計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日などとされているのに比べて、4週間未満と短期間になっているものが51法人(注6) あり、最も期間が短かった独立行政法人等においては、4日となっていた。
 これらのことから、当該11法人及び51法人における会計監査契約は監査日程の確保の観点からは十分なものとはなっていない状況となっていた。
 次に、財務諸表を会計監査人へ提出するに当たっての、独立行政法人等におけるしかるべき機関決定の状況をみたところ、独立行政法人等の長又はこれ以外の役員による決定を経ているものは67法人に過ぎず、全体の60%に当たる98法人(注7) は会計監査人に財務諸表を提出する際にしかるべき機関決定を行っていない状況であった。
 このような状況となっているのは、独立行政法人等において、主務大臣に提出する財務諸表等に対してはしかるべき機関決定を行うことにしているが、会計監査人に提出する財務諸表に対しては必ずしもしかるべき機関決定を行う必要はないと認識していたことによるものと認められた。
 これらを踏まえて、機関決定を経た財務諸表の実際の提出日をみると、会計監査契約で定められた監査報告書の提出期限(提出期限が定められていない場合は、通則法上の主務大臣への財務諸表等の提出期限である6月末日)の4週間以上前に機関決定を経た財務諸表を提出していた独立行政法人等は上記67法人のうち20法人であった。
 監査日程の確保及び機関決定に関連して、過去に監査手続に影響した事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

 C法人は、平成19年度の監査について、19年9月に監査法人との間で、監査報酬額を57,750千円とする会計監査契約を締結した。当該契約において、C法人から監査法人への財務諸表の提出期限は20年6月4日、監査法人からC法人への監査報告書の提出期限は同年6月25日と定め、監査日程を21日確保することとしていた。
 しかし、C法人が財務諸表を監査法人へ提出したのは、同年6月5日であり、このときC法人の提出した財務諸表は、法人の長等の決定を経た財務諸表ではなく、決算担当部署の長の了解を得ただけのものであった。そして、当該財務諸表は相当数の誤りがあったため、C法人は修正が判明する都度差し替えを繰り返し、最終的な差し替えを終えたのは同年6月20日頃であったが、これもしかるべき機関決定を経たものではなかった。これに対して監査法人は監査報告書を同年6月26日にC法人へ提出したが、差し替えの都度、改めて自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得るために必要な監査手続を実施しなければならなかった。この結果、監査法人は、期末監査に当初1,309時間を充てることを計画していたが、実際には計画より536時間超過した1,845時間を要することとなった。

 なお、意見徴取の結果によれば、監査日程については、
〔1〕 4週間程度確保されることが望ましいが、提出期限の制約のなかで十分な監査を行うため対策を執っている。
〔2〕 4週間以上となっていて十分な日程が確保されている。
といった意見が多数を占めていた。このほかに、独立行政法人等の監査についての意見、印象を求めたところ、独立行政法人等の特殊性として、決算を担当する職員が4月に異動することにより、決算処理に支障が出る、といった意見も見受けられた。
 独立行政法人等において、会計監査契約の締結に当たっては、会計監査人の独立性の確保及び監査の品質管理の観点から監査責任者が連続して指定されていないか確認すること、また、監査日程が十分に確保された提出期限を設定することが必要であり、実際の財務諸表等の提出に当たっては、二重責任の原則を十分に認識して、しかるべき機関決定を行った上で監査日程が確保されるように提出を行う必要がある。

(4) 法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査に係る状況

ア 法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査

 前記のように、監査基準報告書によれば、会計監査人監査は独立行政法人等が作成した財務諸表等が真実の情報を正しく表示していることを担保することを目的として行われるものである。加えて、法規準拠性の観点からの監査について、公共的性格を有する独立行政法人等に対する監査においては、民間企業の監査にも増して、不正及び誤びゅう並びに違法行為(以下「違法行為等」という。)の発見に対する重大な関心があると思料されることから、会計監査人はこのような重大な関心について適切に考慮することが必要であり、法規準拠性の観点を踏まえた会計監査を実施しなければならないとしている。民間企業に対する監査についても、監査基準において、会計監査人は不正又は誤びゅうを発見した場合には、経営者等に報告して適切な対応を求めることとされているが、監査基準報告書においては、会計監査人は、財務諸表等が独立行政法人等の財務情報等を適切に表示しているかどうかを判断する手続の一環として、法規準拠性の観点を踏まえた会計監査を実施しなければならないなどとしており、財務諸表等に重要な影響を与える違法行為等については、会計監査人が積極的に発見するよう努めていくとともに、財務諸表等に重要な影響を与えるには至らない違法行為等を発見した場合には、独立行政法人等の長に必要な報告を行うなど、適切に対応しなければならないとされている。
 さらに、監査基準報告書は、経済性及び効率性等の視点からの監査について、会計監査が、独立行政法人等の業務が効率的かつ効果的に実施されたことの証明及びすべての非効率的な取引等の発見を目的として行われるわけではないとしながら、独立行政法人等の事務・事業が効率的かつ効果的に実施されたかについては、主務大臣を始めとする関係者及び国民の重要な関心事項であり、非効率的な取引等については、会計監査人により指摘されることを期待しているものと考えるとしている。そして、会計監査人は、財務諸表監査の実施過程において非効率的な取引等を発見した場合は独立行政法人等の長等に報告し、監査の実施に当たっては、会計の専門家としての専門能力と実務経験から得られた知識を十分に活用し、独立行政法人等の非効率的な取引等の発見に努めなければならないとしている。そして、会計監査人は、監査の実施過程において、違法行為等又は非効率的な取引等を発見した場合には、監査報告書とは別に独立行政法人等の長等に報告して適切な対応を求めるなどしなければならないとされている。
 また、この非効率的な取引等について、16年2月に日本公認会計士協会が公表した公会計委員会報告第3号(独立行政法人監査における経済性・効率性等)では、監査基準報告書と同様に、独立行政法人の事務・事業が効率的かつ効果的に実施されたかどうかについては、主務大臣を始めとする関係者及び国民の重要な関心事項であるとしながらも、会計監査人は、非効率的な取引等を発見するための特別な監査手続を実施する必要はないとしている。

イ 報告の状況

 そこで、これらについて、20年度のすべての独立行政法人等の会計監査契約上の取扱いをみると、会計監査人は、財務諸表等に重要な影響を与える違法行為等の発見に積極的に努めるとともに、監査の実施過程において非効率的な取引等の発見に努めるものとするとしているが、一方で、会計監査人の監査は、業務が効率的かつ効果的に実施されたことの証明並びにすべての違法行為等及び非効率的な取引等の発見を目的として行うものではないとしている。
 そして、軽微な誤びゅうを除く違法行為等及び非効率的な取引等について、16年度から20年度までの間に会計監査人から独立行政法人等の長に対する文書での報告の有無についてみたところ、報告が行われた実績はなかった。
 このうち、非効率的な取引等に係る監査に関して、意見徴取の結果によれば、
〔1〕 現監査基準報告書や公会計委員会報告第3号に記載のとおり、財務諸表監査手続の範囲内で把握できるものについて対応すべきものと考える。
〔2〕 一般企業において非効率的な取引等を発見した場合には監査人がその旨を被監査会社に報告することはあるが、一般企業においても、独立行政法人においても、非効率的な取引の発見が主たる目的ではないことは明確になっており、その意味では両者に本質的な差異はないと考える。ただし会計監査人が非効率的な取引等の発見をも考慮した監査を実施することが期待されていることは承知している。
といった意見が多く見受けられる一方で、
〔3〕 非効率的な取引等に対する事項は、会計監査に含めるのではなく、別の制度設計にして検討した方が良いと考える。
といった意見も少なからず見受けられた。
 非効率的な取引等の発見に関連した過去の経緯をみると、独立行政法人については、独立行政法人整理合理化計画(平成19年12月24日閣議決定)において、独立行政法人における随意契約の見直しに関する措置として、随意契約見直し計画の実施状況を含む入札及び契約の適正な実施について、監事及び会計監査人による監査において厳正なチェックを求めている。また、総務省は、19年11月15日付けで、各独立行政法人の主務府省に対して、監事及び会計監査人に対し、入札及び契約の適正な実施について徹底的なチェックをするべき旨を要請するよう、事務連絡を発している。これらに対して、日本公認会計士協会は、20年2月13日付けで、「独立行政法人の随意契約について」を公表し、入札・契約のそのものの適切性や法人運営における資金の無駄使いについて、直接的に会計監査人がチェックや判断をすることは、財務諸表監査の範囲を超えるものであるとの見解を公表しており、同年4月15日付けで、総務省は、各府省及び独立行政法人において当該見解に十分留意するよう要請している。

 上記ア及びイのとおり、法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査については、16年度から20年度までの間に1件も報告されておらず、独立行政法人等に対する監査に法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査が導入された趣旨にかんがみると、これに対する成果が十分に上がっているとは必ずしも言えない。したがって、独立行政法人等の公共的性格から求められている法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査については、関係省庁、日本公認会計士協会等の関係各方面において会計監査人監査の実態を踏まえた検討を行うことが求められる。

(5) 会計監査人と監事との連携状況

 株式会社の場合は会社法等において、監査役は、会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出する場合の同意、会計監査人の解任、会計監査人の報酬等を定める場合の同意等をすることができるほか、その監査報告の内容として会計監査人監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及びその理由を報告しなければならないとされている。
 また、16年2月に日本公認会計士協会が公表した監査基準委員会報告第25号(監査役若しくは監査役会又は監査委員会とのコミュニケーション)によれば、会計監査人は監査役等が経営者に対するモニタリングの機能を果たし内部統制の有効性を高めるために、会計監査人が監査で発見した事項及び監査役等の職務遂行に関連して重要と判断される事項について、監査役等とのコミュニケーションを行わなければならないとされている。
 一方、独立行政法人等の場合は、通則法等により独立行政法人等の業務を監査する者として監事が置かれている。通則法等によれば、独立行政法人等は、財務諸表等について監事の監査を受けなければならないとされているほか、監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、法人の長又は主務大臣に意見を提出することができるとされている。
 そして、監査基準報告書において、監事は財務諸表等の監査においては、会計監査人の監査とは別にその職務と権限に基づき監査を行い、会計監査人の意見と併せて自らの意見を付すものとされているが、会計監査人が行った監査の方法とその結果の相当性を自らの責任で判断した上で当該会計監査人の監査の結果を利用し自らの意見を述べることができるともされており、会計監査契約において、会計監査人は独立行政法人等の監事との密接な連絡の下に監査を行う旨記載されている。
 そこで、20年度監査における会計監査人と監事との連携の状況について、特に、会計監査人が作成した監査計画には、監査手続、監査日程等が示されており、会計監査人監査の方法について一定程度把握できるものであることから、監事が会計監査人から監査計画の説明を聴取し意見交換しているかについて、検査した165法人のうち、監事が異動したため回答が得られなかった1法人を除く164法人についてみると、30法人において、監事が監査計画の説明を徴していなかったほか、説明を徴していたとしている134法人においても、監査計画概要書等を書面で受領していなかったものが8法人あった。
 また、上記の164法人について、監査報告書の提出の際に、会計監査人監査の方法又は結果の説明を監事が聴取した状況をみると、5法人において、監事が監査報告書についての説明を徴していなかったほか、説明を徴していたとしている159法人においても監査結果概要書等を書面で受領していなかったものが9法人あった。
 上記のとおり、独立行政法人等の監事においては、会計監査人の監査とは別にその職務と権限に基づき監査を行い、意見を付するものではあるが、自らの意見を述べるに当たって会計監査人監査の方法とその結果について十分に把握する必要があるのに、それが必ずしも十分に行われていない独立行政法人等も見受けられた。

4 本院の所見

 独立行政法人等の制度設計の主眼は、独立行政法人等に自主的、自律的な業務運営を行わせるとともに、業務の実績について適切な事後評価を行うことにより、国民のニーズに応じた業務を実施することにある。このような制度設計の主眼を実効あるものとするためには、独立行政法人等の財務運営に関する真実の情報が報告され、この情報に対して適切な事後チェックを行う仕組みが用意されている必要があるという観点から、企業会計に準じた財務会計制度が設けられ、独立行政法人等のうちの多くの法人は会計監査人監査を受けることが義務付けられている。
 したがって、独立行政法人等の長は、当該独立行政法人等の財務運営に関する真実の情報として財政状態等を適正に表示する責任を負うものである。そして、独立行政法人等、関係省庁等又は監事においては、今回本院が行った検査の状況を踏まえ、次の点に留意することが必要である。

ア 独立行政法人等において、会計監査人の候補者の選定に当たり、会計基準の策定に関与した実績を審査の項目としていたり、次年度以降も原則として会計監査人の候補者とするのに、このことを明示することなく提案書の提出を求めていたりしていた独立行政法人等が見受けられたことを踏まえ、より多くの監査法人等に参加機会を与えるよう、会計基準の策定に関与した実績を考慮することなどを改めることにより、一部の監査法人が過度に有利とならないようにしたり、次年度以降を考慮した選定を行う場合には、監査法人等に対して次年度以降も原則として会計監査人の候補者とすることを明示して複数年度にわたる期間を通した監査を考慮した提案書を求めたりすることにより、選定の際の公正性及び透明性の確保を図る。

イ 独立行政法人等において、会計監査契約の締結に当たって、監査報酬の支払時期について、最終の支払を履行が完了する前としたり、同じ監査責任者を連続する5か年度又は中期目標期間を超えて関与するものとしていたり、財務諸表の会計監査人への提出期限を監査日程が十分に確保されたものとしていなかったりなどしていた独立行政法人等が見受けられたことを踏まえ、監査報酬の支払時期を適切な時期に設定したり、会計監査人の独立性の確保及び監査の品質管理の観点から、監査責任者が一定の期間を超えて連続して指定されていないか確認したり、会計監査人において監査が十分かつ円滑に行われるよう財務諸表等や監査報告書の提出期限が設定され、監査日程が十分に確保されているかなどについて十分検討を行ったりして、会計監査契約の各項目を適切に設定する。また、二重責任の原則の観点から、財務諸表等の監査対象書類の会計監査人への提出に当たっては、法人内部のしかるべき機関決定を経た上で、監査日程が十分確保されるように行う。

ウ 法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査については、報告された実績がなく、独立行政法人等に対する監査に法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査が導入された趣旨にかんがみると、これに対する成果が十分に上がっているとは必ずしも言えない。したがって、独立行政法人等の公共的性格から求められている法規準拠性の観点からの監査や経済性及び効率性等の視点からの監査については、関係省庁、日本公認会計士協会等の関係各方面において会計監査人監査の実態を踏まえた検討を行うことが求められる。

エ 監事においては、財務諸表等の監査について、会計監査人監査とは別に監査を行い、意見を付するものではあるが、会計監査人監査の方法とその結果についての把握が必ずしも十分に行われていない独立行政法人等が見受けられたことを踏まえ、会計監査人との連携を一層充実させるとともに、株式会社の監査における会計監査人との関係にかんがみ、会計監査人監査の方法とその結果について十分に把握する。

 本院としては、今後とも独立行政法人等の会計監査人監査の状況について引き続き注視していくこととする。

(注1)から(注7)までの該当法人

独立行政法人等名 (注1) (注2) (注3) (注4) (注5) (注6) (注7) 独立行政法人等名 (注1) (注2) (注3) (注4) (注5) (注6) (注7)
情報通信研究機構             帯広畜産大学            
大学入試センター           旭川医科大学            
国立青少年教育振興機構           北見工業大学            
国立科学博物館             弘前大学            
物質・材料研究機構             岩手大学            
国立美術館             宮城教育大学          
国立文化財機構             秋田大学            
労働安全衛生総合研究所           福島大学        
農林水産消費安全技術センター             茨城大学          
農業・食品産業技術総合研究機構           宇都宮大学            
農業生物資源研究所           群馬大学            
農業環境技術研究所             埼玉大学            
森林総合研究所         東京大学          
水産総合研究センター         東京医科歯科大学            
日本貿易保険             東京外国語大学            
産業技術総合研究所             東京農工大学          
製品評価技術基盤機構             東京芸術大学          
土木研究所           東京工業大学            
建築研究所           東京海洋大学            
交通安全環境研究所           お茶の水女子大学        
海上技術安全研究所           電気通信大学            
港湾空港技術研究所             一橋大学            
海技教育機構             横浜国立大学          
国立環境研究所             新潟大学            
自動車検査             長岡技術科学大学            
国立印刷局           上越教育大学          
農業者年金基金           金沢大学            
農林漁業信用基金             福井大学          
平和祈念事業特別基金         山梨大学            
国際協力機構           信州大学            
国際交流基金           静岡大学          
新エネルギー・産業技術総合開発機構           浜松医科大学            
科学技術振興機構           名古屋大学            
理化学研究所             名古屋工業大学            
宇宙航空研究開発機構           滋賀大学          
日本芸術文化振興会           滋賀医科大学            
勤労者退職金共済機構           京都大学          
高齢・障害者雇用支援機構             京都工芸繊維大学          
福祉医療機構             大阪大学            
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園             大阪教育大学          
日本貿易振興機構           神戸大学            
水資源機構奈良女子大学             奈良女子大学            
自動車事故対策機構島根大学         島根大学            
空港周辺整備機構           岡山大学            
情報処理推進機構             山口大学            
石油天然ガス・金属鉱物資源機構           鳴門教育大学            
雇用・能力開発機構           香川大学            
労働者健康福祉機構           愛媛大学            
国立病院機構           高知大学            
医薬品医療機器総合機構           福岡教育大学          
環境再生保全機構             九州大学            
日本学生支援機構         九州工業大学            
海洋研究開発機構             佐賀大学            
国立高等専門学校機構           熊本大学            
国立大学財務・経営センター             大分大学            
中小企業基盤整備機構           宮崎大学            
都市再生機構             鹿屋体育大学            
奄美群島振興開発基金             琉球大学            
医薬基盤研究所             政策研究大学院大学          
日本高速道路保有・債務返済機構             総合研究大学院大学            
日本原子力研究開発機構北陸先端科学技術大学院大学             帯広畜産大学            
年金・健康保険福祉施設整理機構           奈良先端科学技術大学院大学            
年金積立金管理運用             筑波技術大学            
住宅金融支援機構           富山大学            
郵便貯金・簡易生命保険管理機構             人間文化研究機構            
北海道大学             自然科学研究機構            
北海道教育大学             高エネルギー加速器研究機構          
室蘭工業大学           情報・システム研究機構          
小樽商科大学           該当法人数計 9 1 24 4 11 51 98
(注)
各法人の名称中「独立行政法人」、「国立大学法人」及び「大学共同利用機関法人」は記載を省略した。