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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成22年9月

廃校又は休校となっている公立小中学校の校舎等について、活用効果等を周知するなどして、社会情勢の変化、地域の実情等に応じた一層の有効活用を図るよう文部科学大臣に対して改善の処置を要求したもの


 廃校又は休校となっている公立小中学校の校舎等について、活用効果等を周知するなどして、社会情勢の変化、地域の実情等に応じた一層の有効活用を図るよう文部科学大臣に対して改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部科学本省
(項)公立文教施設整備費
平成12年度以前は、
(組織)文部本省
(項)公立文教施設整備費
 
部局等 文部科学本省(平成13年1月5日以前は文部本省)
補助の根拠 義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律(昭和33年法律第81号。平成18年3月31日以前は義務教育諸学校施設費国庫負担法)等
補助事業の概要 公立の小学校、中学校等の学校施設の整備を行う市町村に対してその経費の一部を補助するもの
検査の対象 47都道府県 528設置者 1,333校    
3年以上未活用となっている廃校等施設を有する学校 42都道府県 137設置者 216校  
上記の廃校等施設に係る残存価額 249億2405万余円  
上記に対する国庫補助金相当額 104億7450万円  

【改善の処置を要求したものの全文】

廃校又は休校となっている公立小中学校の校舎等の有効活用について

(平成22年9月8日付け 文部科学大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 廃校又は休校となっている公立小中学校の状況等

(1) 公立小中学校の施設整備に係る補助制度の概要

 我が国の学校教育は、国、都道府県及び市町村がそれぞれ役割を分担することによって運営されており、公立の小学校及び中学校(以下「公立小中学校」という。)の設置、管理及び運営の事務は、市町村(特別区及び市町村学校組合を含む。以下同じ。)が行うこととされている。
 そして、公立小中学校の設置等に要する経費については、原則としてその学校を設置する市町村(以下「設置者」という。)が負担することとされているが、義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律(昭和33年法律第81号。平成18年3月31日以前は義務教育諸学校施設費国庫負担法)等により、国は公立小中学校の校舎等の新築、増築又は改築等の事業の実施に要する経費の一部を負担することとされ、設置者に対して公立学校施設整備費負担金、公立学校等施設整備費補助金及び安全・安心な学校づくり交付金(以下、これらを合わせて「国庫補助金」という。)を交付している。

(2) 廃校又は休校となっている公立小中学校の状況

 近年、少子化、過疎化等に伴い、児童生徒数が減少している公立小中学校が増えており、規模の適正化等の視点から学校の統廃合が行われている。そして、設置者から廃止の届出があった公立小中学校(以下「廃校」という。)は、平成14年5月2日から21年5月1日までの間で47都道府県の697設置者における2,446校となっている。また、廃止の届出はないものの児童生徒が在籍しておらず学級数が0の公立小中学校(以下「休校」という。)は、21年5月1日現在で37道府県の173設置者における441校となっている。

(3) 廃校又は休校となっている公立小中学校の校舎等の有効活用の必要性

 公立小中学校の校舎等は、多額の国庫補助金を投入して整備された施設であるとともに、地域住民にとって身近な公共施設であることから、廃校又は休校となった場合には、住民の共通の財産として可能な限り積極的に有効活用されることが求められている。
 本院は、これまでこのような視点から、平成8年度決算検査報告に「少子化等に伴う公立小中学校施設について有効活用が図られるよう改善の意見を表示したもの 」を、また、平成15年度決算検査報告に「廃校等施設及びへき地教員宿舎の転用による有効活用が適切に促進されるよう改善させたもの 」を掲記して、施設の有効活用を求めてきた。
 そして、貴省では、設置者が国庫補助金の交付を受けて整備した学校施設を他の用途に活用する場合、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)に基づき原則として文部科学大臣の承認を得る手続を必要としているが、9年11月に貴省が設置者に対して発した「公立学校施設整備費補助金等に係る財産処分の承認等について」(平成9年文教施第87号)によると、国庫補助事業完了後10年を超える期間を経過した学校施設を無償で同一地方公共団体における公共用の施設等に活用する場合のうち、福祉施設等に活用する場合には、報告書の提出により文部科学大臣の承認があったものとして取り扱うこととするなど手続を順次緩和してきており、国庫補助金で整備した施設の有効活用を求めている。
 例えば、地域が必要としている公共施設としては、高齢化や女性の社会進出を背景としてその拡充が求められている介護老人福祉施設や保育所が挙げられる。すなわち、介護老人福祉施設は、20年10月現在の定員が422,703人となっている一方で、待機者が定員とほぼ同数の421,259人と多数に上っている。また、保育所についても、21年4月現在の待機児童が25,384人と多数存在している。
 このように、社会情勢の変化等に伴い、介護老人福祉施設、保育所等の社会福祉施設の必要性が高まっている一方で、現在の国や地方の財政状況にかんがみれば、多額の財源を投入して新たな施設を整備することには限界があることから、既存の施設を有効に活用することがより一層重要となっている。