地域情報通信技術利活用推進交付金及び情報通信技術地域人材育成・活用事業交付金は、医療、介護、福祉、防犯、産業等の分野において、地域の知恵と工夫を生かし、情報通信技術(以下「ICT」という。)を導入・活用するなどして、地域における諸課題を解決し、また、地域の人材を育成・活用しながら地域における公共サービスの向上を図るために、ICT関連システムの基盤の整備、人材育成等の事業を行う事業主体に対して、事業の実施に要する経費について交付されるものである。これらの交付金の交付対象経費は、サーバ、ネットワーク機器、情報通信端末等のICT関連システムの基盤の整備等に要する経費とされている。
本院が総務本省、7府県、39市町村等において会計実地検査を行ったところ、4事業主体において次のとおり適切でない事態が見受けられた。
交付金事業者(事業主体)
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交付金事業
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年度
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交付対象事業費
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左に対する交付金交付額
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不当と認める交付対象事業費
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不当と認める交付金相当額
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摘要
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千円
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千円
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千円
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千円
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(6)
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京都府宮津市
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地域情報通信技術利活用推進交付金、情報通信技術地域人材育成・活用事業交付金
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22
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123,506
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123,505
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71,039
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71,039
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計画不適切
補助の対象外 |
この交付金事業は、宮津市が、高齢者等の健康の見守り、買物の支援及び有害鳥獣被害に悩む農家の捕獲檻(おり)見回りに係る労務の軽減を目的として、高齢者等見守りシステム、買物支援システム、有害鳥獣捕獲檻監視装置送受信監視システム等を構築するとともに、高齢者等や農家が上記のシステムを利用するなどのために必要なタブレット端末、有害鳥獣捕獲檻監視装置端末等の情報通信端末を購入して利用者へ配布等を行うこととしたものである。
そして、同市は、実績報告において、タブレット端末については、購入した200台のうち170台を高齢者等に配布し、有害鳥獣捕獲檻監視装置端末については、購入した180基全てを設置したなどとしていた。また、同市は、事業期間内に上記のシステム及び情報通信端末について保守を行うとして、その保守費を交付対象事業費に含めていた。
しかし、同市は、関係機関等と十分な調整をしないまま事業計画を策定し、事業の適切な執行管理を行っていなかったことなどから、実際には、事業期間終了時において、情報通信端末を全く配布等することができず、情報通信端末は一度も利用されていなかった。また、事業期間内において、前記のシステムは稼働していなかったことから、当該システム及び情報通信端末についての保守を行う必要はなく、その保守費は交付の対象とならないものである。
したがって、配布されておらず利用されていなかった情報通信端末の購入費計65,576,700円及び交付の対象とならない保守費計5,462,625円に係る交付金相当額計71,039,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、関係機関等と十分調整した上で事業計画を策定し実施することの重要性に対する認識が十分でなかったこと、また、本件交付金事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったこと、総務省において本件交付金事業の審査及び確認並びに同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(7)
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大阪府箕面市
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地域情報通信技術利活用推進交付金
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21
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31,880
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31,880
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4,290
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4,291
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補助の対象外
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この交付金事業は、箕面市が、児童・生徒の安心及び安全の確保を目的として、市内の全ての市立小中学校において、ICタグを活用して児童・生徒の登下校時に校門の通過時刻を記録し、保護者へ電子メールを配信するシステムを整備するとともに、校門に防犯カメラ及び電気錠を設置するなどの工事を実施することとしたものである。
しかし、同市は、上記工事の一部として、交付の対象とならない校門周辺の既存ネットフェンス等の修繕及びかさ上げ並びにネットフェンス等の新設に係る工事費計4,290,620円を交付対象事業費に含めていた。
したがって、交付の対象とならない工事費計4,290,620円に係る交付金相当額4,291,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において本件交付金事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったこと、総務省において本件交付金事業の審査及び確認並びに同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(8)
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広島県府中市
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地域情報通信技術利活用推進交付金
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21
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63,773
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63,773
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10,210
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10,211
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計画不適切
補助の対象外 |
この交付金事業は、府中市が、住民の安心及び安全の向上を目的として、病院や診療所等の間での連携や医療情報を共有するための府中地域保健・医療・福祉連携ネットワークを構築するとともに、病院等32か所にノートパソコン等から成る利用者端末47台を設置し、当該ネットワークに接続するなどの整備をすることとしたものである。
しかし、同市は、事業計画策定時に、一部の病院において既に類似のシステムが稼働していることを把握していなかったり、診療所において上記のネットワークを利用することについての要望等を十分把握していなかったりなどしていて、当該ネットワークに参加することとなる病院等との調整を十分に行っていなかったことから、利用者端末47台のうち34台を請負業者に保管させたまま設置していなかった。また、同市は、事業期間終了までに当該利用者端末34台の設置工事が行われていないにもかかわらず、工事が完了したこととして、その設置工事費を交付対象事業費に含めていた。
したがって、事業期間終了時に設置されていなかった利用者端末34台の購入費計8,496,600円及びその利用者端末34台の設置工事費1,713,600円に係る交付金相当額計10,211,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、事業計画策定時に病院等との調整を十分に行うことの重要性に対する認識が十分でなかったこと、また、本件交付金事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったこと、総務省において本件交付金事業の審査及び確認並びに同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(9)
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宮崎県児湯(こゆ)郡新富町
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地域情報通信技術利活用推進交付金
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21
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55,767
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55,767
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5,893
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5,894
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補助の対象外
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この交付金事業は、新富町が、同町の農産物についての安心及び安全の確保を目的として、農産物の生産者が携帯情報端末を使用して生産履歴情報を入力し、農産物に関する適正な農薬の使用をチェックするなどのシステムを構築するなどしたものである。
そして、同町は、上記のシステムについて保守を行うとして、その保守費を交付対象事業費に含めていた。
しかし、前記システムの完成日は平成22年3月30日であり、翌日の事業期間末までに稼働した記録はなかったことから、稼働していない当該システムについて保守を行う必要はなく、その保守費は交付の対象とならないものである。
したがって、前記システムの保守費計5,893,376円に係る交付金相当額5,894,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において前記システムの稼働状況の確認及び本件交付金事業の経費計上に対する理解が十分でなかったこと、総務省において本件交付金事業の審査及び確認並びに同町に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(6)—(9)の計
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274,926
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274,925
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91,433
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91,435
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